邪魔立てする者(サキ)
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656 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/07/14(金) 21:11:49
- 昔読んだ短編。
ある山に、マタギと木こりがいた。
二派の山での縄張り争いは激しく、生活がかかっているので、双方は心から憎み合っていた。
そんなこんなである嵐の晩、山で一番の大木の元で、双方の頭がタイマン対決をする事になった。
互いに手慣れた武器を持ち、確実に相手を殺すつもり。どっちも加勢は無し。だが対決がつづく中、大木に落雷があり、ともに倒れた枝の下敷きになってしまう。
顔も見合えない状態の上、マタギは失明していた。木こりも腹がつぶれ重傷。
朝になれば仲間が様子を見に来てくれるはず。だがどっちもそれまで持つか解らない。
木こりの持っていた酒を分け合い、動けないまま二人は初めてまともに話をする。
最初こそケンカごしだったが、次第にうちとけ、理解しあっていく。
万一助かったら、お互いの仲間を説得して仲良くやっていこうと誓い合う二人。と、木こりが遥か遠くに、動く群れを見つける。仲間が来てくれたと喜び、
必死の思いで叫ぶ木こりたち。群れは二人の声を聞きつけ、近づいてくる。
どっちの仲間でもよい、これで全てうまくいくと心から感謝するマタギと木こり。
だが、近づいた群れを見て、木こりの顔がひきつる。心配するマタギ。
二人が懸命に呼び寄せたのは、この山の真のあるじたちだった。しばらく後。倒れた大木の回りには、
狼や熊にメタメタに食い荒らされた二人の肉片がちらばっていた。