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236 名前:1/3 投稿日:2006/06/02(金) 17:54:47
乱歩でこのスレに合いそうと言ったら二廃人だな。

温泉で老人Aは顔に怪我をした老人Bと出会う。
Bは戦争で負った怪我が治らず、湯治に来たらしい。
どんな仕事をしているのか尋ねるBに、Aは肩をすくめる。
Aは今まで働いたことがないと言う。
それどころか結婚もしなかったし友人もいなかったし
家からも滅多に出ずに暮らしていたらしい。

理由を問うBに、Aは言う。「私は罪深い男なんです」
昔Aは寮に住む根で学校に通っていた。
その頃、寮内で物が消える事件が度々起こった。
消えた物は全てAの部屋で見つかった。


237 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/06/02(金) 17:55:21
Aには幼い頃に夢遊病の気があった。
長じて治まっていたが、再発してしまったらしい。
眠っている間に寮内をふらついて物を盗んでいたのだ。
悩むAを友人Cが励ましてくれた。CはAと違って貧しい家の出だったが、
優秀で気持ちのよい男だった。彼は病気だから仕方ないと慰めてくれた。

しかし事件は起こる。
寮の管理人が殺された。Aの部屋には血だらけの衣服と凶器があった。
すぐさまAは自首したが、Aが名家の息子であった事、
日頃から夢遊病で悩んでいた事もあり罪には問われなかった。

だがAは自分が許せなかった。そして恐ろしかった。
「もしまた誰かを傷つけたら」そう思うと社会に出る事が出来ず、
学校も辞めてずっと親元で静かに暮らしていた。
親が亡くなった後も、世間から隠れ続けて年をとってしまった。
この温泉だけが、Aの慰めだったらしい。


238 名前:3/3 投稿日:2006/06/02(金) 17:55:56
話を聞いてBは言う。「あなたは本当に人を殺したのか」
Bの推理はこうだ。Cは貧乏で金に困っていた。管理人は金には困っていなかったろう。
その金を目当てで管理人を殺したのではないか。
Aは驚いて否定する。「そんな馬鹿な」
Bはなおも続ける。「夢遊病でふらついているところ、
物を盗んでるところをC以外の人に見られたことはあるか」
なかった。Aが夢遊病だとわかったのは、Cに指摘されたからだ。
夜の間にふらついてるのを見たと。そして寮内でなくなった物がAの部屋から見つかった。
だから自分は夢遊病で、知らない間に布団を抜け出、物を盗み、人を殺したのだと信じていた。

呆然とするAにBは続ける。「CはAが幼い頃、夢遊病だったと話の拍子に聞いたのだろう。
それでこの計画を思いついた。病気でやった犯行、それを寮の全部が証明する。
なおかつAの家は裕福だったから、嘆願があれば無罪になるだろうと計算して…」
AがじっとBの顔を見ていた。Bは慌てたように挨拶をして立ち去った。
Bの顔、傷がただれてわかりにくいが、あれは紛れもなくCの顔だった。
だが今さら事件の謎が解けて何になるだろう。Aは一人笑い続けた。

 

心理試験 (江戸川乱歩文庫)
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