オノレ・シュブラックの失踪(ギョーム・アポリネール)

888 名前:本当にあった怖い名無し :2009/09/08(火) 11:02:08
見えなくなる系だと『オノレ・シュブラックの失踪』もあるね。
最近なんかショートアニメみたいになってたのを見た記憶があるが。

主人公(というか、語り部 普通の人)が夜の街を歩いていると、
マントを羽織った若者が駆けてくる。
彼は焦って後ろを気にしながら、マントを脱ぎ捨て、全裸になって壁に寄る。
するとどうだろう、彼の姿は消え失せ、そこにはただレンガ壁があるだけだった。
その直後もう一人、銃を構えた中年男が血相を変えて走ってくる。
新たに現れた中年男は辺りを見回し、歯軋りしながら再び駆け去った。

しばらくして、壁から裸の若者が姿を現した。
彼は主人公に気づくと、ばつの悪そうな表情で自らをオノレ・シュブラックと名乗り、顛末を語った。
強く念じれば周囲の情景に溶け込める事、いつでも溶け込める様に、
全裸の上にマントだけ羽織っている事、中年男の妻を寝取ってしまった事。
楽観的な若者の様子に少々苛立つ主人公。
そこに再び中年男が戻ってくる。

若者は慌てて壁に溶け込み、やはり中年男は地団太を踏む事となった。
だが、キレた中年男は「出てきやがれ! どこに隠れやがった!!」と手にした猟銃を乱射する。
それで落ち着いたのか、中年男は立ち去った。
乱射された弾は若者が消えた辺りに着弾していた。

恐る恐る壁に近寄る主人公。
壁には穴が開き、そこから血が流れ出していた。
壁に手をつくと微かな温もりがあったが、それも急速に冷えていき、
やがて壁そのものの温度になったのだった。

他にも壁抜け男って話もあったよね。
そっちも結局脱出不能エンドってのが後味悪い。

 

ちくま文学の森3巻 変身ものがたり
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フランス短篇傑作選 (岩波文庫)
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