半神(萩尾望都)

259 名前:1/3 投稿日:2007/12/22(土) 01:30:07
同じ文庫に収録されていた短編。こっちは「半神」というタイトル。

主人公はベトちゃんドクちゃんの姿で生まれた双子。
妹と身体がくっついているので、いつでもどこでも一緒。
人々の反応もいつでもどこでも一緒。
愛くるしい顔、豊かな金髪、天使のほほえみを持つ妹を見て大人達も微笑む。
「なんて可愛らしいのかしら!」
そして主人公を見て口をつぐむ。
まばらに生えた髪、落ちくぼんだ頬、老婆のようにしわがれた肌、やせ細った手足。
しばらく無言の後、大人達は言う「…お利口そうなお嬢さんね」

幸か不幸か、主人公は頭はよかった。
大人達が見た目だけで妹を可愛がり、主人公を哀れんでいるのを知っていた。
両親も例外でないと知っていた。


260 名前:2/3 投稿日:2007/12/22(土) 01:31:35
妹は微笑むだけで全てが許される。
見た目は美しいが脳内は赤ん坊の妹は、成長するに従って主人公の手に負えなくなっていく。
健康的な妹が暴れ出すと、やせ細った主人公には押さえられないのだ。
それでも大人達&両親は言う。「お姉ちゃんなんだから妹を見てやってね」

ある日医者が両親に告げる。
妹の体内には栄養を作る機能がない。妹は主人公の栄養を奪って生きている。
このままでは、いずれ二人とも死んでしまう。
主人公一人では大人二人をまかなう栄養は作れない。
妹は一人では生きられない。主人公だけでも助けるために、二人を分離するしかない。
両親は悲嘆にくれるが主人公は光が差したようだった。
妹が今まで栄養を奪っていた。妹を切り離せば私は普通の子供になれる。
手術には危険を伴ったが、主人公は手術を望んだ。


261 名前:3/3 投稿日:2007/12/22(土) 01:32:17
数年後。主人公はみるみる健康になっていった。
バラ色の頬に豊かな髪、天使のほほえみ。鏡に映るのはまるで妹。それが今の主人公。
学校に通い勉強をして、友達を作りデートもした。
普通の女の子として生きていた。

帰宅すると母親が泣いていた。妹がもう長くないという。
見舞いに行く主人公。
病室のベッドの中、昔の主人公がいた。
がりがりにやせ細り、髪もなく、頬は落ちくぼんだ老人のような妹。
妹は主人公を見て嬉しそうに笑った。昔と同じように笑顔で主人公に甘えてきた。

数日後、妹がなくなる。
その後主人公は幸せに暮らすが、時折鏡を見て涙を流した。
誰よりも憎んで誰よりも愛していた。私の半神はこの世にいない。


262 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/12/22(土) 01:35:37
少女漫画の世界はいいな。美しいよ。
青年漫画で世界が明日で終了となったら、レイプや暴力沙汰が頻発し
阿鼻叫喚!ってな展開になりそうだもんな。

そういう自分も明日世界が滅亡となったら愛する人たちと穏やかに過ごすか
憎いあの糞野郎をこの手で殺しに行くか悩むわ。

 

半神 (小学館文庫)
半神
(小学館文庫)
半神 自選短編作品集 萩尾望都Perfect Selection 9 (フラワーコミックススペシャル)
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