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820 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/06/29(木) 18:28:17
西澤保彦は全体を要約すると悪意を感じにくいが、細かい部分に後味悪さを散りばめている。
下記は「子羊たちの聖夜」という小説の一説。
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マンションの管理人をしている老人は、元々酒屋をしていた。
息子が家業を継ぐのを嫌がったために、
今風にすれば息子も継いでくれるかもしれないとコンビニに店舗替えをする。
息子はコンビニならばと家業を継ぐことを了承したが、もう一つ要求を出した。
コンビニの上にマンションを建てるのだ。大学が近いから採算は見込めると何度も勧めてくるため、
嫌々ながら老人は銀行に話を持ち込む。融資に失敗すればそうすれば息子も諦めると思ったのだ。
ところが融資は通り、トントン拍子にマンション建設は進んでいく。

老人も覚悟を決めた。息子と同居できるならと、マンションの1階を二世帯住宅にする。
しかしマンションが出来てみると、息子は同居を承諾しない。
近くの家から毎日コンビニに通ってくる。
マンションの管理も息子がやってくれると思っていたのに、やってくれない。
老人は嫌々ながら管理人として日々を暮らしている。


822 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/06/29(木) 18:29:07
老人は言う。
父親がマンションで一人で暮らしているのに、素知らぬ顔だ。
でも同居を言い出したらコンビニを継ぐのを辞めると言いかねない。
こんな近くに住んでいるのに、孫の顔も滅多に見られない。
金があったばかりに家族の溝が深くなってしまった。

主人公は思う。
主観的には愛情いっぱいで、子供を独善的支配に置きたがる親がここにもいると。
この老人は悪い人ではない。むしろいい人だ。
子供のためを思って行動している。でもそれが全ての原因だ。
老人が息子に家業を継がせたいというのは、老人の希望だ。
だが老人はそうは思わない。「子供のため」と言うお題目で子供を縛り付けようとする。
家業を継いだ方が子供の幸せなのだと言う価値観を押しつけようとする。


823 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/06/29(木) 18:29:38
親が子供の幸せを願った感情を悪とは言えない。
しかしそれは大きな悪だ。
愛情から発生した行動でも、支配しようとする行動は子供を束縛する。自立を邪魔をする。
子供は親から自立するために反発するしかない。そうやって親子の溝は深まる。

老人の家族は破綻に行き着いていない。
不満を持ちながらも子供の自立を黙認しているからだ。
しかし納得はしていない。自分を子供に背かれた哀れな父親だと思っている。
その支配はいつか孫におよび、悲劇は繰り返される。
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と、本筋に関係ない一老人の顛末も意地の悪い見方が提示される。
読者はそうした細部で何度も後味悪い思いをさせられる。

 

仔羊たちの聖夜(イヴ) (幻冬舎文庫)
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