血を運ぶ天使

ある町に、貧乏な少年がいた。おまけにしゃべりがカタコトで、回りにバカにされている。
それに少年には変な習慣があった。時々、注射器を片手に、「血をくれ」と歩き回るのだ。
友達からは「吸血鬼」と気味ワルがられ、石を投げられたりする。
それでも少年は ...
本当にいい人間か

目の見えないおじいさんが子犬を拾いました
おじいさんは子犬をかわいがり、子犬はおじいさんに良く懐きました
子犬は賢く、おじいさんの目になって彼を助けます
(明記されてはなかったが、どうやらおじいさんはその、乞食かそれに近い者らしい)
一緒に空き缶を集めたり、道で ...
防空壕(江戸川乱歩)

空襲警報が鳴った。男は慌てて手近な防空壕に飛び込んだ。
そこには先客がいた。暗くてよく見えないが女性らしい。
言葉少なに語り合いながら、二人は息を潜めていた。
轟音と共に火の手が見えた。街が燃えているらしい。
火に映 ...
白昼夢(江戸川乱歩)

暑い昼下がり、男が店先から飛び出して叫ぶ。
「私は人殺しだ!妻を殺したんだ!」
人々はまたかと言う顔で相手にしない。いつもの事だ。
騒ぎを聞いてやってきた警官に男は訴える。「捕まえてくれ!私は人殺しだ!」
警官は男を宥めるが、 ...
二廃人(江戸川乱歩)

温泉で老人Aは顔に怪我をした老人Bと出会う。
Bは戦争で負った怪我が治らず、湯治に来たらしい。
どんな仕事をしているのか尋ねるBに、Aは肩をすくめる。
Aは今まで働いたことがないと言う。
それどころか結婚もしなかったし友人もいなかった ...
データの削除

ある男が逮捕された。罪状は殺人。それも大量殺人だ。
だが男は必死に訴え、否定する。男のした事はこうだ。
男は、コンピューターのプログラマーで監視者だった。
だがある時、ほんのケアレスミスで、データの消去ボタンをクリックしてしまったのだ… ...
DOLL(三原ミツカズ)

短編連作形式で、家事から情事の相手までこなすロボット・DOLLと、それに関わる人々の話。
その中の一話
ある家族の話。
少年は毎日半ば折檻されるように母に勉強をさせられる。
母親はどんどんヒステリックに暴力的になっていくが、
自分が賢くなる事で家 ...
嗤う伊右衛門(京極夏彦)

四谷にある民谷家は代々続いた旧家だが、父と娘の二人暮らし。存亡の危機を迎えていた。
一人娘の岩は大変な美貌で知られていたが、重度の疱瘡を患い顔半分にひどい傷を負ってしまう。
目は潰れて皮膚は膿ただれ、髪も縮れてしまった岩の姿は二目と見られないものだった。 ...
ナルニア国物語(C.S.ルイス)

ナルニア国の誕生から滅亡までを描く全7作のシリーズ。
第二次世界大戦の最中のイギリスのお話。
主人公は巻ごとに入れ替わったりする。
皆、こちらの世界からなんらかの方法でナルニアに呼ばれて、危機を救う。
ナルニアの国では人間の子供はアダ ...
にがい再会(藤沢周平)

主人公は家業を継いで羽振りのいい生活をしている。
妻はいるが女遊びも盛んで、不自由ない暮らしぶりだ。
ある日、幼馴染みの少女が戻ってきたと言う話を聞く。
主人公は、子供の頃に彼女と結婚したいと思っていた。
だがそれは適わなかった。
主人公は名の通った商 ...