ホーム » 小説 » 小説/は行 » 初つばめ(藤沢周平)

8 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/02/16(木) 00:14:14
藤沢周平の短編。
父親を早くになくし、病弱の母と幼い弟を抱えた主人公。
まだ14、15だったが、母の薬代と弟を育てるために茶屋に売られていく。
男を取らされることもあったが、母と弟を養うには金がいる。
結婚したいと言ってくれた男もいたが、涙を呑んで堅気の男に別れを告げた。
主人公は家族のために底辺の生活に耐えていた。

成長した弟は勤め先を見つけ、それからはパッタリ会わなくなった。
堅気の仕事に就いた弟に迷惑を掛けないためにも、主人公は仕事を変えた。
いつか弟が独り立ちする日のために、わずかな稼ぎから金を貯めている。
弟が店を持つこと、それだけが今の楽しみだった。

弟は真面目な働きっぷりが買われ、大きな店の主人の目に留まる。
一人娘との祝言が決まった。
彼女と一緒に結婚の挨拶に来ると聞いて、主人公は張り切る。
滅多にないご馳走を揃え、その日だけは仕事休んで家を整える。


9 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/02/16(木) 00:15:20
二人の来訪を心待ちにしていたが、やって来た二人は余所余所しい。
弟は言葉少なで、嫁は一言も口をきかない。
二人の態度に気づかないふりをしてもてなすが、弟は突き放すように言った。
食事を取るつもりはない、今日は先方で祝いの準備をしている。
ここには挨拶にだけ立ち寄った、待たせているから早く行かなくてはいけない。

とりつく島もない二人に、祝言の日取りを尋ねる。
まだ決まっていないと言う返答を、嘘だと思った。最初から呼ぶ気はないんだ。
二人のあんまりな態度に荒れた主人公は、二人を怒鳴りつけて追い出す。

一人になって主人公は落ち着く。
あんな嫌味を言うつもりじゃなかった。弟が立派になって独り立ちした、それだけのことだ。
育ててくれた恩に感謝し、再会を喜んでくれると期待でもしていたのか。
馬鹿馬鹿しい、もっと大人になって見送ってやればよかった。
でも嫌な思いをして男に身を任せて貧乏に耐えて、結局何も残らなかった。何のために生きてきたんだろう。

で、終わり。
この後とってつけたように幼なじみの人のいい男が様子を見に来てくれるけど、何だかなあ。
十代で嫁に行くような時代で、三十過ぎの水商売上がりの女が一人。
弟はとんと薄情で、この先の人生に希望もなさそう。
とくにドラマがあるわけでもないのに、ここまで酷いと思った話は初めてだ。

 

夜消える (文春文庫)
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