家族の標本(柳美里)
-
385 名前:本当にあった怖い名無し :2011/10/24(月) 23:29:24.69
- 柳美里「家族の標本」
柳が自分含め知り合った人達の家族の話を聞き、それぞれの家庭の歪みや考察を
書き連ねた短編エッセイ?的な作品。その中の一つ。
(柳が嫌いな人・在日ってだけでダメな人はスルー推奨)「うちは昔から家族で旅行行きまくりだし両親もいまだにラブラブで欠点なんかないよw」と柳に豪語する友人A。
「父の実家の九州も毎年行くしね~」と自慢するAに柳は
「お母さんの実家(青森)には行かないの?」と何気なく突っ込む。
すると途端にAの顔は曇り、今まで一度も母方の実家には行ったことはないし
その話をすると空気が悪くなるから避けてきたという。
その原因は何だと思う?と問う柳にAはまず両親が互いの実家の反対を押し切って
駈け落ち同然に結婚した事や母が中卒だからではと答える。
「そういえば…」とAが時々母が遠い目をして「青森に帰りたい」
「絶対お父さんの方のお墓には入りたくない」と泣いていたと話す。
柳は「結婚当時の気兼ねが解消されないまま残っているんだね」みたいな事を思うが黙っていた。臭いものに蓋で問題から目を逸らして続けていた一家が悪いんだけど
それを突然思い知ったAとずっと一人抱え込んでいて表面上ラブラブでも
ずっと孤独だったであろう母親を思うと悲しくなってくる。
-
391 名前:本当にあった怖い名無し :2011/10/25(火) 00:43:51.30
- もう一つ同じ本から。
柳は妹がいかにもこの本のネタになりそうな子と友達になったと聞き、会いにいく。
その友達Bはまだ少女なのに髪の毛やまつげ、まゆげが一本もない。
曰くストレスで抜け落ちて自分でも抜いてしまうのだという。
妹と一緒にBの自宅にインタビューに行くとBの父親も同席した。
B父は有名な精神科医で優しく気さくな人柄だったけど、
Bに対する質問なのに出しゃばって代わりに答えてばかりだったそうだ。
つまりBのストレスの源は「自分は親だし精神科医だからBの気持ちは全部分かってるよ☆」な
ある種のお花畑な父親自身だった。
過度の干渉や理想の押しつけがBを追い詰めているのだった。
帰り道妹は姉の柳に「ね、うちだってマシって思えるでしょ?」と笑いかけた。