鬼来迎(山岸凉子)

589 名前:山岸凉子「「鬼来迎」」1/2 :2009/10/22(木) 16:27:27
攻撃的な都会から逃げるように帰った来た敏子は
再婚した母とは暮らしたくないこともあり
寂れた漁村で茶華道の先生をしている美しい未亡人の家に住み込みで働く事になった。

家主である美しい未亡人は優しくて仕事の合間にお茶やお花を教えてくれる。
家政婦のおばさんも働き者で優しく、家事全般を切り盛りしているので
敏子の仕事も簡単で申し訳ないくらいだった。

そんなある日、敏子は何か叫び声のような物を聞く。
最初は気のせいかと思ったが、疲れて早めに寝た敏子に深夜突然何かが覆いかぶさった。
驚いて灯りをつけた敏子の目に飛び込んできたのは
片手首のない、げっそりとやつれ、目が血走って「鬼・・・」とうめく男の子の姿だった。

その男の子は美しい未亡人の修一という7歳の息子だった。
生まれつき身体に障害を抱えていて時々聞いていた奇声は修一のものだったのだ。
なるほど、あまりにいい条件の裏にはこういうことがあったのだ。
この家が嫌ならやめてもいいのよと優しく言う奥さんにも心打たれ「続けます」と言ってしまう敏子。

その屋敷には庭に大きな石があり、触れようとした敏子に
まかないのおばさんがいつになく強い口調でとめる。
その石を動かすと鬼が来るという言い伝えがあるらしい。

修一にご飯を運んだり買出しに行くうち、敏子は未亡人の旦那さんは海で亡くなった事、
息子を助けようとして溺れたことなどを知る。

ある夜、慌しい気配に敏子が起きると修一が例の石にしがみつき奇声を上げていた。
「怖いよう 鬼が来るよう」
息子に駆け寄り抱きしめる美しい未亡人。
狂ったようにキーキーと叫びながら手首の無い片手を振り回す修一。


590 名前:山岸凉子「「鬼来迎」」2/2 :2009/10/22(木) 16:30:01
次の日。浜辺に大量の魚が押し寄せて漁村は大騒ぎ。
予期せぬ大漁に敏子は魚を分けてもらいに行き、炊き出しを手伝うことに。
「なんだか変な天気だねえ。花曇だね。太陽があんなにぼんやりしてるよ」
敏子が屋敷で働いていることを知ったボーイッシュな若い女が話しかけてきた。
「修一君って子、知ってる?」
片方の手首が無い修一。敏子はぎょっとする。
「昔よく遊んであげたんだよ、頭のいい子だったね。大きくなったでしょ?」
曖昧に言葉をにごす敏子。
「小さいのにお父さんの真似して一人前に舟漕いじゃって可愛いの」
「あの・・、片手で?」
「?両手に決まってるでしょ」
なんと言っていいか分からず敏子はその場を後にした。

屋敷に帰ると家人の姿が無い。
庭に出ると突然あの石が動き始めた。驚く敏子だったが、それは地震のせいだった。
突如響く修一の奇声。かけつけた敏子が見たものはうずくまって震えている修一とその傍らに立つ鬼。
悲鳴をあげて駆け出す敏子はそこに来たまかないのおばさんとぶつかる。
「鬼が!鬼が修一君を!」
困ったような顔をして所在無さげなまかないのおばさん。
敏子が飛び出してきた離れから出てきたのは
手には折檻用の棒、片手に般若の面を持つあの美しい未亡人だった。
「修一さえいなければ…修一さえいなければ…あの人が死ぬことは無かったんだ!」
「あの人を奪った修一など死んでしまえばよかったんだ!」
その時、地鳴りと共に石が動き、振り返って見上げる敏子の目の前に大きな津波と共に鬼の姿が…
敏子は一命を取り留めた。
あの大津波は漁村だけでなく大勢の命を奪ったが、敏子は奇跡的に助かった生存者だった。

敏子は都会に戻って働いた。怒鳴る主任に若い女の子が愚痴をこぼす。
だが敏子は変に優しい人より怒鳴る人の方が好きよという。
あの屋敷であったことは本当なのか、未亡人は自分の息子を?まかないのおばさんは見て見ぬふりを?
それとも全てはあの津波が見せた幻だったのだろうか…。
  完


592 名前:本当にあった怖い名無し :2009/10/22(木) 18:42:32
投下乙
修一君の片手はオカンが切断したんだろか?
折檻てレベルじゃねーぞ…

593 名前:本当にあった怖い名無し :2009/10/22(木) 18:54:52
つーか、そーゆープレイだったんじゃね?

 

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