夜の声(手塚治虫)
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634 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/04/29(日) 01:28:34
- 手塚治虫の短編
あるイケメンエリートサラリーマンには密かな楽しみがあった。
彼は週末になると家から離れた遠い地に行く。
そしてそこで浮浪者の装いをして道端で座り込むのだ。
普段は羨望の目で見られ続けているイケメンが、
この時ばかりは誰からも見向きもされない。
道いく人々をただひたすら眺めるのがイケメンの趣味だった。
夜になると決まってぼろい隠れ家に行って浮浪者ルックからイケメンに戻り、自宅に帰る。
いつものように隠れ家に行こうとしたところ、追われている女性に遭遇。
浮浪者ルックのままで女性を助け、どうせ自宅に帰るからと隠れ家を女性に提供してあげた。女性は地元でわけあって罪を犯して逃げてきたのだという。
しかし、仕方なくやったらしくて全然不良っぽい感じのない明るくて可愛らしい人だ。
浮浪者の姿で毎回週末に世話を焼きにいくうちにイケメンは彼女に惚れてしまう。
「あそこの会社で社員を募集してるんだ」と浮浪者の姿で紹介する。
彼女はこのままでいいと渋るが、浮浪者が言うのなら仕方ないと面接を受け、
イケメンはもちろん即採用。そしてありのままの姿で彼女に熱心にアプローチする。
そして一方では週末になると浮浪者姿で、隠れ家で彼女と会った。
両者が同一人物だと気付かない彼女は、イケメンの態度を浮浪者に相談する。
「あたしは優しくしてくれたおじさんの方が好きなのよ」
「俺なんか金もなにもない イケメンと結婚した方がお金持ちになれて幸せだぞ」
と言うとようやく彼女は少し心を動かしたようだった。イケメンと女性は結婚し、一方で週末には偽りの姿で会う習慣を残したままだった。
女性は益々浮浪者に惹かれて行き、イケメンは空回りするばかり。
前科の事をうっかり口走り「勝手にあたしの事を調べたのね!」と誤解を受け、決定的に嫌われる。
ある日、女性はいきなりイケメンに襲いかかり、瀕死のイケメンの横で金を漁った。
「お金さえあれば、おじさんに恩返しができる、一緒に暮らせる」
女性は晴れ晴れとした顔で、隠れ家へと去っていく。
イケメンは最後の力で「君を愛していたけどおじさんは旅に出なくちゃいけないさようなら」と手紙を書き、
彼女を見つけたら、自分が書いた物だとは明かさずに渡してほしいと部下に言付け力尽きた。
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635 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/04/29(日) 01:39:09
- >>634
イケメンは馬鹿だと思ってしまった。