白い鎮魂歌(まつざきあけみ)

685 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2005/09/10(土) 19:41:03
まつざきあけみの初期の傑作「白い鎮魂歌」。

白人と黒人の対立する町に、中学の新任教師としてやって来たシークフリート。
そこで彼は、長い髪の、美しい白人少年に出会う。
彼の名はパスカル。新任先の学務局長の息子だった。
成績は優秀で級長、そして生徒会長。
彼は学校を二分し、白人と黒人をはっきり区別する運動をしていた。
彼は黒人を、乱暴で頭が悪く、下品で汚いと言い放つ。白人生徒が安心して勉強できない。
学校側は、生徒の事には手を出すなとシークフリートに注意し、
パスカルからも警告される。この町では、人種間の抗争は日常茶飯事。
パスカルの母は黒人に強姦されて自殺し、親友の弟は無抵抗のまま惨殺された。
「もし僕が独裁者になったら、あんな奴らはみんな殺します」
黒人生徒は旧校舎に移動させると言う。言葉を失うシークフリート。
そんな中、クラスの黒人少年ジョーが、成績でパスカルに迫ってくる。
彼は磊落で仲間も多く優秀で努力家。パスカルと同じ進学先を狙っていた。
見下され続けてきたジョーだが、今期の筆記試験ではパスカルと同点。
仕事もしながらの勉学で、ここまで来た事を誇るジョーは、
パスカルに挑戦的な態度を取り、パスカルの仲間たちの怒りを買ってしまった。


686 名前:685 投稿日:2005/09/10(土) 19:42:05
パスカル達は賭けを始めた。しかえしとばかり、ジョーの黒人の恋人を
街角に引きずり込んで4~5人でレイープ。
さて、彼女はジョーにうち明けるか、隠しているか?
「どっちにいくら賭ける?」ご満悦のパスカル。翌日、まだジョーは知らない様子。
陰であざ笑う、パスカルと仲間たち。
 だがその夜、パスカルは父の書斎であるものを見つける。
何かショックを受けるパスカル……。
 翌日。森の中で偶然2人になったパスカルとジョー。
転んで足を痛めたパスカルをジョーは助ける。
ジョーは、母の話をする。白人に恋をしたが、黒人で無学のために捨てられた母。
自分は勉強して肩書きを手に入れ、白人をかしずかせてやりたいと言う。
そんなジョーを見つめながら、涙を流すパスカル。
「パスカル?」「あんまり…あんまり遅すぎた……!」
次の瞬間、パスカルは嘲笑しながら、ジョーに賭けの話をうち明けた。
殺意に満ちたジョーはパスカルを殴り倒す。シークフリートが仲裁に入るが、
他の生徒たちも気づき、凶悪な雰囲気に。
ケガをしたパスカルは、臨時生徒総会の開催を発表する。

687 名前:685 投稿日:2005/09/10(土) 19:45:31
ふらつきながら、壇上に立つパスカル。その彼に黒人生徒たちからの罵声。
「黒人を旧校舎に追いやる気だ」「てめえに勝手にされてたまるか!」
構内の生徒たちの間でもつかみ合いが始まり、ついに大乱闘に。その時…銃声が。
壇上には、胸を打ち抜かれ、朱に染まったパスカルがいた。ゆっくりと
倒れるパスカル。ジョーと仲間たちの仕業だった。
ピストルは発射後すぐ仲間たちに手渡され、すでに処分されていた。
証拠はない。嬉しそうに笑い続けるジョー。
だがそんなジョーに、シークフリートは1枚の写真を渡す。
彼は、パスカルの父からうち明けられていた。パスカルの父の昔の恋人の事を。
若い人のジョーの母と、幼いジョーの写真だった。
ジョーの母は写真のみを恋人に送り、自ら彼の幸せのため身を引いていた。
パスカルとジョーは、血を分けた兄弟だったのだ。
先日、パスカルが父の書斎で見つけたのもこの写真と手紙だった……。
呆然とするジョー。そこへ、苦しい息の下からパスカルが総会の決定事項を
読み上げる。
「学校内…全ての人種差別を禁止する……これからはシークフリート先生の
指示に従うように…。これで生徒総会を閉会します…すみやかに…退場……」
パスカルは、父や皆に謝罪の言葉を残し、息を引きとる。
美しい、天使のような死に顔だった。
あとには、パスカルの名を呼ぶ、ジョーの叫び声だけか響いていた……。

689 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2005/09/10(土) 20:50:37
>>687
なんでてめえの弟だっからってそれまでの問題をチャラにしなければならんのだ。
度しがたいガキだなパスカル。
とんだ独裁者気取りだ

691 名前:685 投稿日:2005/09/10(土) 21:44:12
>>689
おおっ、鋭いご指摘です。耽美派として知られていた頃のまつざきあけみは、
ボーイズラブ的な部分では、どっちか言うと兄弟萌えのよーな要素がありまして、
弟であると言う事は、最愛の母とか親友の弟とかの死を越えるほど
でかいファクターだったのではないかと……
森の中で足をいためたのも、うっかり湖に落ちそうになったジョーを
とっさに助けたからです。
いろいろ突っ込みたい部分はあるでしょうが、ビジュアル的には
全体的にきめ細かく描き込まれたキレイな作品です。
雰囲気は、森茉莉の小説に影響受けてるのでは、という感じ。
森茉莉は後味悪くはないので(愛のために、よく人が死んだりしますが)割愛しますが、
森鴎外の娘さんで、欧州的な雰囲気の耽美小説書いてた人です。
「白い鎮魂歌」はパスカルのおやじさん含め、若気のいたりの続発で、
女性は全て被害者、それにそれぞれ一人も幸せにならないのが後味悪悪です。

 

白い鎮魂歌(レクイエム) ((ペーパームーン・コミックス))
白い鎮魂歌(レクイエム)
(ペーパームーン・コミックス)