モデル・コーポ(眉村卓)
-
467:本当にあった怖い名無し:2014/02/08(土) 22:23:57.39
- 眉村卓の短編SF「モデル・コーポ」。
70年代に書かれた小説だ。書かれた当時より少し未来の話。
東京は急速に近代都市として発展を遂げていた。
しかしそれは国が他の県をないがしろにしてまで都に予算を与えたからであり、
世間では反発が強まり、今日もどこかで暴動を起こした連中が機動隊と揉み合っていた。だが新聞記者である主人公は、
どこか1つの都市を発展させれば他の都市もそれに追従するだろうから、
国全体を発展させるためにはまずどこかがモデル都市にならなければならないと考えていた。
東京には日本全体のモデル都市となる資格があるのだ。そんなある日、上司から高校時代の同級生だった男を取材してくるよう命じられる。
彼は昔から常人と違った発想をする男で、
発明家としていくつか特許を取って財産を築いたが、
あくどい稼ぎ方をしたことで日本にいられなくなり、渡米していたはずだった。
それが近年になって密かに帰国し、都内でマンションを経営しているという。
そのマンションは、なぜか他のビルより遥かに電力を消費しているというが…。
-
468:本当にあった怖い名無し:2014/02/08(土) 22:24:27.75
- そのマンションに向かった主人公だが、
高層ビルだらけの東京には似つかわしくない、3階建てのただの建物だった。
しかしその中身は、どうした事か何十階ものフロアが存在する。
これは一体…?元同級生の発明家は主人公の取材に答えた。
この建物は米国の学者が提唱した「空間を折り畳む理論」に基づいて作られている。
外見は3階建ての建物だが、
中には何十階ものフロアが収納された異次元空間になっているのだ。
そしてその異次元空間を生み出すには莫大なエネルギーが必要であるため、
それに電力を使っているのだと。
住民達は東京に住めるだけで感謝してるからマンションの仕組みには文句を言わないし、
大勢住まわせられるから電気代も元は取れるのだ。
-
469 :本当にあった怖い名無し:2014/02/08(土) 22:25:54.66
- 主人公
「ちょっと待て。この空間を維持するのに電気エネルギーを使ってるってことは、
もし停電でも起きたらどうなるんだ?」発明家
「この空間そのものが維持できなくなり、
空間の歪みが元に戻ろうとする反動から原爆並みの大爆発が起こるだろうね」主人公
「この東京のど真ん中でそんな爆発が起きたらどうするんだ?
今すぐこんな危険なマンションはやめろ!」発明家
「冗談じゃない。このマンションが成功すれば、
他にも同じようなマンションが立つ事になるだろう。
ここはその為の第1号、モデル・コーポなんだ。
だいたい危険だというなら、元々東京なんて危険だらけじゃないか。
爆薬そのものの石油やガソリンを積んだ車が引っ切り無しに走ってる。
僕を止めたいんならそれら危険物を全て取り除いてからにして欲しいね」追い返される主人公。
確かに奴の言う事には一理ある。
新しいものを広める為には、どこかがまずモデルとならなければならない。
それは都市もマンションも同じじゃないのか…。
いや、何かが間違ってる!奴にはっきり言ってやらねば…と振り返った瞬間、
町中の明かりがフッと消えた。
雪でどこかの送電線が切れ、停電が起きたのだ…。次の瞬間、主人公は思わず身を伏せたが、何の意味も無かった。
一瞬目の前が真っ赤に染まり…。