ホーム » 小説 » 小説/あ行 » うそつき(アイザック・アシモフ)

953 名前:1/4 :2008/10/22(水) 00:03:28
SFの古典、アシモフの短編集『われはロボット』からの一編。
うろ覚えなので固有名詞とか細かい筋はテキトーです。

全編を通しての主人公は、ロボット心理学者のスーザン女史。
高度な人工知能を持ったロボットたちが人間社会で働いている世界。
全てのロボットの人工知能には「ロボット三原則」が組み込まれている。

第1条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。
     また人間が危害を受けるのを何も手を下さずに看過してはならない。
第2条 第1条に反しない限り、ロボットは人間の命令に従わねばならない。
第3条 第1条と2条に反しない限り、ロボットは自分の身を守らねばならない。

どんなロボットもこの三原則に反することができないようになっている。
(反するような行動をしようとすると、人工知能が壊れてしまう)
この三原則のおかげで、人間は安心してロボットと暮らし使役することができる。

さてある日、スーザンが働いているロボット会社で、
偶然にも「人の心を読むことができるロボット」が作り出された。
ごく普通の家事手伝いロボットの大量生産ラインで生まれたロボットで
なぜこのロボットだけにそのような能力が備わったのかは不明だった。


954 名前:2/4 :2008/10/22(水) 00:04:11
スーザンや同僚のボブたちがチームで読心ロボの研究にあたることになる。
実はスーザンは有能でハンサムなボブに片思い中だったのだが、
読心ロボとスーザンが2人きりで実験をしていると、ロボはそのことを言い当てた。
心が読めるのだから隠しても仕方ないと、スーザンは正直に胸の内を打ち明ける。
「確か私はボブに恋をしているけど・・・彼にアプローチしたくてもできないわ。
 私は若いころから研究一筋で、頭でっかちの色気もない女だし、
 何よりボブには美人なブロンドの恋人がいるらしいの」

それを聞いたロボは驚いたように言った。
「そのブロンドの女性ならボブの妹ですよスーザン博士。
 一緒に歩いてるのを見て誰かが勘違いしたのでしょう。
 実は、ボブもあなたのことが好きなんですよ。ボブが好きなのは、
 派手な美人なんかじゃなく、あなたのような知的な女性なのです」

ボブの心も読めるロボが言うのだから間違いないことである。
すっかり有頂天になったスーザンは慣れない化粧をしてめかし込み、
ボブに対して積極的にアプローチするようになった。

しかし、ボブはスーザンに対し、以前と変わらないそっけない態度をとるし、
それにボブが件のブロンドと思しき女性と町で恋人のようにふるまっているのを
スーザンは見てしまった。ロボと2人きりの時にそのことを告げると、ロボは言った。
「私は心が読めるのですよ、どうか私を信じてくださいスーザン博士。
 ボブのそっけない態度は、あなたが急に親しげになったので照れているのです。
 ブロンドの女性は幼いころからボブに甘えるクセが抜けてないだけです。」
そう聞いてまた安心するスーザンだった。


955 名前:3/4 :2008/10/22(水) 00:04:59
だが数日後、読心ロボ研究チームの会議中、部長Aとヒラ社員のBが、
意見の食い違いから口論のような状態になったことが発端となり事は起こった。

部長Aに対してやたらと尊大な態度をとるBに対し、とうとう部長Aがキレた。
「B君、キミは私の部下のくせにそこまで楯突くなら、左遷させるぞ!」
そう言われてもまだBはニヤニヤと余裕の笑みを浮かべている。
「またまたA部長、あなたは本当はもうすぐ退職するので
 僕に部長のポストを譲ろうと考えていらっしゃるんでしょう?」
部長Aはそれを聞いて唖然としている。
「何を言ってるんだ?私は退職するつもりなどないし、
 前々から生意気なキミのことが気に入らなかったんだ!」
そこまで言われてBは戸惑った表情になり、読心ロボの方を振り向いた。
「なんですって・・・?だって、ロボが確かにそう言ったんだから・・・」

驚いたスーザンもロボの方を見ると、どうもロボの様子がおかしい。
「はい、確かに・・・A部長はB氏を昇進させるおつもりだと・・・
 私がB氏に申し上げました・・・」
言葉は途切れ途切れで動きもぎくしゃくとしている。

すぐさま事態を察したスーザンは、一瞬ののちボブに尋ねた。
「ねぇボブ、先日あなたと町を歩いていたブロンドの女性は、誰なの?」
キョトンとしながらもボブは答える。
「え?あぁ、彼女なら僕のフィアンセだよ。今度みんなにも紹介しようと
 思ってたところだったんだがね。」


956 名前:4/4 :2008/10/22(水) 00:05:47
予想通りの答えに、スーザンは苦々しい顔で言った。
「最初に読心ロボットが生まれた時点で気がつくべきだったわ。
 『ロボットは人間に危害を加えてはならない』、あらゆる意味で・・・
 そう、ロボットは精神的にも人間を傷つけることができないのよ。」

ロボがスーザンとBに告げたことは、ロボが読み取った彼らの望むままの、
彼らにとって最も心地よい、しかし偽りの答えでしかなかったのだ。
スーザンは既に人工知能に異常をきたしかけているロボットに畳み掛ける。
「でも、これでわかったでしょう。
 あなたが本当のことを言えば人間は傷つく。
 だからあなたは偽りを答える。しかし事実を知った人間はさらに傷つく。
 しかし本当のことを言えば人間は傷つく。
 だからさらに偽りを答える。事実を後から知るほどに人間はもっともっと傷つく・・・」
ロボは、考えることを避けてきたであろう矛盾をまざまざと突きつけられ、
人工知能をショートさせてしまいその場で機能を停止してしまった。

スーザンは1人つぶやく。「うそつき」と。
その後何百台も同じ型のロボットが製造されたが、
再び読心ロボットが現れることは無かった。


957 名前:本当にあった怖い名無し :2008/10/22(水) 00:12:01
ちなみに短編のタイトルもズバリ「うそつき」なんですが
すぐにネタバレしちゃうかなーと思い伏せてみました。

三原則のおかげでロボットはみんな人間に忠実な憎めないやつで、
特に下級のロボットほど三原則に少しでも反することに耐えられない。
(上級のロボットになるほど、上手く折り合いをつけられる。例えば、
「人間の命を救うための外科手術の過程では、一時的に人間の体にメスを入れ
体を傷つける」という風に大事を小事に優先させることもできる。)

この話のロボットもけっこう下級のヤツで、
だからこそすぐバレちゃう安易なウソをついてしまったりして、
でもそこがいじらしいというか・・・なので最後に言葉責めであぼーんさせられ
「うそつき」とまで言われてしまうのが不憫でした。

完全な余談ですが、アシモフの別の小説には同じように
人間の心を読めるロボが出てくるんですが、そのロボはかなり上級なので
人類全体のことを考えて行動してくれます。


958 名前:本当にあった怖い名無し :2008/10/22(水) 00:12:49
それがいわゆるロボット三原則の元祖の話なのかな?
てっきりロボが悪意でやってるかと思いきや、
あくまでもプログラムされた命令に従ってやってたんだな。
切ない

960 名前:本当にあった怖い名無し :2008/10/22(水) 00:32:17
スーザン女史より平社員Bがいたたまれないお

 

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