ホーム » スレ別 » 後味の悪い話 その105 » 悪魔の花嫁/火垂るにえ(あしべゆうほ)

446 名前:蛍のちゃと1 :2009/07/12(日) 07:14:23
「悪魔の花嫁」
デイモスと妹はもともと天使であり、実の兄妹でありながら愛し合っていたのだが、
乳繰り合っているところを父親のゼウスに見つかってしまい、
醜い悪魔の姿に変えられてしまう(といってもイケメン)
妹は地獄に逆さ吊りにされ、生きながらその身体は腐らされてしまう。
妹を甦らせるためには美しい女性の身体に魂を入れ替えればよいという秘術を知り、
さっそく美奈子に目を付けるのだが、その純真な心に触れ、機会を見逃してしまう。
どうにかして美奈子を悪の道に誘い込もうとするのだが、うまくゆかない。
そうこうするうちに、次第に彼女に惹かれていくのだが、
妹からは「早く身体を、何してんだバカ兄!」と催促され、板ばさみになるデイモスであった。

ある日のこと、美奈子がアルバイトをしているレストランのまん前で、バイクに乗ったイケメンが事故る。
幸いなことに命に別状はないのだが、記憶を完全に失ってしまう。
あまりにふびんなので、引き取り手が現れるまで、住み込みで働いてもらうことになる。
その働き振りには非の打ち所がなく、四五人いる他の店員とも打ち解けてしまう。

あるとき、たまたま店休日にも店を開くことになる。
店長が誰か店に出てくれと頼むのだが、せっかくの休みに当然誰も出たがらない。
店員のひとりが「それじゃあ、あみだくじで決めようぜ」と提案したとたんに、イケメンの顔色が変わる。
「あみだくじなんて、やめろおおおおお!」と叫び声をあげてしまう。
その場の一同が凍りつくが、イケメン自身にもその理由がわからない。
「ごめんなさい、おわびに僕が休出します」と言って、その場は収まる。


447 名前:蛍のちゃと2 :2009/07/12(日) 07:15:09
食器の片づけをしながら、そのことを思い返した美奈子は
「かわいそうに、早く記憶が戻ればいいのに」とつぶやく。
その言葉に反応するように、デイモスが登場する。

「世の中には、思い出さないほうが幸せなことだってあるんだぜ」

「また出たな、そんなことないわ、どんなにつらいことでも向き合う勇気が必要なのよ、
 逃げちゃダメ、逃げちゃダメ、逃げちゃダメなの!」

ふふふ、と含み笑いを浮かべながら、デイモスは姿を消した。

さて休出の日にイケメンがひとりで店番をしていると、バイク屋さんが店に来る。
「ちわー、バイクの修理が済んだので、お届けに参りました」
イケメン「え、バイク?」
「ちゃんと走れるかどうか、確かめてください」
恐る恐るバイクにまたがるイケメン、だが次第に感覚を取り戻して街中へと走り出していく。
その走り去る後ろ姿を見送るバイク屋の整備員は、デイモスが化けたものであった。

しばらく街中を走り回るうちに、イケメンは見覚えのある道へと出てしまう。
失われた記憶を探るうちに、バイクは誘われるかのように山道へと入っていく。
どことも知れない山道を走りながら、辿り着いた先は「蛍の里」という立て札のある村であった。


448 名前:蛍のちゃと3 :2009/07/12(日) 07:16:02
イケメンはバイクに乗ったまま、「蛍の里」という看板の付いた門をくぐり、
沼のほとりにある小さな山小屋に辿り着く。
その山小屋に入ると、徐々に記憶が甦ってくる。

そのたいした産物もない村の唯一の観光資源が、観賞用の蛍であった。
しかし蛍の幼虫は肉食性である。
その蛍を絶やさないために、そして村の繁栄を神に祈るために、
村では昔から若い女を殺して沼に沈めてきたのだ。
そして誰がイケニエを用意するかを決めるために、村の若い男たちが山小屋に集まって、
全員で「あみだくじ」を引いたのである。

その年の当番を引いたのは、イケメンであった。
おびえるイケメンに対して、他の村人が「俺も最初は怖かったけど、やってみると意外と簡単だぜ」と励ました。
そして村に代々伝わる絞殺用の鎖を、イケメンに手渡したのであった。
その鎖の両端には、村の守り神である蛍の飾りが付いていた。


449 名前:蛍のちゃと4 :2009/07/12(日) 07:18:58
しかしどうしても決心がつかないイケメンは、こっそりと村から逃げ出そうと計画する。
逃走用の買ったばかりのバイクを整備していると、イケメンの愛人が来る。
それは村役場の出納係をしている、年上の地味で目立たない女であった。
イケメンがバイクを買えたのも、その愛人が役場の金庫からお金を誤魔化したお陰だった。

「ここから逃げるつもり?だったら私も連れて行って」
返事もしようとせず整備を続けるイケメン。
「お金をあげたらって、約束だったよね?・・・け っ こ ん」

イケメンはくるっと振り向きざまに、女の首にジャッと鎖を巻きつけ、ぎゅっと締め上げた。
ことは意外と簡単に済んだ。
動かなくなった女の身体を沼に放り込むと、「もう堪えられない!」と言うなり、
バイクにまたがって一気に山道を走り降りた。
そしてどこを走っているとも知れずに、街中の美奈子のレストランの前で事故を起こしたのであった。


450 名前:蛍のちゃと5 :2009/07/12(日) 07:19:52
山小屋の中でイケメンは叫んだ、「おお思い出した、すべてを!」

そのときイケメンの前にぬっと女の白骨姿が立ち上がった。
それは蛍の幼虫に身体中の肉を喰われた愛人の成れの果てであった。

「あなた、やっと帰ってきたのね・・・」

「ああ、もうどこにも行かないよ・・・」

次の日、沼の中で白骨死体の隣で溺れ死んでいるイケメンの姿が発見された。

そのころレストランでは皆が突然に姿を消したイケメンのことを心配していた。
ふと朝刊を開いた美奈子は、そこにイケメンの溺死の事件が載っているのを見て驚く。
「本人かどうか、現場に行って確かめたい」
そう思った美奈子は蛍の里へと向かうのであった。


451 名前:蛍のちゃと6 :2009/07/12(日) 07:21:07
蛍の里の門をくぐった美奈子を、村の若い男が出迎えた。
すると美奈子のところへ、ふわふわと沢山の蛍がまとわりつく。
男はにやにや笑いを浮かべながら、美奈子につぶやいた。

「若い娘さんが来ると、蛍たちが喜ぶ、へへへ」

歩き出した拍子に、男の腰のベルトに引っ掛けてある蛍の鎖が、じゃらと音を立てた。
その鎖を見たとたんに不吉な予感にとらわれた美奈子は、挨拶もそこそこに村を飛び出した。
その背中を追いかけるように、デイモンの高笑いが響き渡るのであった。

おしまい

 

悪魔の花嫁 13 (プリンセスコミックス)
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(プリンセスコミックス)


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