4人の女(田村由美)

26 名前:1/4 投稿日:2006/09/05(火) 15:38:25
田村由美『X-DAYS』より 「4人の女」

ある富豪の男Aが死んだ。
その件に関して、召使の老婆Bが刑事に事情聴取を受ける。
Bは言う。
「旦那様を死に至らしめたのは『4人の女』です」と。
そして、淡々とBは過去を語り始めた。

幼くして母を亡くしたAは世話係の若かりし頃のBを「ねえや」と呼び、
本当の姉のように慕っていた。
BはそんなAを「坊ちゃま」と呼んで、かいがいしく世話をする毎日。

ある日、Aの父が後妻を娶った。後妻は若く美しく優しく、Aは夢中になる。
やがて後妻は子を身ごもる。「弟か妹が出来るんだ!」と喜ぶA。
そんな中、Aが育てていた蝶を観察していると、蛹の中から蝶ではなく
蜂が出てくる。
驚くAに召使の男が「ああ、寄生蜂にやられちゃったんですね」と説明する。

その後、召使の男とベッドで戯れている後妻をAは偶然目撃。
しかも、会話から後妻の腹の子がAの父の子ではなく、その召使いの
男の子であることも知ってしまう。

数日後、突如響き渡る銃声に屋敷の中は騒然となる。
「そんなつもりはなかったんだ…ちょっと悪戯してみただけだったのに」
そう言って泣くAの手には硝煙を上げる銃。
そして…その足元には血に塗れた後妻の亡骸が。
この一件は不幸な事故として処理された。
だが、Bは見た。冷めた目でAが「蜂の子はいらないんだ」と呟く姿を。
これが「1人目の女」。


27 名前:2/4 投稿日:2006/09/05(火) 15:39:18
月日は流れ、Aは成長し思春期になり、年上の家庭教師の女と恋に落ちた。
家庭教師の女に旅行に誘われて出掛ける。
が、これは実は罠で、Aを人質にして家庭教師の女はAの家に身代金を要求する。
Aの父は「くれてやる金などない!」と一蹴するが、BはAの父の目を盗み金を作って
身代金を用意する。
犯人に身代金が支払われ、Aは無事戻ってくる。
犯人は後に死亡しているのが発覚する。(Aが殺した。それをBは察知する)
これが「2人目の女」。

事業を興し、成功するA。そんなAに群がる女達。
だが、すっかり女性不信になったAは目もくれない。そんなAを見守るB。
やがて、凍てついたAの心を解きほぐす女が現れる。Aと女は結婚する。
船上での華々しいパーティも終わり、その深夜、寝室に不審な影が。
それはAの妻になった女とその父だった。
「上手くいったな、で、手はずは整っているんだろうな?」
「ええ、保険金をたっぷりかけてあるわ、パパ」
「あとはこの船を沈めれば…」
ここで人の気配に気付き振り向いた二人の前にはAの姿が。
「馬鹿な、睡眠薬を仕込んだのに…!」
慌てふためく二人を前に、Aは冷め切った目で言う。
「俺に睡眠薬は効かない…ずっと服用し続けてきたんでね」
炎上する船。そして妻と義父を失ったAは莫大な保険金を手にする。
これが「3人目の女」。


28 名前:3/4 投稿日:2006/09/05(火) 15:40:04
月日は流れ、AもBも年老いた。偏屈なAの傍に変わらずかいがいしく仕えるB。
Aと父は断絶状態であったが、クリスマスになると毎年贈り物が届き、Aはそれを
楽しみにしていた。
そして今年もクリスマスの夜が来た。Aは戯れにBを同じ食卓につかせ、話をした。
「B、お前のワインに毒を入れた。それを私が飲めといったらどうする?」
躊躇なくワインを飲み干すB。続けてAは言う。
「庭の池の向こうに咲いている椿を取ってきてくれ、今すぐに」
「はい、旦那様」

吹雪の中、池へ向かうB。池には氷が張っているが、それは薄く脆い。
それを承知でBは歩みを進める。
屋敷の中でAは思う。あの池の氷は人の重みに耐えられぬ。
極寒の中、池に落ちれば命はない、と。
Bを始末しようと思い立ったのは、Bに自分の今までの行いを他言されぬ為。
AはBの部屋にそれを臭わせるものがないか、始末に行く。

Bの部屋でAは愕然とする。机の中の見慣れた包装紙やリボン、カード…。
毎年贈られてくる「父からのクリスマスプレゼント」と同じそれら。
あの父が、そんな真似をするはずがないのに、どうして気付かなかったのだろう。
全てはBの仕業であったのだ。

氷の軋む音を聞きながら、Bは思う。
今年からはクリスマスプレゼントを贈れなくなってしまう、と。
足元の氷が割れ、Bは池に落ちる。そこに息せき切って駆けつけるA。
Bは驚き、叫ぶ。
「ダメです、だんなさ…坊ちゃん!」
「お前はずっと…変わらないでいてくれたんだな…ねえや」
「ダメです、私なんかの為に…!!」
Bを助け上げ、Aは死んだ。


29 名前:4/4 投稿日:2006/09/05(火) 15:41:06
「そうです、私が『4人目の女』です…」
Bの目から涙が溢れた。
刑事はBを労わるように言った。
「Aさんは死の間際に、ようやく本当に欲しかったものを手に入れたんですよ」

Aの死に顔は、安らかだった。

一見美談ぽいが結局、Aの所業全部ばらしちゃってるのが後味悪い。


31 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/09/05(火) 17:25:44
>>26-29
展開に引き込まれて、ちょっと感動しながら読んでいただけに、最後の

>結局、Aの所業全部ばらしちゃってるのが後味悪い。

に吹いた。言われてみれば、確かにそうだよなぁ。
Aとしてはそれでも満足…とかだといいけど、それじゃスレ違いになるか。


65 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/09/06(水) 00:58:21
>>31
一応、刑事はラストで「この話は俺達の胸にしまっておこう」
的なこと言ってるからオッケーかとw

 

きねづかん (小学館文庫)
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