彼は花園で夢を見る(よしながふみ)

845 名前:1/2 投稿日:2006/09/18(月) 01:25:49
よしながふみ「彼は花園で夢を見る」に登場する、
主人公の楽士を召抱えている男爵(ヴィクトール)の思い出話が後味悪い。

若くして爵位を継いだばかりだったヴィクトールはある日、狩りの最中に美しい娘イザベルと出会う。
話を聞くと、彼女は偶然にも、昨日決まったばかりの縁談相手、オートウィユ家の娘だった。
婚約者の顔を知らなかったヴィクトールと、
そもそも縁談の話すら知らなかったイザベルは驚くが、二人はすぐに恋に落ちる。

しかし、イザベルは婚礼の日のその朝に、森で何者かに殺されてしまう。
森の近くをうろついていた浮浪者が犯人として捕らえられ処刑されたが、
イザベルが何故夜中に一人で森へ出かけて行ったのかは分からないままだった。

イザベルの死後しばらくして、オートウィユ家の当主がヴィクトールを訪ね、
「もう一度我が家の娘を貰ってはいただけないか」と頼む。実は、イザベラには姉がいたのだった。
イザベラの姉、ラウリーヌは無口で愛想のない女性で、夫婦の間にはほとんど会話らしい会話もなかった。
ヴィクトールはイザベラを亡くした辛さを忘れることができず、自ら志願して遠征地へ赴く。
一年後、幸か不幸か生き延びて故郷へ帰ってきたヴィクトールは、
城の周りの道や庭に、以前はなかった美しい花が咲き乱れているのを見て驚く。
それらの花はすべて、ラウリーヌが種を撒いて育てたものだった。
「私のためにこの花は咲いているのだろうか」と尋ねるヴィクトールに、
ラウリーヌは「あなたが少しでも心慰められたのなら」と答える。
涙を流し、ラウリーヌに寄り添うヴィクトール。


846 名前:2/2 投稿日:2006/09/18(月) 01:26:49
結婚後数年して、ようやく心を通い合わせた二人だったが、その夜ヴィクトールはラウリーヌに真実を語る。
実は、ヴィクトールの最初の婚約者は、元々姉のラウリーヌの方だったのだ。
しかしヴィクトールがイザベラと出会い、恋仲になったことを知った姉妹の父は、
領主であるヴィクトールに遠慮して婚約者をラウリーヌからイザベラへ差し替えてしまったのだ。

ヴィクトールがそれを知ったのはラウリーヌと結婚する直前だったが、
てっきり知らずに結婚したと思っていたラウリーヌは、本当の事をすべて知っていた。
「ずっと知っていて、恨めしくはなかったのか。私とイザベルの結婚が、イザベルの事が」
そう尋ねるヴィクトールはある疑惑に思い至る。何故、婚礼の前の日にイザベルは森の中にいたのか。
ヴィクトールの想像どおり、ラウリーヌはその日、イザベルと森の中に二人でいたと答える。
「では、お前がイザベルを…!」
そう詰め寄るヴィクトールにラウリーヌはその晩に起こった出来事を明かす。
ラウリーヌを森に呼び出したのは、イザベル本人だった。
イザベルは、婚約が姉から自分に差し替えられたのを知ってしまったのだ。
「ごめんなさい、お姉様。でも私は彼を愛してしまった」と泣くイザベルに、
ラウリーヌは「幸せにおなりなさい」と言って、二人はそのまま森で別れたのだった。

「では、やはりイザベルはあの男に…」と呆然とするヴィクトール。
そんな彼を見てラウリーヌは涙を流す。そして突然寝室を飛び出して、
ヴィクトールが止める間もなく城の最上階へ駆け上がり、そのまま身を投げて死んでしまった。

「私が彼女を疑ったその時に愛は終わっていたのだ」というモノローグと、
涙を流したまま、花の咲く庭で死んでいるラウリーヌのアップで終了。


850 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/09/18(月) 02:46:40
>>846
あー、その話読んだ。領主が悪いとはいわないけど、奥方がえらい可哀想なんだよねぇ。
その後ほのぼのした話になるから全体の後味は決して悪くはないんだけど、
あのエピソードが終わった時点ではどうしようかと思ったよ、ホント。

851 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/09/18(月) 03:17:06
よしながさんは本当そういう繊細な話がうまいよね。
その本大好きな漫画の一つだ。

852 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/09/18(月) 04:04:11
本来後味悪くなりそうなあらすじだけど、実際読むと何か不思議な後味

 

彼は花園で夢を見る (ウィングス・コミックス)
彼は花園で夢を見る
(ウィングス・コミックス)