義体販売員と初老の客
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950:1/4:2013/02/19(火) 01:32:33.59
- 昔スカパーのなんかのチャンネルでみた短編
タイトルもわからないし記憶も断片的だけど書いてみる機械の身体(いわゆるサイボーグ、義体)販売員と初老の客との会話
販売員 「こちらの身体はオリンピック選手以上の驚異的運動神経をもっており、
全パーツ国内の自社工場で製造しており安心でサポートもつきます」
と、最新の義体についてのセールスポイントを慣れた口調で説明する
客 「……」
販売員 「お気に召しませんか…でしたら、こちらはどうでしょう!俳優、モデル並みの
スタイルと容姿、先ほどの義体よりかお求め安くなっておりますがどうでしょう?」
そこで客は初めて思いつめた表情で口をひらいた
客 「……もっと安いのはないのかね」
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951:2/4:2013/02/19(火) 01:33:53.51
- 販売員 「…そうですか、でしたら当社で取り扱いしている商品で一番安価なものはどうでしょう?
さきほどの商品と比べますと、各パーツは国外のパーツを使用して
比較的安価で最低限の機能だけを備えており、お値段は…となっております」
客 「…手術はいつ出来るんだ?」
販売員 「予約が4年先まで埋まっておりまして、今のところ多少早まっても
3年後辺りということになりますね」
そこで客は切羽詰った口調で話しだした
客 「時間がないんだ!…ガンなんだよ末期の!金は治療でほとんど使ってしまった、
でも治らなかったんだ、この身体ではもうまともな仕事もない」
販売員 「そうですか、では今回のお話は残念ですが…」
と、販売員は資料をまとめて席をたとうとする
客 「見殺すというのか!?クソッ」
と、販売員に対して言い放つ
だがそんなこと言っても自分の死はもうすぐそこまできている、藁にもすがる思いで頼んだ
客 「なんでもする!なんでもするから助けてくれ」
その言葉を聞いた販売員はピタリと動きを止め席に着きなおした
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952 :3/4:2013/02/19(火) 01:39:42.49
- 販売員 「…ええ…実は特別処置という制度があるんですが…手術も一ヵ月後にできます」
客 「本当か?いっ、いくらだ!」
販売員 「いえ…費用は一切いただきません、ただし各パーツは中古になります、
施術後すぐ一定期間特別契約社員としてマレーシアの当社工場で働いてもらいます」
客 「…期間は何年だ」
販売員 「60年です、週休1日で朝7時から夜10時まで働いていただきます」
客 「なに!そんな労働条件は法律で禁じられている、馬鹿げてる」
販売員 「それが、そうでもないんですよ 生身の人間にはそんな労働条件は法律に触れるでしょう
でも、施術後はもうサイボーグですからね、人間の法律とは別なんですよ」
客 「私に奴隷になれというのか!」
販売員 「お客様、そういったお言葉はお使いにならないでいただけますか?」
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953 :4/4:2013/02/19(火) 01:41:39.80
- 客 「戸籍はどうなる、フランス人でいられるのか?」
販売員 「いえ、マレーシア人ということになります」
客 「私は戦争までいった!この年までフランスにつくしてきたつもりだ、
この私によくわからん国で60年も外人として奴隷になれだと!」
販売員 「お客様そのようなお言葉は…」販売員 「で、どうなさりますか?」
客 「………サインはどこに?」
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954 :本当にあった怖い名無し:2013/02/19(火) 02:00:18.88
- …それでも病死よりはマシってか
前パーツ中古のサイボーグの耐用年数がどれだけかも分からないのに、
というか、在庫処分&労働力確保のみならず体のいい耐久実験のようにも思えるな。
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955 :本当にあった怖い名無し:2013/02/19(火) 11:11:55.41
- 夢の近未来を思わせる会話から
最後には貧富の差から奴隷が作り出される未来社会の仕組みが見えてしまう
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956 :本当にあった怖い名無し:2013/02/19(火) 11:43:58.41
- イマジネーション上で終わるディストピア物っていいですね。
読み手に想像力を十分に与える話ですね。