はやぶさの孤島(ジョン・クリストファー)
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133:本当にあった怖い名無し:2014/01/30(木) 10:27:07.37
- ジョン・クリストファー「はやぶさの孤島」
婚約中の美男美女カップル、パーティーで50がらみの紳士M氏と出会う。
数週間後、カップルの男の方が轢き逃げで死亡。
M氏は悲しみにくれる女の家を弔問に訪れ、慰める。M氏は以後月に1~2度女宅を訪れ、礼儀正しく慰め、
泣きたい時には泣かせておいてハンカチを差し出し、
話したい時には相槌を打ち、会話を望む時には控え目に口を開いた。M氏は孤島に一人暮らしで、
女を慰める為に美しい島の様子を話して聞かせた。
女はいつの間にかM氏の訪問を心待ちにしており、
彼の島を一目見たいから招待してはくれないかと恐る恐る打ち明けた。
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134:2/5:2014/01/30(木) 10:29:46.87
- M氏は、夏までお待ちなさい、私の島は夏が一番美しいのです。と答えた。
一等車室を取り、港へ向かう。港からはM氏の快速挺で島に向かう。
島の周りは海流が複雑で、M氏の他は慣れた漁夫しか行き来できないそうだ。島に上陸した女は、カモメの姿がない事と、
M氏がそれを私の理想の為には仕方のない事、と答えたのを不審に思った。
M氏の屋敷は美しく、全てが整然と整備されていた。M氏は女を、見せたいものがあるからと森へ誘った。
庭園を抜けて丘を上がると、広い草地の真ん中の止まり木に一羽の隼が繋がれていた。
M氏はまずこの調教された隼を放して、カモメを全滅させたそうだ。
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135 :3/5:2014/01/30(木) 10:32:11.19
- 繋がれている事を女が気の毒がると、
M氏は私のインコの為には仕方のない事です、と答えた。
隼を繋いでいる紐は充分に長いので、野兎を狩るには不自由しないそうだ。森には色とりどりのセキセイインコが放たれていた。
餌が足りなければヒエやアワをやり、
海にまで遠出して死んでしまう個体が出て数が減れば本土から買い入れて放す。
M氏は苦労を重ねて彼の理想の森を作り上げたそうだ。森には小ぢんまりとした快適なサマーハウスがある。
サマーハウスのすぐ近くに昔の石切場の跡がある。
幅も奥行きも深さも数mある頑丈な縦穴。M氏は女に昔の伝説を語った。
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136 :4/5:2014/01/30(木) 10:36:25.80
- …この島の領主がある少女を気に入り、誘拐した。
少女が領主を拒んだので、彼は召使いに命じて彼女を縦穴に下ろさせた。
それでも逆らうので、領主は差し入れの葡萄酒に眠り薬を盛り、
眠る少女を犯した…馬鹿な男だ、食事など与えずにほんの数日放置しておけば
少女も意地を張るのを諦めたでしょうに。
ところで私の島には1つだけ欠けている物がある。
貴女こそこの島の女王に相応しい。女はM氏の並外れた意思の強さとおぞましい決断力を察した。
森に放つ為に南国の鳥を大量に買い入れる。
南国の鳥を守る為にカモメを殺す。
カモメを殺す為に隼を放つ。
用が済めば隼を止まり木に繋ぐ。
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137 :5/5:2014/01/30(木) 10:39:38.88
- …婚約者は轢き逃げで死んだ。
M氏は港へ向かう汽車の中で、
戦争以来車を運転したのはたった一度だけと言った…
M氏が婚約者を殺したと察した女は、小柄で痩せたM氏の胸に飛び込み
このまま草むらの中で愛を交わす事を主張した。三週間後、発電機の燃料を配達に来た漁夫が縦穴の底にM氏の死体を発見した。
お屋敷に食料の備蓄があってよかった、
まさかあのお方が足を踏み外して落ちるなんて油断しなすったんだなあ。
と、漁夫は女を慰めた。繋がれている事を気の毒に思った女が紐を切ったので、
隼がインコを全滅させてしまった。
空高くを飛ぶ隼を見上げて、助けられた"殺人犯"は泣いた。終