隔離された町

171 名前:本当にあった怖い名無し :2008/12/25(木) 04:11:00
「隔離された町」

日本によく似たとある国のとある町に主人公は住んでいた。
犯罪も少ない分、特に発展しているわけでもないその町は、
可もなく不可もなくといった平々凡々、よく言えば平和な町だった。
夏のある日、その町の中央に位置する公園に隕石が落ちる。
主人公は翌朝のニュースでそれを知るが、
普段から冷静な主人公は特に気にかけないまま高校へ行く。

高校に着くと、クラスはその話題で持ちきりだった。
ニュースに取り上げられることなど滅多にないその町にとって、
たとえそれが隕石という外的要因であっても、ある意味名誉あることなのだ。
たかが隕石ひとつでここまで盛り上がれる彼らを冷笑していた主人公だが、
午後になって町に異変が起きていることに気づき、一抹の不安を覚える。
度々聞こえてくる救急車のサイレン。
なにやらものものしく動き回る先生たち。
そういえば、今日のクラスはやけに欠席が目立つ…。

その日は何故か、クラブ活動が全面的に中止され、
生徒は皆授業が終わるとすぐに帰宅することとなった。
学校から出て、初めて町の変貌に気づく主人公。
商店街は全て閉鎖され、人影も全く見当たらなかった。
不安になりながら帰宅する主人公。


172 名前:本当にあった怖い名無し :2008/12/25(木) 04:11:44
家には父と母と妹の、家族全員が揃っていた。
普段は帰りの遅い父がいることに驚いた主人公が訳を問うと、
会社が臨時で休みとなり、午後で切り上げて帰ってきたのだいう。
パート勤めの母も、中学生の妹も、皆同様の理由だった。
そんなとき、主人公宅に町内回覧板が廻ってくる。
そこには「明確な指示が出るまで全ての社会活動を停止せよ」との内容が。
しかも、その指示を出したのは「国」だった。

しばらくその指示通りに家に篭っていた主人公一家だったが、
さすがに食糧も残りわずかとなり、主人公の提案で隣町へ様子を伺いに出ることとなった。
車に乗り込み、久々に外の景色を見た主人公一家は愕然とする。
何と町はすっかり荒れ果て、ゾンビのように爛れた死体で溢れかえっていたのだ。
動転しながらもようやく町境に到着するが、
そこにはガスマスクをした軍隊によって封鎖されていた。
主人公たちが必死に町から出たいと訴えるが、相手にしてくれない。
なおも訴え続ける主人公一家は、軍隊の1人から驚愕の事実を聞かされる。
実はあの日落ちた隕石には宇宙からやってきた新種のウィルスが付着していたらしく、
そのウィルスに感染すると体に赤い発疹ができ、しばらくすると全身が爛れて必ず死ぬという。
そのため近隣の町の住人は皆疎開しており、この町は完全に隔離されているというのだ。

事実を聞かされ呆然とする主人公たち。
その腕には、赤い発疹ができていた。
帰宅する最中、主人公たちは町で暴動が起きているのを目にする。
レイプされる女性。火を放たれる民家。破壊される街並み。
鬱憤の溜まった住民たちが、やりたい放題暴虐の限りを尽くしていたのだ。
それは、この町が完全に国から「見離された」ことを意味していた。


173 名前:本当にあった怖い名無し :2008/12/25(木) 04:12:15
家に着く主人公一家。家は激しい炎を上げて燃えていた。
と、突然父親が着ていた服を脱ぎ捨てると、燃え盛る家の方へ放り投げた。
「もういいよ、どうでも。どうせ死ぬんだから」
次いで母も服を脱ぎ捨てて投げ捨てる。
「最後は、生まれたままの姿で死にたい」
主人公と妹も、無言のままそれに従う。

車から財布を取り出すと、お札をばら撒いてそれに火を放つ父。
「もうこんなもの、暖をとる燃料にすらならないな」
自嘲気味にそういう父に、母はにっこりと微笑みを浴びせかける。
どうせ死ぬんだからと、家族は互いに秘密を打ち明ける。
浮気していたこと、借金があること、援助交際していたこと…
しかし誰一人としてそれを咎めるものはおらず、皆笑って許しあった。
皮肉にも、最期の瞬間にひとつになれた主人公一家。
4人でともに肩をとりながら、死の恐怖を紛らわすため、燃え盛る家の前で笑い声を上げる。

と、上空に一機のヘリが現れる。
ヘリの乗組員は、拡声器を使ってこう叫ぶ。
「○○町の皆様、たった今ウィルスを死滅させるワクチンが用意できました。
 只今より配布いたしますので、ただちに中央公園へお集まりください」


184 名前:本当にあった怖い名無し :2008/12/25(木) 11:33:08
>>181
>>171は、昔トラウマメーカー関よしみのマンガで見たような気がする。