サバイバー(チャック・パラニューク)

597 名前:本当にあった怖い名無し :2010/09/28(火) 03:07:01
チャック・パラニュークの小説に似たようなのがあったな>おじろく・おばさ

アーミッシュの様に、厳格な教義に乗っ取ってコミュニティを作って生活する教団があった。
衣食住の全てが教義に縛られ、近代技術を排除した清らかな自給自足生活を送っている。
(と言うのは建前で、実際は幹部が外部から物を購入していたし、
しかも幹部は皆、人種差別・性差別思想者だった)

家族制度にも厳しい掟がある。
各家庭の長男は必ず"アダム"と名付けられ、
次男以下は"テンダー(仕えるの意)"、女子は全て"ビディ(従うの意)"と名付けられる。
“アダム"は年頃になると、教会に定められた"ビディ"と結婚させられる。
家を相続して子供を何人も作り、コミュニティの繁栄に貢献する為に。

一方で"テンダー"と、結婚相手を割り当てられなかった"ビディ"は、
コミュニティから外界に送り出されて、一生出稼ぎをさせられる。(清掃業者、家政婦など)
離反して自由に暮らすことは絶対に許されないし、恋人を作ることも許されない。
コミュニティの為に、ひたすら出稼ぎ奴隷生活を送ることを余儀なくされている。
最も、コミュニティでは子供たちが幼い頃から教義を叩きこんでいるので、
離反しようと思う者が現れることはない。
自分が奴隷だとは微塵も思わず、「神聖な仕事に従事している」と信じ込まされている。


598 名前:本当にあった怖い名無し :2010/09/28(火) 03:08:18
特に『性』に関しては、嫌悪感を植え付けるように徹底していた。
幼い"テンダー"や"ビディ"に、出産で苦しむ妊婦の一部始終を見せつけるのがその方法の一つ。
予め妊婦に大袈裟に苦しむように指示をしておき、
金切り声をあげて泣きわめく妊婦を前に「性交の代償は死だ、地獄だ」と説いて、トラウマにさせる。
要するに、精神的な避妊・去勢手術を施して、おとなしい奴隷にさせた。

そんな中、ある妊婦が出産途中に亡くなってしまう。
教会の指示通りに絶叫しながら、ロクに処置も受けられずに。
それに絶望した妊婦の夫が、教会が隠していた所業を、外界へ密告した。
子供を虐待・洗脳し、収入源として奴隷扱いしていたことを。(他にも、脱税とか色々あった)
一方、外部からの捜査が入ると言う知らせを受けた教団幹部は、住人たちへ"脱出"の指令を出した。

コミュニティへ到着した捜査員が見たものは、住人全員が手を繋いで服毒自殺した成れの果てだった。
また、外界で働く"テンダー"や"ビディ"も、ニュース等で教団の末路を知ると、"脱出"を実行した。
外界の保護を受けた者も居たが、それでも"脱出"する者は後を絶たなかった。


602 名前:本当にあった怖い名無し :2010/09/28(火) 11:01:39
>>597-598
出産の苦しみの強調なら、女への牽制にはなっても
男側はべつに直接は関係ないんじゃないか…と思ったけど、
「罰としての産みの苦しみ」みたいな原罪観念は
キリスト教圏の読者だとわりとすんなり感覚的に解りやすいんだろうか。

作者はアメリカ人のようだし、カルト宗教の集団自殺って
「人民寺院事件」あたりをモデルにしてるのかな?
外部からの捜査員が入る→手詰まりになって集団自殺(外部へ救出されていた少数の信者も抹殺を図る)
の流れも、似た感じに見える。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%BA%E6%B0%91%E5%AF%BA%E9%99%A2
http://www.nazoo.org/cult/jimjones.htm
http://www.nazoo.org/cult/jimjones2.htm

