芋虫(江戸川乱歩)

234 名前:本当にあった怖い名無し :2009/03/14(土) 14:16:15
江戸川乱歩『芋虫』

主人公の夫は退役軍人で、戦争で両腕両脚を失い、耳も聞こえず、口も利けなかった。
名誉の負傷・英雄・軍神などとチヤホヤ讃えられたが、戦争が終わると
人々の熱も冷めて忘れ去られ、実生活に苦労する暮らしだけが残る一方、
傷痍軍人の妻として世間に知られた以上、あまりハメを外すこともできず
貞淑に献身的に夫の世話をして暮らすべきとのプレッシャーがかかる。

かろうじて口に鉛筆を咥えた筆談で意思疎通は図れるものの
寝て食って排泄する以外にすることのない夫は、異様な食欲で丸々と肥え、
四肢のないずんぐりむっくりのその体はまるで芋虫のようだった。
人間として残っている機能は、視覚と触覚(性器を含む)ぐらいしか無い。
妻が用事で少しでも長く自分のそばを離れると、すぐ不倫を疑って歪んだ嫉妬心を燃やし責める。

そんな夫との閉鎖的な生活の中で、妻は次第に鬱憤の捌け口として性の貪欲さに目醒め、
人形のように無抵抗な夫を性玩具として姦淫することを悦しむようになる。
そして、夫を犯しながら、唯一目だけが自己の意思を有して見返していることに恐れと不満を抱き、
ある時ふと性行為の興奮の中で、世界との接点として残されていた夫の目まで衝動的に潰してしまう。
我に返って自分の行為を悔いた妻は、絶望に悶え苦しむ夫の身体へ必死で「ユルシテ」と指書きし、
人に助けを呼びに行く。しかし夫は口で柱に「ユルス」と走り書きした後、
不自由な体で二階から庭の井戸までまるで芋虫のような格好で這って行き、
妻が戻ってきた時には、ちょうど芋虫が木から落ちるように、ポチャンと井戸に水音を立てた。


237 名前:本当にあった怖い名無し :2009/03/14(土) 18:15:00
>>234
後味悪いというか切ない…

 

心理試験 (江戸川乱歩文庫)
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