ホーム » 小説 » 小説/さ行 » すっぽん(パトリシア・ハイスミス)

284 名前:本当にあった怖い名無し :2009/07/09(木) 14:08:40
パトリシア・ハイスミス「すっぽん」

絵本の挿絵画家の母親と2人暮らしをしてる11歳の少年ヴィクター。
母親はいつまでもヴィクターを子ども扱い、赤ちゃん扱いし、
自分のロマンである「ヨーロッパ貴族の少年」風の格好をさせている。
いつも半ズボンにハイソックス姿のヴィクターは周りの子どもに馬鹿にされ、
友だちも出来ずに孤独な日々を送っている。
母親に窮状を訴えても、彼女は彼の悩みにまともに向き合ってはくれない。
彼女にとってヴィクターは可愛いベイビー、着せ替え人形に過ぎない。

そんなある日、母親が生きたスッポンを買ってくる。スープにするのだと言って。
そのスッポンを観察し、世話をし、一緒に遊んでるうちにヴィクターは
スッポンに情が移ってしまう。
友だちのいない彼にとって、スッポンと遊ぶのは本当に楽しかった。

母親はヴィクターをお使いに出す。
帰って来たヴィクターは、大鍋に湯を沸かしている母親を目撃する。
スッポンを助けようと必死で口実を探すヴィクターの目の前で、
母親はスッポンを生きたまま熱湯に放り込む。
ヴィクターは、グラグラ煮えたぎる湯の中に放り込まれたスッポンが
鍋の内側に脚を叩きつけて暴れ、彼を見つめて口を開け・・・
そして熱湯に沈んでゆくのをなすすべなく見守る。


285 名前:本当にあった怖い名無し :2009/07/09(木) 14:09:29
ヴィクターは泣く。
母親は彼に手を差し伸べるが、彼は「さわらないで!」と叫んでその手を払いのける。
母親は彼をひっぱたく。
ヴィクターは食卓に着かずに部屋に閉じこもる。

深夜になってもヴィクターは眠れない。
目をつぶるとスッポンの断末魔の顔が大きく浮かんで来る。
スッポンは悲鳴を上げていたんだ。
僕に助けを求めていたんだ。
それなのに僕は手を差し伸べもしなかった。
ママは僕を騙した。
ここから出てゆきたい。
でもママはそれを許さないだろう。
スッポンは逃げられなかった。
僕も逃げられないんだ。

追い詰められたヴィクターは台所に行って包丁を取り出す。
茹だったスッポンを解体した包丁を。

・・・
自分を愛玩物扱いする母親の元で鬱屈してゆく子どもの心と、
子どもの内面に全く気づかない母親とのギャップが気持ち悪い。
こう言う事って、結構普通にある気がする。


286 名前:本当にあった怖い名無し :2009/07/09(木) 14:32:32
>>284-285
こういうKYな親っているよね、子供は不幸だ。

以前見たTVドラマ「マリコ」を思い出した。
日本の外交官とアメリカ人女性の間に生まれたマリコは日米開戦で日本に来て
家族で疎開するが、混血ということで友達もできず、食糧難で親子3人栄養失調で飢えていた。

そんな時、病気の父親に替わって母親が物々交換で生きた鶏を持ち帰る。
久しぶりのご馳走だと喜ぶ両親に、マリコは殺さないでと頼んで、ペットとして飼うことに。
友達のいないマリコにとって鶏は無二の親友だった…。

…で、この鶏は天寿を全うします。
飢えても栄養失調でも病気でも、親は娘の気持ちを考えてこの鶏を食べなかった。
その一方で、他にいくらでも食べ物はあるのに、息子の友達であるすっぽんを料理する親もいるんだね…。


288 名前:本当にあった怖い名無し :2009/07/09(木) 15:22:05
>>286
なるほど。似てるね。人が違うとこうも違うものか。
お互いへの理解があるかどうかかなあ。

一応付け加えると、基本的にヴィクター視点で書かれてるため、
ヴィクターとスッポンのことを母親がどこまで気づいてたかは不明。
わざわざ息子をお使いに行かせた隙に湯を沸かしたのかもね、と考えると
ある程度は気づいてたのかも知れない、って程度。だったと思う。

母親にとってはスッポンはあくまでも食材。
生きたまま茹でるのは彼女にとっては普通の台所仕事。
彼女には、何で息子が料理するのを嫌がるのかがよくわからない。
そして、難しい年頃の息子を彼女の方でも日頃から持て余してる。

とすると更に後味が悪くなれる。


290 名前:本当にあった怖い名無し :2009/07/09(木) 17:01:10
ちょっと違う。ヴィクターとスッポンはそんなに長く接していない。

母親は最初からスッポンはスープ用よ、と断言していた。
だからヴィクターも「ああ、数日の命か。もう長生きはできないんだな」と認識していた。
で、おつかいに行かされたヴィクターは一人の少年と知り合う。
少年の気を引きたくて、「僕の家にスッポンがいるんだ。明日見せてあげるよ」と約束してしまう。
初めて友達が出来そうな予感にウキウキするヴィクターだったが、
帰ると母親がスッポンを茹でるところだった。
せめて明日の夜まで待って、という制止も空しくスッポンは茹でられ、
見殺しにしてしまったと悔やむヴィクターの中で何かが壊れた。

作中ではヴィクターが自分とスッポンを同一視するかの様な件があり、
つまりスッポンと自分は『母親から逃れられない』という運命共同体、いわば戦友といった感情が描かれている。
だから自分に珍奇な格好をさせて支配し(そのせいで友人ができない)、
友人が出来るかも知れなかった機会をブチ壊し(スッポン殺し)、戦友を殺した、
という思いが一気に噴出した結果、母親を惨殺した。


291 名前:本当にあった怖い名無し :2009/07/09(木) 17:16:43
>>290
「母親を殺した」って明確に書いてあるの?
最初の書き込みだと書いてないっぽかったから、
母殺しと見せかけて実はヴィクターが自殺かも、とかって深読みさせるエンドなのかと思った

305 名前:本当にあった怖い名無し :2009/07/09(木) 19:21:06
>>290
あーそうかそうか。その子の存在を忘れてた。サンクス。
そうだったそうだった。何せかなり前に読んだきりだから。

>>291
そんなわけで記憶が定かでなくてすまないが
はっきりと「母親ターゲット」とは書いてなかったように思う。
流れとしては明らかに母親に殺意が向くような感じではあったけど
そう言う深読みも可能な含みはあった気がする。

 

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