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724 名前:本当にあった怖い名無し :2008/11/06(木) 00:09:40
長文スマソ。宮部みゆき「孤宿の人」ネタバレもりもり。

ほうは江戸の大店の跡取り息子が女中に手を出して生まれた女の子。
ほうを産んで女中は死んだため、ほうは女中を疎んでいた大店の主人達の手によって
阿呆の「ほう」と名付けられ、金貸しを営んでいた老夫婦に引き取られる。
しかし、老夫婦は育児を放棄し犬の子のように育て、彼女が大きくなってからは雑用ばかりやらせていた。
ほうが少女と呼べるくらいまで育った頃、大店に不幸が立て続けに起こった。
それは恨みを持ちながら死んだ者=ほうの母である女中のせいだと信じた大店の主人達は、
ほうを讃岐の金比羅に参らせることで恨みが晴れるという神託をもらい、ほうを老夫婦から買い取り、
女中をつけて金比羅参りに行かせた。
その女中が意地悪な人間で、旅中、ほうをいじめたあげく船酔いで弱った彼女を置いて金だけ持って逃走。
ほうは金比羅の隣にある丸海藩の宿に置き去りにされてしまった。
ほうが置いて行かれた宿の主人の兄は寺の和尚で、彼の紹介で丸海藩の藩医・井上舷州に引き取られた。
その生い立ちのせいか、ほうは年の割にものを知らず頭も鈍かったが、そこの家の人たちはおだやかで、
ほうは雑用として働きながら、舷州の息子啓一郎やその妹琴江に読み書きや暦の読み方を教えてもらい、
生まれて初めて人間らしい生活を送る。


725 名前:本当にあった怖い名無し :2008/11/06(木) 00:10:01
しかし、その幸せの日々も、琴江が毒によって殺されて一変してしまう。
殺した相手は物頭の娘で琴江の友人、美弥という。ほうを含む井上の家人・使用人達は、
琴江が殺された時美弥が井上家に来たことを目撃しているし、
状況から彼女が琴江を殺したことは間違いなかった。
だが、琴江が発見されたときには、美弥はすでに姿をくらましてしまっていた。

同心(岡っ引きの上の位)で啓一郎の友人である渡部は、
美弥を目撃したほうに、犯人を捕まえること協力して欲しいと頼む。
それと時を同じくして、藩医である井上家に使いが届けられる。
以前病が流行り、呪われているという噂が立っている涸滝の屋敷を修繕していたところ、
竹矢来が突然倒れてきて幾人もけが人が出たというのだ。
琴江のことで井上家は騒然としていたが、ほうは追い出されるようにしてけが人が運ばれた寺に使いに出される。
ほうが寺に行くと、いなくなったはずの美弥がいて、平然と手伝いをしていた。
ほうは訳が分からず、無我夢中で美弥につかみかかってしまった。

取り押さえられ気絶したほうは、引手(岡っ引き)の詰め所に連れられてきた。
ほうが気づいた頃、詰め所に渡部と引手の親分・嘉助がやってくる。渡部はほうに言った。
琴江は殺されたのではなく頓死であり、ほうが見た物はすべて幻である。また、美弥に理由もなくつかみかかった
ほうはもう井上家には置いておけない……と。
渡部はほうに「犯人探しを手伝って欲しい」とまで言ったのに、急に手のひらを返したようにそう言われ、
幼く、頭の回転がよくないほうには何を言われたか分からず呆然とする。
話を聞いていた引手見習いの女・宇佐は、ほうが嘘をついているように見えないと感じた。
ほうは一旦嘉助親分に預けられたが、ほうの力になりたいと思った宇佐が彼女を引き取った。


726 名前:本当にあった怖い名無し :2008/11/06(木) 00:10:37
宇佐は、琴江の死の真相が、考えた末にこういうことではないかとある推測をした。
先日、丸海藩はお上より、元勘定奉行の加賀という罪人を預かるという役目を受けた。
罪人とは言え高い身分の方のお預かりというお上の命令に、丸海藩は浮き足立っていた。
罪人である加賀は、元々は下級武士であったが、才能で成り上がった才気溢れる男だった。
しかし、何を思ったか突然妻と子供を殺し、それを目撃した者達をも殺し、それでもなお平然としていたという。
そのため、彼は「鬼」と呼ばれ、丸海でも恐れられた。
加賀が来る前に、彼を幽閉する涸滝の牢屋敷を修繕していたところ、
竹矢来が倒れて大勢のけが人が出たこと、また、この夏は例年に比べて雷害が多く、
これらの不幸はすべて鬼である加賀が呼んでいるのではないかと丸海で噂されたほどだ。
美弥の家は、今回の加賀お預かりの御牢番を務めているため、不祥事は許されない。
御牢番を務めている家から殺人者が出たと世間に広まると、藩の問題になるからだ。
それを知っている美弥は、だからこそ琴江を毒で殺した。
藩医を務める井上家は、藩のためにも美弥を殺人者にできず、琴江は病死したことにした……。
宇佐がその推測を啓一郎に伝えると、彼は重い口を開き、そのとおりだと認めた。
動機は、彼女は幼なじみである保田に恋をしており、彼と婚約した琴江が許せない、というものだった。
井上家の人たちは、美弥が犯人であることを知りながら、それを訴えることができないつらい状況だった。

