赤の原遊戯(ワシュピール)(茶屋町勝呂)

805 名前:赤い遊戯1 :2008/11/06(木) 14:28:44
こっそり投下
薄目のフォモ漫画、「赤い遊戯(ワシュピール)」より

主人公はナチス全盛期に育った少年。
当然ヒトラーに心酔し、ナチスの親衛隊に属している。
しかも幹部から重用され、同世代で一番の出世頭。
その理由は、反ナチスの両親を告発し、死刑に追いやったから。
ヒトラー>>>親 という忠誠心を評価されたのだ。
「親殺し」と侮蔑されつつも、少年はヒトラーのために生きている。

少年の任務は命令書の運搬。バイクで街から街へ移動するのが常だ。
しかし、既に戦争は末期。
連合軍の戦闘機がドイツの空を制しており、あちこち空爆されていた。
少年も任務中に遭遇する。
幸い無傷で済んだが、乗っていたバイクは大破。
命令書の運搬法に頭を悩ませていたとき、下っ端兵士風の男に怒鳴りつけられる。
瓦礫の下にいる子供を助けるから手を貸せと、男は命令していた。
命令書の方が大事だったが、男の剣幕に押され、渋々手伝う少年。
何とか助けたものの、子供は意識不明の重体。
男が自分の車で病院へ連れて行くことになり、そのついでとして少年も近くの街まで送ってもらえる事になる。
しかしその途中、陽気にしゃべる男の言葉から、彼が脱走兵であることに少年は気付く。
「脱走兵は死刑だ」と詰るも、ロシア戦線で地獄を見たという男は
敗戦が近い事を悟っており、軽い調子で「見逃してくれ」と笑う。
そこで少年は親を告発した過去を明かし、自らのナチスへの忠誠心を知らしめる。
さすがに顔色を変える男。
少年に銃を向け、「俺を見逃さなければ、お前を殺す」と脅した。


806 名前:赤い遊戯2 :2008/11/06(木) 14:30:06
しかし少年は動じない。
殉職は名誉だと胸を張り、「総統のために死ねるなら怖くない」と明言する。
すると男はとても悲しい顔をし、少年を「哀れ」だと評した。
少年には哀れまれる理由がわからない。けれど激しく動揺する。
そのとき、連合軍の戦闘機が飛来し、彼らが乗る車に機銃掃射を浴びせた。
後部座席にいた瀕死の子供は、急ブレーキで座先の下に落ち、無事。
少年も男に庇われて無事。
唯一、少年を庇った男だけが右腕に被弾し、怪我を負っていた。
戦場でたくさんの少年兵達が死んでいくのを見たと語る男は、
これ以上子供が死ぬのを見たくないと言い、少年に後ろの子供を託す。
哀れみを受けたこと、庇われたこと。混乱する少年は男の指示に従い、車を降りた。
数十メートル歩いたところで、背後で爆発が起こる。
振り向けば、男の車が炎上していた。
「あの男は逃げられただろうか…」
誰もいない路上で、少年は立ち尽くす。

その後、何とか病院にたどり着き、少年は子供を医者に託した。
早速手術となるが、子供の上着を脱がせた途端、看護婦が悲鳴を上げる。
子供のシャツにはダビデの星が描かれていた。
当然、診療は拒否。連れてきた少年までもが責められる。
追い出され、途方に暮れる少年。
そのとき、抱えていた子供が一段と重くなった。
少年は意識のない子供の頬を叩く。「死ぬな」と繰り返しながら。
「せっかく助けてもらった命じゃないか」
そう呟き、少年は泣いた。

親もなく、故郷へも帰れず、元ナチスという十字架を背負った少年はその後どうなるのか。
時代に翻弄され過ぎて後味悪い。