サンタクロースがやってくる(楳図かずお)
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641:楳図かずお「サンタクロースがやってくる」1/3:2013/02/07(木) 22:01:12.33
- 生まれてすぐに両親をなくし、祖父に育てられた男の子がいた(名前をAとする)。
祖父はAに惜しみない愛情を注ぎ、Aも唯一の肉親である祖父を慕った。
手先が器用な祖父はハト笛をこしらえて売ることで生計を立てており、
余分な稼ぎでAにおもちゃや菓子を買い与えることを喜びとしていた。しかしある時から祖父は病気で寝たきりになってしまった。
Aの叔母が面倒を見にやってきたが、叔母はきつい人で、Aを祖父から引き離そうとするのだった。
同じ家に住みながら祖父に会えないAは毎日泣き暮らし、祖父もAを案じて悲しんだ。
祖父は叔母の目を盗んで仕事を続けていたが、そのために容態は悪化した。死期を悟った祖父は病床で大きな革袋をこしらえ、その中にたくさんのおもちゃを詰めた。
そしてクリスマスの夜、革袋をしっかりと抱きしめながら息を引き取った。
死の直前、たまたまAと二人きりになった時、祖父はAに一つのハト笛を渡し、
「これはじいちゃんが一番熱心に作ったハト笛じゃ。絶対に誰にも見つかってはダメじゃぞ。
どうしても辛くて我慢できない時はそのハト笛を吹くのじゃ」と言い残した。
祖父は遺言通り革袋とともに埋葬され、Aは叔母に引き取られた。
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642:楳図かずお「サンタクロースがやってくる」2/3:2013/02/07(木) 22:04:39.80
- 叔母はAに辛く当たったが、Aは成長するにつれ、叔母も心根は優しい人で
祖父に甘やかされてわがままに育った自分の方が間違っていたことに気づき、
叔母と仲良く暮らすようになって活発な少年へと変わっていった。
祖父のこともいつしか記憶から薄れ、ハト笛はどこになくしたのか思い出すこともなかった。Aは大人になり、Bという息子をもうけた。Bは幼い頃のAに瓜二つだった。
ある年のクリスマスの夜、一人ベッドに入ったBは、押し入れの中に偶然見つけたハト笛を吹いてみた。
すると白いヒゲを生やし、大きな袋を担いだ老人が現れて言った。
「かわいそうなA坊、いじめられたのだね」
そして袋からおもちゃを一つ取り出し、Bに与えた。
幼いBは老人のことをサンタクロースだと思い、大喜びした。
Aは別室でBへのプレゼントを用意していたが、話し声がするのを不審に思い、Bの部屋に向かった。足音を聞きつけた老人は
「今日のことは誰にも言ってはダメじゃぞ!ハト笛を隠せ!
またじいちゃんに会いたくなったらハト笛を吹くのじゃ」
と言って姿を消した。
Aが部屋に入った時にはBしかおらず、与えた覚えのないおもちゃが転がっていた。
おもちゃの出所を問いつめたが、Bは老人に言われたとおり頑として答えなかった。
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643 :楳図かずお「サンタクロースがやってくる」3/3:2013/02/07(木) 22:09:02.39
- それから、Bは一人になるとハト笛を吹き、老人を呼び出してはおもちゃをもらっていた。
AはBのことが気がかりだった。夜になるとハト笛の音が聞こえ、見知らぬおもちゃが増えていくのだ。
Bは決して喋ろうとせず、Aは祖父のハト笛のことを思いつつも「そんなバカな」と打ち消していた。ある夜、Bが老人を呼び出すと、老人は「とうとうおもちゃはこれが最後になった」と告げた。
そこへいきなりAが入ってきた。老人は姿を消し、Bはハト笛を背後に隠したが
Aはその仕草を見とがめ、「隠したものを見せなさい!」と迫った。
Bは逃げ出してハト笛を吹いたが、すぐにAに捕まり、泣きながら老人とのことを白状した。
寝入ったBの枕元に、Aは付き添った。Bが最後にハト笛を吹いたことが気になったのだ。果たして、夜更けにAの名を呼ぶ声が聞こえ、袋を担いだ老人が現れた。紛れもないAの祖父だった。
祖父は「A坊、かわいそうに」と言ってBに近づく。AはBを抱いてかばいながら
「Aは私だ!この子はBだ!」と叫ぶが、祖父は聞く耳を持たない。
「A坊、おいで」とBの首に手をかけ、力まかせに引きちぎった。
「さあ、袋にお入り。これでもう離さない。ずっとじいちゃんと一緒だよ」
祖父はBの生首が入った袋とともにすうっと消えていった。
Aの腕に抱かれたままの首のないBの亡骸から血が滴り続け、外では吹雪が音を立てていた。
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644 :本当にあった怖い名無し:2013/02/07(木) 22:12:13.15
- 楳図のオチって大体ひきちぎるのイメージ
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647 :本当にあった怖い名無し:2013/02/07(木) 22:33:03.53
- >>644
同じ本の中に心臓を引きちぎる話もあった
ただ刺したり首絞めたりよりショッキングで痛そうだからな
「ブチッ」「バリバリ」「ベリッ」とか
太くてオドロオドロしい字体で音が描き込まれてる