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693 名前:本当にあった怖い名無し :2008/08/24(日) 22:04:11
夢野久作の小説「眼を開く」

若い小説家が仕事に没頭するため、深い山の中の山荘にこもった。
郵便局から3里(12キロ)、一番近い集落からは1里(4キロ)離れた山荘への冬篭り。
しかし小説家は仕事に没頭する傍らで下界の情報に飢え、村の郵便局に頼んで
「新聞や手紙は毎日届ける」ようにしてもらった。
豪雪地帯の冬、しかも断崖に沿った山道の先にある山荘だ。
毎日届けるなどとんでもなく危険なことだが、小説家には配達員の安全にまで頭が回らない。
しかし郵便配達員は愚直に毎日、郵便物と新聞を運んでくる。晴れの日も、雪の日も。

数ヶ月がたって年も明け、旧正月が近づいた頃。
小説家はその配達員がトラホーム(流行性の眼病)にかかっていることに気がつく。
そこで親切心から、町にいる妻宛に手紙を書き、その配達員に託す。

「今の俺の仕事場に一人の郵便配達手が来る。
 その郵便配達手君はトラホームにかかっていて、けんのんで仕様がない。
 そのトラホームをイジクリまわした手で、又イジクリまわした郵便物から、
 俺の眼にトラホームが伝染しそうで怖くて仕様がない。
 小説書きが眼を奪われたら、運の尽きと思うから、手を消毒する石炭酸と、点眼薬と、
 黒い雪眼鏡を万田先生から貰って、念入りに包んで送ってくれ。
 黒い眼鏡はむろん郵便配達手君に遣るのだ。あの郵便配達手君が来なくなったら、
 俺と社会とは全くの絶縁で、地の底に居る虫が呼吸している土の穴を塞がれたようなものだ。
 俺は精神的に呼吸することが出来なくなるのだからね。
 その郵便配達手君は、背が高くて人相が悪いが、トテモ正直な、好ましい性格の男らしい。
 郵便屋だって眼が潰れたら飯の喰い上げになるのだから気の毒でしようがない。云々…………」

こんなとても本人には読ませられない手紙を託された配達員は山を下ってゆく。


694 名前:693 :2008/08/24(日) 22:05:16
しばらくしてその配達員によって荷物が届くが、小説家はそれを忘れていて開封せずに放っておく。
数日後、山は大嵐に襲われるものの、それでも愚直に任務を果たそうとした配達員は
眼病で眼がくらんで道に迷い、凍死してしまう。

ラスト。小説家と村人は配達員の遺体を囲んで泣く。
凍死体に朝日が当たって溶かされ、固くとじられた瞼が静かに開いて行くのあった・・・

小説家の自己中ぶり、手紙の内容がなんとも後味が悪い。

ttp://www.aozora.gr.jp/cards/000096/files/2098_19608.html


699 名前:本当にあった怖い名無し :2008/08/24(日)
23:03:00
>>693-694
面白かった。ありがとう。
元のを読むと当時の考え方というか美意識に
入り込むので別に腹は立たなかった。
でも忠平かわいそ・・・

710 名前:本当にあった怖い名無し :2008/08/25(月) 00:27:02
>>693
小説家が自分の罪に気付いてないところが後味悪いな。

 

夢野久作全集〈4〉 (ちくま文庫)
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