死にぞこないの青(乙一)

326 名前:1/4 投稿日:2006/12/06(水) 00:54:44
乙一の「死にぞこないの青」

主人公は小学生の男の子。
新学期になってクラス替えが行われ、主人公の担任は新任の若い男の先生になる。
先生は面白くて優しくスポーツも得意であっという間にみんなの人気者に。主人公も先生が大好きになる。
ある時クラスで係決めが行われる。
主人公の希望した係(飼育係だったかそんなんだった)は希望者が多く、
先生は「言い争いになっても困るし、希望者達で時間を見つけて話し合いで係を決めなさい」と言う。
主人公はその日の放課後に話し合いが行われるのかと思っていたのだが、
他の希望者達からお呼びがかからないので、今日はやらないのかな…と思い帰宅。
次の日、先生に呼び出された主人公は、「○○君(主人公)は飼育係なのか」と聞かれる。
話し合いが行われなかったのは、誰かが辞退して
知らないうちに自分に決まったのでは…と思った主人公は「はい」と答える。
が、その数日後また主人公は先生に呼び出され、
「君は飼育係じゃないじゃないか!この嘘つき!君は○○係(誰も希望者がいなかった地味な係)になれ!」と言われる。
実は話し合いは行われており、何らかの行き違いで
他の希望者達に主人公は辞退したので参加しなかったのだと思われていた。
誤解を解こうとする主人公だが、口下手なため、
更に激高している先生が恐ろしくて何も言うことが出来なかった。


327 名前:2/4 投稿日:2006/12/06(水) 00:56:20
その日から主人公は先生に陰湿ないじめを受けることになる。
無視されたり、出席をとるとき「○○君は休みだな」と勝手に休みにされたり、
難しい問題をわざと当てられたり、笑い話の種にされたりした。
また、「○○君が宿題を忘れたので今日はみんなの宿題を倍にする」と言われたり、
主人公が必死に予習して間違えずに出した宿題を「答えを見た」と決めつけ連帯責任にしたりするので、
クラスメイトからもいじめられ、八つ当たりをされるようになる。仲の良かった親友もよそよそしくなる。

やがて主人公は、自分が嫌な思いをしているとき、ぼんやりと人影が見えるようになる。
主人公と同じくらいの背格好だが目はぎょろりとしており、
全身の皮膚は青色で髪の毛はなく、顔中に縫い目があった。主人公は以前母親と姉から、
「お前は昔大事故にあい、薬の副作用で全身は青くなり毛も抜けて死に掛けていたことがある」と教えられていた。
主人公がその人影に「君は僕なのか」と聞くと、人影は「そうだ」と答えた。
主人公はその人影を「青」と呼ぶようになった。
やがて、黙って見ているだけだった「青」は、いじめられている最中に
主人公に「そんなやつら殺しちまえ」などとハッパをかけるようになる。
それでも耐えていた主人公だが、ある日勇気を出して先生に
「僕だけやたらと怒られているような気がするんです。皆と同じにしてほしい」と訴える。
しかし先生は「つまり君は、僕だけじゃなくて皆を怒れというんだな」と言い、
主人公に罵声を浴びせて折檻を加えて階段から突き落とす。


328 名前:3/4 投稿日:2006/12/06(水) 00:58:03
気がつくと主人公は家の布団にいた。
先生が怪我をした主人公を助けて家まで運んでくれたのだという。
「とてもいい先生だ」「あの先生すごくカッコイイ!」とはしゃぐ母と姉を見て、
主人公はもう何も言えなくなった。
ある日主人公はひょんなことから先生の自宅の場所を知り、「青」に家に忍び込め、とけしかけられる。
先生が家から出たのを確認した主人公は家に忍び込み、「青」に入れ知恵されて、
煙草を煮てそれを麦茶に混ぜておけば先生はニコチン中毒で死ぬと教えられる。
が、やはり逃げ出そうとしたところを先生に見つかり、殴られて監禁されてしまう。
眠らされたフリをして先生に山奥に連れて行かれる主人公。
隙を見て逃げ出し追いかけられるが、先生もろとも崖から転落してしまう。
重傷を負う先生に、自身も大怪我をしていた主人公は「青」にけしかけられて
岩を落として殺そうとするが、思いとどまって民家を探し助けを呼ぶ。
やがて入院中の先生と話す主人公。
「みんなには適当に嘘をついておきます」「どうして僕をいじめたんですか」と言うと、
先生は「誰でも良かったんだ」と泣いて謝る。
泣きながら心配して怒る家族の姿と、悪かったと泣く親友の姿を見た主人公。気づくと「青」は消えていた。

329 名前:4/4 投稿日:2006/12/06(水) 00:58:43
先生は「一身上の都合で」学校を辞め、
新学期になり、クラスメイトは普段どおりに主人公に接するようになる。
新しい若い女の先生は前の先生ほど評判は良くなく、しかもどこか抜けていた。
「先生は自分が皆にどう評価されているのか怖くないんですか」と問う主人公に、
新しい先生は「だって頑張って頑張ってされる評価がそれなんだから、それがどんなものでもしょうがないじゃない」
と笑う。主人公もそれに微笑んだ。

とりあえずハッピーエンドで終わるのは良いんだけど、先生が最後まで主人公以外には
「生徒思いの良い先生」と思われてるのと、いじめをしてたクラスメイトになんの罰もないのが後味悪い…。
それでいいのか、と思う。
あと主人公、聖人すぎて怖い。


330 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/12/06(水) 01:10:57
>>329
その青が主人公の悪い部分を全部かぶっていたってことじゃないの?
要は主人公が考える悪いことは全部その青のせいにして逃げてたとも取れる

331 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/12/06(水) 01:30:43
>>326
むしろ、主人公は自分の中の汚い感情を「青」という人格に押し付けて
自分の心は綺麗なままだと思い込んでいるんじゃないか。
主人公は、「青」は自分であると同時に、別の存在として認識している節がある。

332 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/12/06(水) 01:51:05
そーだな
殺してやりたいとまで思っている自分の感情をも認めないとな。
それは特別な事じゃないしけして悪いわけでもない。
ただ 今後そういったことにぶつかった時に、また「青」にすべて押しつけるのはいただけない。
先生は自分の弱さからくる卑怯さや汚さを認めて泣いたわけだし、クラスメイトもそんなもんだろ。
私的に一番後味悪いのは主人公だわ。

333 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/12/06(水) 02:38:58
>326
理不尽に虐げられた人間が相手に悪意や殺意を抱くのは至って正常な反応だから
別人格を作り出すというのは現実との折り合いという点では割と理にかなっていると思われるよ。

今回はたまたまターゲットが「青」持ちで助かったようだけど
そういう形で退職した場合、1年くらい休職の後別の学校で復職だろうし
人の本性なんてそうそう変わるものではないから次回はとことんまで生徒を追い詰めるかも。
事実を覆い隠しているため未来の犠牲者を予想させるよい後味の悪さですね。

 

死にぞこないの青 (幻冬舎文庫)
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