吸血鬼幻想(坂田靖子)

643 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/05/10(水) 02:00:25
坂田靖子は、時々妙にブラック系不可思議話を描くよね…。
それがまた、好きなんだけど。

私が印象深いのは、吸血鬼に拉致監禁された美青年の話。
(おそらく古いJUNEか何かに載った作品で、微妙に耽美テイスト)
中年紳士の姿でお屋敷に住む吸血鬼に、食糧として監禁され続ける青年。
周りの人間は誰も吸血鬼の正体に気付かず、青年も彼の息子だと思われている。
屋敷に出入りする神父ですらも、異変に気付くことなく、
絶望して聖書を暖炉に投げ込む青年に「神の愛を信じろ」と諭す始末。
夜毎、吸血鬼は青年の寝室に忍び込み、犯すように首筋から彼の血を吸う。
激しい倦怠感の中で、青年は幾度も死を思う。
そして、自分の首筋に手を当て、そこに刻まれた歯形を人に見せれば
自分が置かれている状況を信じてもらえるのに…と考えながら気を失う。
しかし彼がやっとの思いで目覚める時、いつも歯形は跡形も無く消えている。
ある日、青年は吸血鬼に連れられて街に出る。
そこで、食用として売られているアヒルの屠殺現場を見ながら、ぼんやりと考える。
このアヒル達は、食べられる為に生まれてきた。
こうして殺されるまで、ただただ食べられる為だけに生かされているのだ。
それはまるで、自分自身の姿のようだ。
吸血鬼に血を吸われ、身動きも取れずに横たわっている時間、
自分の体の中にはアヒル達の首から流れ落ちる血が溜まっていくような
生臭い倦怠感がある…

今、現物が手元にないので記憶違いがあったらスマソ。


644 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/05/10(水) 02:11:21
>>643
それ読んだ事ある。
アヒルを屠殺するおじさんの言葉が印象に残っている。

「菜食主義者なんてのはうそっぱちだ 
 野菜が引っこ抜かれる時に鳴かないからって命がないと思ってやがる」
全然違うと思うが意味としてはこんな事を言っていた。