ホーム » 小説 » 小説/た行 » 罪→罰(渡辺浩弐)

827 名前:浜村通信 投稿日:02/01/13 21:21
ファミ通で連載してた渡辺浩弐の2999年のゲームキッズっていうコラムの
「罪→罰」って話。かなり長くなるけど……ご了承

新しいゲーム機を買った。
手のひらサイズで、テレビ電話と一体型で、通信ゲームも遊べるやつ。
ちょっと割高になったけど、お店の人に勧められて「盗難補償」を付けた。
携帯ゲーム機って、よく盗まれてしまうらしい。そんな場合に、すぐに無償で新しいものをくれるサービスだ。

そうしておいてよかった。買ってからたった3日でなくしてしまったから。我ながら情けなかった。
カバンの中に入れておいたものが消えてしまったのだから、盗まれたとしか考えられない。
せっかくお小遣いをためて、バイトもしてやっと買ったに。
ふつふつと怒りが湧いてきた。顔も想像できない見ず知らずの相手を本気で憎むなんて、不思議な体験だ。

でも、カリカリする必要はないのだった。盗難の届けを出して、
そのことをメーカーに伝えたら、翌日には新品の、同じゲーム機が送られてきた。
よくよく考えるとそれもまた不思議な話だった。どこかの誰かが僕のゲーム機を盗んだ。
それは悪いことだ。でも、これで僕の憎しみは消えた。
犯人を捕まえてもらう必要も感じなくなった。
ゲーム機を弁償してくれたメーカーがその損を代わりにかぶったってことか? いや違う。
メーカーは、この補償サービスのおかげで売り上げを伸ばしているのだから。
つまりどこかの悪い奴は盗んで丸儲け。得をした。
その代わりに損をした人は、いないってことだ。罪は宙に消えてしまったのだ。そして罰は、なし。これでいいんだろうか。


829 名前:浜村通信 投稿日:02/01/13 21:23
ところで、送ってきたのは見かけは全く同じ商品だったけど、ちょっととまどったことがあった。
前のと違うことがあったのだ。最初にスイッチを入れると、画面の中にいきなり、ゲーム機が現れたのだ。
それも、全く同じ携帯ゲーム機がアップで映し出された。ゲーム機の中に、ゲーム機。それはおかしな光景だった。
首を傾げながら適当にボタンを押すと、その画面の中のゲーム機が突然、爆発した。
どかんとリアルな音が響いて、本当に手元が爆発したような感触だった。

それだけだった。それで普通の初期画面に戻ったのだ。リセットしてみたが、その画面は二度と現れなかった。
ただ爆発するだけの、しかも一度プレイしたら消えてしまうゲーム。これって一体、何なんだろう。

いずれにせよ、その小気味のいい爆発で、なんだかすっきりした。盗みにあった嫌な気分がリセットされた感じだ。
僕はまたいろいろなゲームに熱中した。
今度は盗まれないように注意しながら、しばらくは肌身離さず持ち歩いていた。学校にも持っていった。
我慢できずに友達に見せびらかしたりもした。みんな、すごく羨ましがってくれた。
もちろん学校には、盗もうなんて悪い奴はいるはずがはない。


830 名前:浜村通信 投稿日:02/01/13 21:29
実は同じクラスに、ちょっと好きな女の子がいた。
その子がずいぶん欲しがるので、一晩だけ貸してあげることにした。喜んでくれた。
返してくれる時は本当に悲しそうな顔をしていた。僕は、じゃああげるよと、もう少しで言いそうになった。

その時、考えたことがある。この子がもし僕から、このゲーム機を盗んでくれたら?
それでも、僕はメーカーに言えばまた新しいゲーム機をもらえるじゃないか。
これはいい。そうだ。別に彼女に悪いことをさせる必要もない。僕はこれを彼女にあげてしまえばいい。
そして盗まれたことにしてもう1台、もらっちゃえばいいのだ。
メーカーや警察が盗まれたゲーム機の行方を探したり、わざわざ泥棒を掴まえようとしたりなんて苦労をしているはずがない。
なんてすばらしいアイデアだろう。僕はすぐに実行した。
彼女には、親戚のおじさんから偶然同じものをプレゼントされたちゃったからと言った。
もちろん彼女は飛び上がって喜んでくれた。

また申請すると、3台目も、すんなり送ってきた。2台目と同じように、最初の画面はゲーム機が映し出された。
ボタンを押すと、今回もそれはどかんと爆発した。すごい衝撃が指先に伝わってくる。
僕はちょっとたじろいたけど、すぐにゲームで遊び始めた。
今頃、彼女も同じように楽しんでいるんだろうな。そう思いながら。

その夜。ゲームに飽きてテレビをぼんやり見ている時。連続爆発事件のニュースにふと僕は気を引かれた。
爆発の感触が指に残っていたからだろう。
最近、この街のあちこちで謎の爆発事件が頻発していた。原因は不明。
なのに警察が本格的に調べてる様子がないのはどういうことだろう。
手がかりは今のところ全くないという。被害者の大半は死んでしまっている。
そして、おかしなことに、運良く生き残った人々からは……
両腕を失った人からも、家の半分を吹っ飛ばされた人からも、一切、何も聞き出せないらしい。
皆、一様に、事故のショックで記憶がないと言い張っているのだ。なんだか不自然だ。
何か、言えない理由でも抱えているのだろうか。


831 名前:浜村通信 投稿日:02/01/13 21:29
改行下手でごめん。

832 名前:浜村通信 投稿日:02/01/13 21:31
アナウンサーは今日起きた新しい事故について報じていた。今回の犠牲者は、少女だった。
画面に、こなごなになって部屋じゅうに散乱する前の彼女の顔の写真が映った。
僕は息を呑んだ。ああ、なんということだ。あの子だ。僕がゲーム機をあげたあの女の子!
彼女の手元で何かが爆発したその時刻をアナウンサーが読み上げる。
それは、僕がボタンを押し、画面の中のゲーム機を大爆発させた時刻と、ぴったり一致していた。


835 名前:浜村通信 投稿日:02/01/13 21:52
あんまり後味悪くなかったかな?
初めて読んだ時は良く出来た話だなぁ~って思ったから

845 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:02/01/14 00:09
>827 浜村通信さん

漫画界では使い古されたストーリーです。
15年前には確実に使われていた、ゲームを題材にした定番ストーリー。

でも、ネタ提供感謝。

 

2999年のゲーム・キッズ 完全版 DX
2999年のゲーム・キッズ 完全版 DX


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