またそれと同時期、宇佐は見回りをしながら、最近食中毒が流行っていることに気づく。
渡部もまた、食中毒で死んだ下男が、死因は食中毒ではないのではないかと探りはじめる。


727 名前:本当にあった怖い名無し :2008/11/06(木) 00:11:10
宇佐とほうは、徐々に仲良くなっていく。
最初はふさぎがちのほうも、親切にしてくれる宇佐に心を開き、姉と慕った。
しかし、それもまた長く続かない。
ある日、宇佐とほうは舷州と啓一郎に呼ばれた。
加賀を幽閉している元浅木家・涸滝の牢屋敷にただ一人務めていた女中が急な病で死んでしまい、
その後釜にほうを務めさせるという。
宇佐はそんな曰く付きの屋敷にほうを置きたくないと思ったが、啓一郎への恋心から、
最終的にほうを手放すこと同意してしまう。
ほうは宇佐の元を離れ、鬼と呼ばれた加賀の、呪われた屋敷に下女として奉公することになった。

牢屋敷には、何人かの侍が交代で昼夜働いていた。
そしてそこは、決して人が自由に出入りできないよう厳重に囲まれていた。
ほうは侍が進んでやりたくない仕事……馬小屋の掃除や水くみなどを任された。
侍達はみなしゃべることもなく、ほうに不親切だったが、
一人だけ、ほうの監視役・石野だけは親切にしてくれた。
ある日、ほうが仕事に疲れてぐっすりと眠っていると周りが騒がしい。
石野があわててやってきて、「昨晩、何か変わったことはなかったか」と聞く。
ぐっすりと眠っていたので何がなんだか分からないと答えると、石野はほっとした表情をした。
実は昨晩、宇佐が務める引手の詰め所の親分・嘉助の息子が、肝試しと称して牢屋敷に忍び込もうとしたのだ。
息子は切られ、嘉助も切腹に処せられた。
宇佐の詰め所には新しい親分がやってきて、
彼の「俺は女は使わない」という一言で、宇佐は引手になるという夢を奪われた。
その後、宇佐は寺に引き取られ、病人やけが人を世話するようになる。
ずっと彼女は、自分の恋心のせいでほうを牢屋敷にやったことを悔いていた。


728 名前:本当にあった怖い名無し :2008/11/06(木) 00:11:31
また、渡部が追っていた、食中毒で死んだ下男は
もともと丸海の名家・浅木家に仕えていた男だと言うことが分かる。
実は彼は毒使いで、以前浅木家で起きた流行病は彼が起こしたもの。
表では流行病と言われたが、実は壮絶な権力争いだったのだった。
加賀が幽閉されている屋敷は、元々はそれをすべて隠すための屋敷だったのだ。
その事実を知った渡部の上司は密かに殺され、渡部は己の身の危うさを悟り、自暴自棄になる。
そして、「どうせ死ぬなら琴江を殺した女を道連れにしよう」と思った。
実は、彼は琴江に身分違いの恋をしていたのだった。
また、美弥がまんまと保田に取り入って
隠れてのうのうと逢瀬を繰り返していたことを知り、怒りを抑えられなかったのだ。
渡部は隙を見て美弥を殺し、そして処刑された。

その日、ほうはなぜか眠れずふらりと外に出た。
そして、きらりと光るものを目撃する。それは、何者かによって放たれた刺客だった。
ほうは刺客に襲われ、命からがら屋敷の縁の下に隠れる。
無我夢中で縁の下を進んでいくと、頭の上が騒がしい場所に突き当たる。
何事かと思っていると畳がはがされ、ほうは見つかってしまった。
ほうがすすんだ場所は加賀が幽閉されている部屋だった。
ほうを見つけた侍は、狼藉者として彼女を切ろうとする。

