今はもういないあたしへ…(新井素子)

176 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/06/16(土) 14:32:11
新井素子「いまはもういないあたしへ……」
うろ覚えだが、一人称形式なので感情移入して読後が最悪だった

結婚間近の27歳女性は、婚約者のところに向かう途中で車に轢かれてしまう。
野原をさまよっていたところを、おばあちゃんに迎えられるという臨死体験をした後に
目覚めた場所は病院で、半年ぐらい眠り続けていたらしく、その影響か妙な違和感を体に感じる。
結婚式にそなえて自前の髪で結えるよう伸ばしていた髪は
手術のために剃られてしまい、結婚式の日も寝ている間に過ぎてしまっていたが、
婚約者はそれを咎めず、生きていてくれただけでも幸いだという。
事故現場で警官に「手足がちぎれて大量出血で危ない」という風に聞かされ、
死ななくても障害はあるかもと思ったが、女性は五体満足でそれも喜ばしいという。
女性はその発言に驚く。両親からは頭を強く打っただけだと聞いていたし、
手足はちぎれたどころか、繋ぎ合わせたような手術痕もない。
婚約者もそのことは不思議がるが、警官が間違えているということにしてその場は納得した。

体がしっくりしないという感じの違和感を感じるまま、女性は妙な夢を見る。
強い衝撃と共に、手足に激痛と喪失感。そして失われていく大量の血液。そのまま女性は死んでしまう。
胸や足の皮をつねられた後に、頭を切り開かれ脳を奪われる。そのまま女性は死んでしまう。
それは夢のようではなく、まるで現実にあった事を追体験しているようだった。
でももし現実だとしたら、女性は二回死んでしまう事になる。
今確かに生きているのに、それに人間は一度しか死ねないものなのに。
ふと夢の中でつねられたような感触だった胸や足を見てみる。
そこにはかつてうっかりつくってしまった馴染みの古傷があった。
こけたりして出来た傷なのだが、その傷になにか違和感を感じる。

繰り返し同じような夢を見続ける女性。その夢の中では液体で満たされたガラスの器の中にいた。
ガラス越しに、同じような器が見え、その中に人型のなにかが入っているのが見えた。
器の中の水は体温と同じぐらいで、女性が泣いても涙と液体はすぐに溶け合ってしまう。
悲しみの証すら消えてしまう事に女性はまた泣くが、やはりその涙も消えてしまう。


177 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/06/16(土) 14:34:25
婚約者が聞いた事故の様子と、親から聞いた事故の様子の不一致、
そして体の違和感の理由を女性は婚約者と共に考えるうちに、一つの仮説を立てる。
自分は事故で死に、そして無事だった脳を取り出され、今の体へと移植されたのだと。
一般人で金持ちでもない女性に万が一のためのスペアとしてクローンが
用意されているのは非現実的だが、女性は感覚としてその仮説が真実だと思う。
脳は前の体の記憶を覚えていて、体の細胞の一つ一つに病院内で密かに暮らした記憶をわずかに残している。
そのわずかに残った記憶が蘇る度に、ただスペアとしての不遇な日々を送ったクローンに同情し、
一方でクローン自身としての思考もわいてきて、自分の辛い身の上を悲しんだりもする。

婚約者は、信じられないがもしも仮説が事実だったとしても、それで女性が自分を責める必要はないという。
もしも女性と誰かが溺れていたら、婚約者は迷わず女性を助ける。
しかし溺死した者が女性を憎む道理はない。見捨てた婚約者を選ぶべきだと言う。
女性の意識がない間に医者たちが勝手にやった事なのだろうから気にするな、
そう言われても女性はその考えを受け入れられなかった。
女性は助けられた者であると同時に、溺死してしまった者でもある事になる。
そしてやはり溺死した者は、たとえ道理にかなわなくても助けられた者を恨むしかない。

やがて女性はクローンの記憶を頼りに病院内をさまよい、
かつてクローンがいた秘密の部屋を見つける。
クローンは生まれ以外は普通の人間と同じように育てられるはずだろうに、
記憶にある通りその部屋にいるクローンたちは特殊なガラスの器の中に入れられていた。
何らかの科学作用で急成長を促すためらしい。女性のクローンは、女性と同じく
27年間の時を送ったわけではなく、恐らくポッドの中に入れられ半年程度で育ったらしい。
ポッドの中でしか生きられずにすぐに代用品として殺されたクローンが、「あたし」が可哀相だと
女性は泣き、そして罪悪感と憎しみのようなものを感じながら自殺した。

野原の中をさまよう女性。だけどもう迎えにきてくれる人はいなかった。
祖母は「あたし」ではない方の「あたし」を連れて行ってしまったから。
だから女性は導いてくれる人もいないままそこに居つづけるしかなかった。


180 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/06/16(土) 15:20:43
>>176
>でももし現実だとしたら、女性は二回死んでしまう事になる。
脳は生きてるのに体の死のほうを重要視してる オカルト
脳を廃棄されてるクローンの体に前の記憶があるとかオカルト

202 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/06/17(日) 02:28:30
>>180
亀だが、オカルトだよね。
176じゃないが一応SFという肩書きの物語だったのに
体の記憶だとか、一人の死にお迎えは一回、とか
とてもじゃないがSFの合理性が無いのも後味わるかった。
オカルト的にもイマイチ。

でも、心臓移植された人がなぜか移植後、急に
ドナーが生前の好んだ食べ物を好きになったりする
というオカルトな話は実際にあるらしい。


207 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/06/17(日) 07:29:30
>>202
実際に読んでみれば結構すんなり納得できるよ。
引っかかってる部分は全部主人公の妄想ともいえるものだし。

224 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/06/17(日) 15:03:55
>>207
いや、実際に読んでの感想な訳です。

 

今はもういないあたしへ… (ハヤカワ文庫JA)
今はもういないあたしへ…
(ハヤカワ文庫JA)