ホーム » スレ別 » 後味の悪い話 その147 » 奇縁(高橋克彦)

3571/5:2014/02/06(木) 00:16:52.31
高橋克彦「奇縁」

弁護士の「私」は半年ばかり前、製材業者Aの車に追突されて軽傷を負った。
事故の原因は「私」の車の左折テールランプが故障していたせいだが、
Aはこちらが恐縮する程謝罪を繰り返して数日の検査入院を毎日見舞った。
「私」の住む県庁所在地とAの村は片道二時間もかかるのに、である。
「私」の妻も事務所の連中もAに打ち解け、『轢かれるならAさん』と冗談が出る程。

Aは今も時々、仕事のついでに「私」の家や事務所を訪れ、
地鶏の肉やら松茸やらを差し入れしてくれる。

ある日Aは、最近世間を騒がせている高級家具メーカーの偽物事件は
自分が原因だから自首を決意した、と打ち明けた。


3592/5:2014/02/06(木) 00:20:54.43
村会議員のAが村の青年団を唆したのが原因だと言う。

Aの村は林業と木工で有名で、有名家具メーカーB社の工場がある。
一棹数百万の高級箪笥を作っても下請けが手にするのはせいぜい数十万。
ばからしいからオリジナルブランドを立ち上げようにも、
B社の名前がなければ買い叩かれるに違いない。
それでも一度は挑戦してみろ、とAは青年団を激励し、
オリジナルデザインの箪笥を作らせ東京の知り合いの店に売り込ませた。

ところが東京に売り込みに行った青年は、間違えて無関係な店に行ってしまった。
しかも店主がB社の製品だと誤解したので、ついB社営業の名刺を出してしまったそうだ。


360 3/5:2014/02/06(木) 00:23:02.36
店頭に出たその箪笥を気に入って買った客が、今度は直接B社に注文した。
B社ではそのデザインは展開していないし値段も安すぎるというので
明るみに出た事件である。

「私」はAを止め、マスコミや東京の有力な弁護士などの人脈を駆使して村を救った。
(うろ覚えだが、デザインまで盗作だと言われたので
偽物の方がB社製品よりはるかに上質だと証明させたんだったかな)
村は下請けを脱して、良心的な新進メーカーとして有名になり財政も潤った。

村を救った恩人として盛大な宴会の主賓に招かれた「私」は、
酔った同席者からA夫妻の馴れ初めを聞いて愕然とした。


361 4/5:2014/02/06(木) 00:25:15.53
Aの妻は地元ローカル局の美人お天気お姉さんとして
東京の番組で何度も取り上げられた程の美女。
彼女は今も美しいが、足を少し引きずっていた。

Aはお天気お姉さん時代の彼女に一目惚れし
スタジオやロケ先の見学に足繁く通っていたが、
ある日スクーターで彼女をはねてしまった。
誠意と献身にほだされた彼女はAと結婚した。

「私」がAの車に追突されたのは、「私」の車のテールランプが故障していたせいだ。
そう主張したのはAだが、「私」の車のテールランプは
Aの車に追突されて壊れたので真偽は今更確かめようがない。

東京へ家具の売り込みに行った青年は、なぜB社営業の名刺を持っていたのか。


362 5/5:2014/02/06(木) 00:27:50.10
村の青年が訪れるべき店を間違えたのも
たまたまB社営業の名刺を持っていたのも、Aの作戦だと疑える。
東京の有力な弁護士とも親しく、弱者に肩入れしやすい性格の「私」を利用する為、
Aはわざと追突したのではないか?

「私」は便所に駆け込み、吐いた。
Aが戸口に現れ、田舎の酒は口に合わんでしょうな、と冷笑した。

Aは「私」の前から姿を消した。
事情を知らない妻は寂しがっている。

ある新聞記事が「私」の目を射た。
高名な代議士が雪道でスリップしたAの車と接触し、軽傷を負って入院したそうだ。
真っ青になって土下座するAの姿が脳裏に浮かんだ。

「私」は新聞を屑籠に投げ入れた。


363 本当にあった怖い名無し:2014/02/06(木) 00:34:39.14
>>362
Aはやり手だな

 

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