孔雀の獄(皆川博子)

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皆川博子の短編「孔雀の獄」

舞台はインド。
先王の后が投獄されて15年になる。
先王の死後、誰彼構わず男を誘ったあげく、
幼い次男は先王の子ではないと白状したのだった。

牢番は女をカーリー女神様のようだと思い、ひれ伏した。
百合の花を弄びながら牢に入った女は、
何を思ったか花粉にまみれた足を鉄格子の間から突き出した。
牢番は、ほっそりとした足に顔を押し当てた。
牢番は毎日百合の花を一輪捧げ(そのために窃盗や賭博に励んだ)、
女の足に接吻する栄誉を得た。

王が死ねば息子たちは殺し合い、生き残ったものが王となる。
実の兄弟という頼もしい見方が最も手強い敵に転ずる事を知っていた先祖が、
過酷な掟を決めたのだった。
先王が死んだ時、二人の王子は14歳と7歳だった。
淫らな女は投獄され、7歳の王子は身分を剥奪されて追放された。

月に一度、長男である若い王が牢を訪れる。
「母上。あれの父の名をお明かしなさい」
女は娼婦の笑顔を向けて言う。
「わたしは淫乱なのだ」


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牢番はやっと気がついた。
女は自分の名誉を汚して二人の王子の命を守った。
女が貞潔であれば、二人の王子は殺し合わなければならない。
若い王も、母には貞潔であってほしいに違いない。
しかし、それは弟の命と引き替えなのだ。

「わたしは淫らなのだ」
女が繰り返す。
若い王は立ち去った。

(あなたさまは貞潔であらせられた)
(わたくしめはあなたさまの苦悩を存じ上げております)
牢番はそう言おうとしたが、口から出た言葉は
「あなたさまは淫らだ」
女はにやりと笑い、鉄格子の間から汚れた足を突き出した。

矛盾が後味悪いのと、牢が半地下なんだよね。
暑苦しいし、行水を許されてないらしいのがなんとも…

 

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