アトムの最後 (手塚治虫)

438 名前:2/1 投稿日:2006/08/28(月) 21:40:27
手塚治虫恐怖短編集より 「アトムの最後」

2055年の休館中のロボット博物館に一組のカップルが到着。
男が守衛を射殺し扉を破って、二人は中に入る。
中には無数のロボットが安置されていた。
二人はその中からあの有名な鉄腕アトムを見つけ出しスイッチを入れる。
急に長い眠りから覚まされ困惑するアトムに男は事情を語りだす。

未来のこの世界はロボットによって人間が支配されており、人間はロボットの娯楽のために闘技場で
人間同士殺し合いをさせられたりしていた。
男もそうした剣闘士の一人で、試合直前に武器を奪って闘技場を脱走し、
幼馴染の女をさらってここに逃げてきた。
男はアトムに言う。

「君は人間のために闘ったロボットだと聞く。もし本当にそうなら自分たちを守って欲しい」と。

アトムは愛し合う二人を守ることに決め、
彼らを抱きかかえロボットに追われながら無人島まで到達する。

だがそこにも追っ手が迫る。アトムは二人を隠れさせ自分は追っ手たちを食い止めて時間を稼ぐ事にする。
アトムは最後の戦いに赴く前に男と会話を交わす。
「僕の時代では人間とロボットの関係はうまくいっていたのに
 未来ではこんな風にになってしまうなんて…でも君たちはそうじゃなくて良かった」
男はアトムの言葉に違和感を感じる。
「もしかして彼女がロボットだと知らなかったのかい?僕は知ってるとばかり思ってた」
もう時間が無い。アトムは空へ飛び立っていった。


439 名前:2/2 投稿日:2006/08/28(月) 21:41:27
残された二人。男は女を問い詰める。
「君が人間じゃないって本当か!?」
「本当よ。でも信じて。あなたを愛している。お願い!信じて!」
女は泣いて懇願する。
だが男は女を射殺し、追っ手の中に突っ込んで自殺的な最期を遂げる。
描写は無いけどたぶんアトムも死亡。

あらすじにしたらあっけないけど本当は男の回想が長くていくつか伏線張ってた。
解説に手塚が描いてはみたけど二度と読み返したくない作品ってこれかも…
アトム=ヒューマニズムって世間の図式に反発して描いたらしいけど本作は黒歴史なのかな…


444 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/08/28(月) 22:18:28
>>438-439
この話、最初に読んだときは衝撃的だった。

回想部分で、男の子供時代が描かれるけど、本物の武器使って
遊んでるんだよね。しかも、発砲をためらったりしない。
冒頭の守衛の射殺と含めて、前半部分では男の方が異常者のように
印象づけておいて、実際に異常なのは世界の方だったと分かる
展開は強烈だったなぁ。
おそらくは本当に男を愛していたのだろうヒロイン(ロボット)を、
怒りのあまり結局殺してしまうラストもつらい。

ちなみに、どこかで「最期」でなく「最後」なのがポイントなんだ
みたいなことを読んだけど、単に誤字なんじゃないの?って気がする…。


449 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/08/28(月) 22:51:36
俺はドラえもん世代だけどアトムを観て育った世代が>>438-439読んだら衝撃だろうなぁ…
手塚は重いテーマの話多いけどこれは救いが無さ過ぎて主題が分からん
ロボットを憎むあまり愛する者まで殺す男の愚かさを描いたのか

「最期」でなく「最後」なのが誤字だったら考えた時間返して欲しいw

藤子ではラーメン大好き小池さんが不死身のヒーローになる短編が後味悪かった


453 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/08/28(月) 22:58:03
>>444
この話では、最初にまだ少年だった主人公が、両親のロボットから

乱暴で凶暴な言動が男らしく正しい
花や生き物を愛する感情は女々しく情けない

と洗脳されて育っていたので、たまたま一時期、隣家にいた優しい少女に
乱暴な遊び=自殺ごっこなどして遊んだ思い出がある・・っていうのが複線
だったね

で、成長して美しい大人の女性に成長した、かつての少女に再会して
愛し合って命がけで逃げていたのに、肝心のその女性はロボットで
本物の少女はとうの昔に主人公が自殺ごっこで殺していた、っていう
上に、その恋人を逆切れしながら罵詈雑言を浴びせて射殺、自分も自殺

子供心に「子供の読み物なのに・・いいのかこれで?!_| ̄|○ 」って
ショックだったっけ


462 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/08/29(火) 00:16:58
凄まじいまでの絶望や虚無も表現していた手塚先生。
けれど、亡くなったら後はその表現が「愛と平和」ばかりで語られてしまうことが
自分には後味悪い。

 

鉄腕アトム別巻(1) (手塚治虫漫画全集 (251))
鉄腕アトム別巻(1)
(手塚治虫漫画全集 (251))