私が愛した天使(一条ゆかり)

127 名前:本当にあった怖い名無し :2009/04/14(火) 02:24:38
一条ゆかりの『私が愛した天使』という漫画。

ハイスクールを卒業したばかりの18歳の主人公は、
慈善バザーで知り合った大財閥の男性(34歳)の後妻になる。
年は離れているが優しい夫と相思相愛で、
前妻の遺児である可愛らしい8歳の少女とも仲良くやっていけそうだった。

ただ、新居は大勢の使用人を抱えた目を見張るほどの豪邸で、
庶民出の主人公は、事あるごとに貴族出身だった前妻と比べられて
家をとりしきっている古株の老メイド(元は前妻側の家人)にネチネチと小言を言われる。
また、夫の親友の妹で、前々から後妻の座を狙っていた女も
主人公のことが気に食わず、表面上は友交を装いつつ嫌味な言動をとっていた。

8歳の娘は、かつて母親(前妻)が階段から転落死するのを目撃したショックからか
一時期 父親につきっきりで甘やかされて育ち、年のわりに精神的に幼く幼児的な振舞いをする。
家庭教師に勉強を教わるため学校には行っておらず、そのため同年代の友達もなく、
アンジュという死産した自分の双子の妹の名を付けたお人形を
片時も離さず抱いて、話し相手にするのを習慣としていた。
「ダメよ! あなたは本当に悪い子ね」などと叱ったり、本気で人形と会話している。


128 名前:本当にあった怖い名無し :2009/04/14(火) 02:25:27
ある日、主人公はまた老メイドや親友の妹に育ちの悪さをなじられ、
たまりかねて寝室で泣き伏していた。娘と一緒に寝る約束をしていた夫も
主人公の様子がおかしいのに気付き、娘をメイドに預けて主人公を励ます。

その頃から、落ちてきた植木鉢が頭を直撃しそうになったり
階段に何故か垂れていた油で滑り落ちて怪我をしたり、不審な出来事が続くようになる。
事が起きる時には常に老メイドや親友の妹がそばにおり、
邪魔な自分を消そうとしているのではないかと、主人公は疑心暗鬼になっていった。

そんな中、予定されていた兎狩りへ親友兄妹たちと皆で出掛けることになった。
足を怪我している主人公は、老メイドと2人で山小屋に残るよう夫に言われるが、
彼女と2人きりになるのを恐れた主人公は夫たちと森へ同行する。
しかし、兎を追いかける夫たちと途中ではぐれ、不安になっていたところ
突如 木陰からボウガンの矢が次々に放たれ、主人公は不自由な足で逃げ惑う。
やはり自分の命を狙っていたのは親友の妹だったのだと、命からがら山小屋へ逃げ帰る。
ところが、ちょうど小屋で余った道具を片付けていた老メイドが弓矢を手にこちらを振り向き、
撃っていたのは実は老メイドだったのかと動転した主人公は、慌てて部屋の鍵を閉ざす。
そうして裏口から外へ逃げ出ようとしていたところ、その裏口に立ちふさがるように
小型ボウガンを手にした外から少女が現れた。

少女は、何の罪悪感もないケロッとした表情で
「あなたが悪いのよ、私からパパを奪うから」と言って矢を向ける。
実は、かつて母親を階段から突き落として殺したのもこの幼い娘で、
派手で社交好きだった子供嫌いな母親を疎み、その妻との不仲のせいで
大好きな父親が家を空けがちになったことを不満に思っての犯行だった。


129 名前:本当にあった怖い名無し :2009/04/14(火) 02:26:53
少女が主人公に矢を放とうとしたところ、駆けつけた皆で窓を割って止めに入り、
少女は「だって…、アンジュが殺せって言ったのよ。私は…私は嫌だって止めたのに…」
と一転して泣き崩れる。不穏な家庭環境から二重人格になった少女は、
自分の中の「悪」の感情を分身であるアンジュの役割に転嫁させて歯止めなく捌き出し、
一方の自分は大人たちの前で天使のような素直で愛らしい女の子として振舞っていたのだ。
「目を覚ませ、アンジュなんていないんだ。お前が心の中に作り上げた幻想だ!」
と言って、父親は人形を暖炉の中に放り投げる。燃え失せる人形を見て、
少女は凄まじい叫び声を上げ、ショックで精神が赤ん坊まで退行してしまった。

8歳にして赤ん坊のように幼返ってしまった少女だが、全ての事件が終わり
自分が犯した恐ろしい罪も何もかも忘れてしまったのをせめてもの幸いと思って
今度こそ普通の少女として家族で愛し育てて行こうと、主人公と夫は心に誓う。

いろいろあったけど再出発の希望が見えてめでたしめでたし…かと思っていたところで、ラスト、
新しく家で飼うことになった仔猫を見せ「名前は何にしようか?」と優しく話しかける主人公から
仔猫を受け取って抱き、にこやかな笑みを浮かべながら、少女は心の中で「アンジュ、みーつけた。」

ちなみに、大人になってから読み返すと、ミステリーとしては実は
最初からアンジュ(天使)という名前とタイトルがヒントになっていたんだが、
子供のころ読むと、老メイドの形相がやたら怖かった…。


130 名前:本当にあった怖い名無し :2009/04/14(火) 02:37:02
>>127
なつかしいな~。
一条ゆかりの絵がまた怖かったんだよね。
また読みたくなった。

131 名前:本当にあった怖い名無し :2009/04/14(火) 09:04:42
>>127ー129
乙!なつかしい
実母の「子供なんて汚いしうるさいしウエストが○cmも増えたのよ」って台詞が今でも忘れられないw

 

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