でも、フィクションの物語だと、そういうカルト教団の信者達は
一枚岩で粛々と自らの意志で進んで自決していって異様さを際立たせる展開が多いが、
現実の事件では、やっぱり頭数が多いと熱狂的な盲信者となんとなく環境や惰性で入信してきた人と温度差があるようで、
死にたくないと言って泣き叫ぶ人を皆で無理やり押さえ付けて毒薬を飲ませたり
必死に逃走する人々を追いかけて射殺したり、訳も分からない幼児に騙して4
フルーツ風味の香料を付けた毒を飲ませたり
“上”(幹部)の意思による“下々”の民衆の道連れ大量虐殺
の要素も多分にあるのが後味悪い。
得てしてこういう新興宗教の信者って、他では居場所がなくて
その弱者救済を謳っている教団に流れ着いた経緯の社会的マイノリティーも多いだけに。

加えて、「その実、建前とは裏腹に幹部達は人種差別主義者」あたりの要素も>>597と共通してるか。
(人民寺院の一般信徒は大多数が黒人だったが、側近や幹部連中の取り巻きは全員白人で固められていた。)


604 名前:本当にあった怖い名無し :2010/09/28(火) 12:01:57
テンダーとビディが外界で出稼ぎってのが一番リアリティを欠いてる。
いくら奴隷教育しても外に出したらなかなか戻ってくるもんじゃないよ。
外で裕福な人に可愛がられて身奇麗にして仕えてたら、
田舎のボロボロのアダムに威厳なんか感じなくなるよ。

605 名前:本当にあった怖い名無し :2010/09/28(火) 12:33:14
>>602
自分が直接味わう苦しみじゃなくても、
目の前で女がぎゃーぎゃー喚き苦しみながら、股間から
血やら、粘膜やら、血まみれのなんだか分かんない生き物を
ひり出してたらトラウマかも。

げんに出産に立ち会ったせいでEDになっちゃう旦那が
結構いるし。


606 名前:本当にあった怖い名無し :2010/09/28(火) 12:37:52
>>605
ああ、なるほど。>立会い出産でED

607 名前:本当にあった怖い名無し :2010/09/28(火) 14:06:38
>>602
出産現場見せるのは自分もそこまでピンと来なかったけど、実際に見たこと無いから何とも言えんなぁ、とも。
>>605の言う通り、血垂れ流して絶叫してる人をいきなり見せられたら怖いだろうね。

人民寺院の事件については、作中でも触れてた。
他にも、ロシアの修道士集団自殺とか、ブランチ・ダビディアン事件とか太陽寺院集団自殺とか。
「すべての事象には前例がある」ってくだりで。

>>604
コミュニティでは子供に、"外界の事象は全て罪悪だ"と教え込むようにしてたって設定。
外界の人間は汚辱にまみれていて、あらゆる文明の利器は魔物が作りだしたもので、五感に伝わるものは全て罪悪だ。
コミュニティの素朴で簡素な生活は美しいものだ、コミュニティは天国だ。
外界の地獄を少しでも浄化させる為に、"テンダー""ビディ"は外界で労働奉仕をする殉教者である。
加えて、外界での生活にも戒律が厳しく定められてた。服装・人との会話・食事、その他諸々。

まぁ、リアリティあるのか?なんて分からんけど。小説読んでる分には面白かったよ。


609 名前:本当にあった怖い名無し :2010/09/28(火) 14:37:22
>>602
>得てしてこういう新興宗教の信者って、他では居場所がなくて
>その弱者救済を謳っている教団に流れ着いた経緯の社会的マイノリティーも多いだけに。
ああ、これはわかるわ。
カルトにはまった人を何人か知ってるけど、そのいずれも根は悪くないけど
プライドがやたら高くて「選ばれた人間」って言うのが大好きな人だった。
中には宗教入ってることを後悔っつーかうさんくさいのを理解してる人もいた。
それでも教団でチヤホヤされる感覚が捨てられなくて悩んでいた。

そうじゃない人は、純粋すぎる人。
お人好しで優しくて穏やかで…でもそれ信仰心がある故なんだよなあ。
たいていみんな目がきらきらしている。

 

サバイバー (ハヤカワ文庫NV)
サバイバー (ハヤカワ文庫NV)