地球はプレイン・ヨーグルト(梶尾真治)

231 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/05/19(金) 18:46:41
このタイトルになってる短編「地球はプレインヨーグルト」も後味悪い。

とある星の宇宙人が地球に漂着。2人いたが、1人しか蘇生できなかった。
彼らの言語は「音声」ではなく「味覚」で伝えられることがわかり、
こちらの意見を伝える料理を作るための料理人と、彼らの意見を聞く
ために世の中の味を知り尽くした食通の老人が招かれた。
具体的には、地球の写真を見せて、宇宙人が分泌した液体の味を老人がなめ、
「彼らにとって地球はプレインヨーグルト味」だと教える、という具合。
(つまり、宇宙人との会話に「地球」という単語を使いたい時には、
料理人たちが「プレインヨーグルト」を宇宙人に食べさせる)。
気の遠くなるような翻訳作業の結果わかったことは、宇宙人は母星に
帰ることもできないし、母星の方からも助けにくることはできない。
つまり、地球にとっては害も益もない相手だということ。
宇宙人の望みは、できれば地球でひっそりと暮らすことだけだという。
そして、もうひとりいたはずだ、私の伴侶はまだ蘇生しないのか? と尋ねた宇宙人に
「すまない、そちらは死んでしまった。手違いだ」と答えようとしたら、
はずみで、その料理に「性的求愛」の意味を示す液体がふりそそいでしまう。
宇宙人にとっては「あなたの愛する伴侶は死んだが、セックスしよう」
とか言われたことになり、宇宙人は怒り狂う。
その怒り狂った宇宙人の感情を味わった食通は「これぞ究極の味だ!」
と恍惚となる……という話。

何が後味悪いって、この食通ジジイ、この後この宇宙人を自宅に
閉じ込めて「究極の味」を堪能し続けるんだ。
宇宙人は何も悪くないのに、地獄のような毎日だろうと思うと……。

 

フランケンシュタインの方程式―梶尾真治短篇傑作選 ドタバタ篇 (ハヤカワ文庫JA)
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梶尾真治短篇傑作選 ドタバタ篇
(ハヤカワ文庫JA)