しかし、それを救ったのは鬼と呼ばれる加賀本人だった。
加賀はほうに興味を示し、彼女に手習いを教えると言い出す。
狼狽する侍達だったが、流人とはいえお上からのお預かりである加賀に言われたらそうするしかない。
ほうはそれから、毎日一度加賀にご機嫌伺いをし、文字などの手習いを受けることになった。
しかし、そのころから親切にしてくれた侍・石野の姿が見えない。
ほうと気軽に話してくれたのは彼だけだったので心寂しくなる。
石野は実は、ほうが加賀の元に行ってしまったことを監督不行き届きで腹を切らされていたのだった。


729 名前:本当にあった怖い名無し :2008/11/06(木) 00:11:52
手習いを始めて何日か経って、ほうは加賀が悪い人ではないのかと思い始めていた。
ほうはあまり考えるのが得意ではないのでよく分からないが、怖い人ではないような気がしたのだ。
事実、加賀はほうの名前の由来を聞き、阿呆のほうではなく、お前の名は「方」だと漢字を教えてくれる。
方とは「物事の方角が分かるように」という意味があると言ってくれた。
二人の心の交流は、不思議に心地よかった。

この夏の雷害はすさまじいもので、
雷を追い払ってくれるという丸海の神がまつってある神社にまで雷が落ちた。
丸海の人々は、それは加賀様のせいだと噂した。
そんな中神社の立て直しを、元々神主の血筋の浅木家が執り行うことになった。
しかし、儀式は何度も失敗に終わる。
丸海は負に満ちていた。人々の心はすさみ、雰囲気は非常に悪かった。
そんな中、ついに不満は爆発した。
もともと丸海は町と浜で仲が悪かった。
その日町の引手が、騒ぎを起こした浜の魚売りを理由も聞かずにしょっぴいた。
そのことに腹を立てた浜の人々が暴動を起こし、火をつけた。丸海の町はとたんに火が燃え移った。
大騒ぎの中、宇佐は逃げまどう人々を寺に誘導し、けが人を助け回っていた。
そんな中、自分が世話になった人たちが山の方に逃げたことを知る。
その山は、涸滝の牢屋敷がある場所だった。
宇佐はあわてて彼らを捜しに後を追う。
町で燃え広がった炎は雨を呼び、雷を呼んだ。
大雨で足下がぬかるむ中、宇佐は探していた人々を見つけ、彼らを安全な場所に誘導していく。
しかし、そんな中、子供が足を踏み外して滑り落ちていきそうになった。
宇佐はあわてて子供を救おうと腕を伸ばすが、上から大きな倒木が落ちてきて、とっさに子供をかばった。
そのため宇佐は倒木に激突し、命を落とす。


730 名前:本当にあった怖い名無し :2008/11/06(木) 00:12:14
雷は涸滝に集中し、落雷のために牢屋敷は焼け落ちた。それは加賀の本意でもあった。
加賀の妻は、もともと大奥にいたが、大奥縮小の際に暇を出された女だった。
妻は加賀と結婚する前にすでに身ごもっていた。
つまり、将軍の子供を授かっていたのだった。
将軍から賜った妻と血のつながっていない……将軍の血を引く我が子を、加賀は大切に扱ったが、
もののように扱われた妻は、やがて精神を乱して子供を道連れに服毒自殺をする。
その事実を隠すため、加賀は目撃者の家臣を殺し、妻子をも殺したことにして、鬼となる道を選んだのだった。

その後、加賀は丸海を脅かす雷獣と戦い、命を落としたのだと丸海の人々は信じた。
浅木家は、加賀を殺して藩に責任を押しつけ、
お家乗っ取りをしようともくろんでいたが、その計画は失敗に終わった。
自然災害で加賀が死んだので、お上にどうにでも言い訳が立つからだ。

また、ほうは涸滝が焼け落ちる前に加賀から奉公を解くと命じられ、屋敷から抜け出していた。
無我夢中で山を抜け、生き延びる。
しかし、姉と慕った宇佐は命を落とし、加賀もまた死んだ。
ほうは井上家での奉公に戻ることになった。そして、最後に加賀からの手紙が届く。
それには人文字「宝」と書かれてあった。
ほうはこれから、阿呆のほうではなく、宝となったのだった。

ほうに良くしてくれた人(琴江、宇佐、石野、加賀)がのきなみ死にまくって後味悪い。


731 名前:本当にあった怖い名無し :2008/11/06(木) 00:16:40
長文乙

個人的には最後の二行がすごく救いになった気がする

 

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孤宿の人〈下〉 (新潮文庫)
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