閉鎖(松本清張)

7811/2:2013/05/22(水) 15:59:58.47
松本清張「閉鎖」1962年発表

九州の閉鎖的な農村で、米農家の長男が失踪した。
晩秋、25歳の長男は供出米の代金200万円を農協で受け取って姿を消した。
死体は見つからなかったが、状況証拠から浮浪者に殺されて金を奪われ、
死体は崖下の海に投げ落とされたのだろう、という事になった。

老親と17歳の末弟だけでは仕事にならないので、
23歳の次男夫婦が工員をやめて農家を継いで2年がたった。
が、閉鎖的な農村の生活にはうんざり。
工員時代は確かに貧乏だったが、1日8時間働けばあとは何をしようと自由。
今は食うには困らないが、次男嫁は工員時代を懐かしがっている。

すぐ下の弟は大阪でコック見習い。オーナーに見込まれて外国に修行に出してもらえるらしい。
妹夫婦がたまに遊びに来るが、都会的で眩しいほどである。
19歳になった末弟は、東京の知り合いに就職の世話を頼んでいる。


7822/2:2013/05/22(水) 16:01:34.09
死んだ長兄は大人しく、親に逆らう事もなかった。
閉鎖的な農村では、長男が家を継がなかったら
「親不孝者を出した不出来な家」と死ぬまで笑われる。

この物語の語り手である次男は、ふと思いついた疑問を調べてみた。
長男が失踪した夜に隣村で目撃された浮浪者は、
近くの町で二年ほど前から冬と夏の夜にうろついていた浮浪者だった。
帽子とマスクで顔を隠していたのが特徴。
農閑期である冬と夏には、長男が夜出掛ける事が多かったという。

次男の推論。
長男は二年前から失踪計画を立てていて、そのために独身を通した。
二年前から変装して近くの町をうろつき、「汚ならしい浮浪者」の姿を印象づけていた。
米の代金を受け取った夜、崖っぷちに二種類の足跡を残し、
わざと傷を作ってわかりやすく血痕を残す。
浮浪者の変装で人目を避けるように隣村を歩き、結果として
「汚ならしい浮浪者が人目を避けるようにこそこそ歩き去っていった」
印象を残す。

「両親や親戚を悪評にさらさず村を出るには、兄は兄自身を抹殺しなければならなかったのです」
「うかつな事を言えば一瞬で村中に広がるような土地です、
私はこの想像を誰にも打ち明ける事はできません」
「農村の生活を都会と同じ水準に引き上げるという農林省の掛け声は、
所詮掛け声だけで終わるようです」終。


785 本当にあった怖い名無し:2013/05/22(水) 17:54:07.19
>>782

清張も後味悪い短編多いよね

 

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