DOLL(三原ミツカズ)
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213 名前:1/2 投稿日:2006/06/02(金) 12:30:58
- 三原ミツカズの「DOLL」
短編連作形式で、家事から情事の相手までこなすロボット・DOLLと、それに関わる人々の話。
その中の一話ある家族の話。
少年は毎日半ば折檻されるように母に勉強をさせられる。
母親はどんどんヒステリックに暴力的になっていくが、
自分が賢くなる事で家族仲が良くなってくれるならいいと思っていた。
少年はDOLLの首を拾う。首だけでもかなり美しいDOLLに、
最近の母親のヒステリックさを相談する。
「大人には大人の事情があるのですわ」と首だけのDOLLは優しく言う。
ある日、街を歩いていた少年は父親の車から美しい女性が出てくるのを見かける。
あの女の人が母親をヒステリックにさせる原因ではないかと思う。母親は、隣の一家を敵対視していた。
そこの家の奥さんはなにかにつけ、自分の夫が出世した事を自慢げにし、
高価で平社員には手の届かない美しいDOLLを見せびらかすのだ。
隣の奥さんに勝てるのは、賢い息子ぐらいだった。
成績を抜かれないようにと母親は息子に厳しく勉強をさせていく。
ある時から母親は、夫の服から女物の香水の匂いを感じるようになった。
決定的な事に、口紅がついている事すらある。浮気だ。
最近やたらと土曜に出勤するのも愛人に会いに行っているに違いない。
母親は自分の口紅が一本消えた事に気づく。無くしたわけではない。
盗んだのは夫しかいない。浮気相手に自分の使いかけの口紅をプレゼントするような
情けない男なのかと母親は泣き、どんどんヒステリックになっていく。
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214 名前:2/2 投稿日:2006/06/02(金) 12:31:30
- 家でも会社でも特に必要にされない味気ない父親の日々を変えたのは、一本の口紅だった。
父親は酒の入った同僚に悪ふざけで口紅を塗られた。
その時鏡に映ったのは、恐らくは妻よりも美しい自分の顔。
驚愕しながらも、それで終わるはずだった。しかし、隣の家の美しいDOLLを見た時に、魔が差してしまった。
父親は妻の口紅を一本くすね、紅を引き、女物の服に身を包んだ。
DOLLにも引けを取らない美しい姿。もう冴えない男だとは誰も思わないだろう。
それから父親は土曜日には仕事と偽り、女装して街を歩くようになった。
誰もがDOLLと見紛うばかりの父親の美しい姿に足を止めた。少年の拾った首だけのDOLLが話さなくなった。動力が切れたのだった。
もう相談相手はいない。自分が動くしかない。少年は街に出て行く。
そこには、あの日父の車から出て来た美しい女がいた。
全ての元凶を亡くそうと、少年はナイフを女の腹に突き刺した。