コウスケ(内田春菊)

725 名前:内田 春菊 「コウスケ」 投稿日::03/05/08 11:17
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私には狂った伯母がいる。今日も伯母の様子を見に行った。
伯母は一人息子の「コウスケ」を溺愛している。
その溺愛ぶりが私のカンに障り、悪意のこもった一言を言ってしまった。
「でも…コウスケって豚にそっくりよね」
「私のこと馬鹿にしてるんでしょおぉぉぉぉぉ!!」
伯母はコウスケを掴むと包丁でメッタ刺しにしてしまった。
飛び散る血飛沫、キィー!というコウスケの断末魔。

血だらけで泣きながら逃げ帰った私は、母に言い訳をした。
「ごめんなさい。また、やっちゃった。私、気を付けたんだけど我慢できなかったの」
「仕方ないのよ、いつもの事だわ。明日、伯母さんの家に行きましょ。
 きっと豪華な料理をご馳走してくれるわよ」
「伯母さんの料理は美味いからなぁ」
と父も言う。

伯母さんは豚を手に入れては「コウスケ」と名付けて服を着せ、錯乱すると殺して料理してしまう。
しかし最近では「コウスケ」に身が入らないのか、服の着せ方がいい加減だ。
「コウスケ」と散歩していても道端で適当にうろつかせ、人が通ると慌てて抱きかかえる。
この前なんかは
「うちの豚…いや、コウスケがねぇ」
と言っていた。病気は快方に向かっているのかも知れない。

しばらくすると、私は高校に合格したことを知らせるために、伯母を訪ねた。
伯母は庭でしゃがんで何かを燃やしていた。
「伯母さん…」
その瞬間、鬼のような顔をこちらに向け、泣きながら
「私のこと馬鹿にしてるんでしょおぉぉぉぉぉ!!」
と叫んだ。私はびっくりして、あの日のように逃げ出した。伯母とはそれきりだ。


726 名前:内田 春菊 「コウスケ」 投稿日::03/05/08 11:18
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そして今日、大学生になった私は伯母から呼び出された。
伯母は、死んでしまったもう一人の伯母の夫だった人と再婚していた。
「大学入学おめでとう。あなたには随分と迷惑をかけちゃったわね」
「彼女の病気は全快したから、もう大丈夫だよ」
彼らは豪華な食事を前に、口々に言った。
「あなたにも、そろそろ彼氏ができたのじゃないかしら?」
「ええ、実は…」
「まあ、それなら結婚するといいわ」
「無理なんです」
「あら、どうして?」
「だって…彼、コウスケって名前なんだもの」

その瞬間、私の中で何かが弾けた。
「私のこと馬鹿にしてるんでしょおぉぉぉぉぉ!!」
そう言って、私は伯母と叔父を包丁でメッタ刺しにしながら考えごとをしていた。
死んだ伯母は心臓が悪かったこと。その伯母の前で、何度もコウスケを血祭りにあげたこと。

「ごめんなさい、ごめんなさい」
でも、私は伯母ほど料理が得意じゃない。


728 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日::03/05/08 12:21
>「だって…彼、コウスケって名前なんだもの」
>
>その瞬間、私の中で何かが弾けた。

弾ける前に、そんな理由をのたまうな!


730 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日::03/05/08 12:26
>>725-726
普通に面白かったよ。こういう話は大好き(w

>伯母は庭でしゃがんで何かを燃やしていた。

これが気になるーっ!
伏線ってわけじゃないのか……。


733 名前:725 投稿日::03/05/08 12:43
>>730
伏線でもなければ説明もなかった。
佯狂の限界、ってことは解るけど。
燃やしてたのは伯母の死と、その夫に関する物?

734 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日::03/05/08 12:47
その時飼ってたコウスケかと思っちゃったよ>燃やしてる物

754 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日::03/05/08 21:36
ごめん、>>725の意味がいまいち良くわからない
誰か説明を・・・

757 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日::03/05/08 23:11
>>754
豚のコウスケを溺愛する伯母。
SARSが伝染するようにその狂気に侵されてしまった私。

766 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日::03/05/09 10:58
>>754
伯母は自分の姉妹の夫と浮気をしていた。
簡単には離婚ができなかったから、狂ったふりして
心臓の弱い姉妹の前で何度も動物を殺し、心臓発作で死に追いやった。
そしてまんまと結婚した。夫も計画に荷担していた?

狂ったふりが本当に一時期、伯母を狂わせていたのではないか。
姉妹を殺してしまった単なる後悔かも知れない。

後は>>757の言う通り。上記の内容は本編の中になかったので、全て私の推測だが。


767 名前:757 投稿日::03/05/09 11:31
>>766
>伯母は自分の姉妹の夫と浮気をしていた。
>簡単には離婚ができなかったから、狂ったふりして
>心臓の弱い姉妹の前で何度も動物を殺し、心臓発作で死に追いやった。
>そしてまんまと結婚した。夫も計画に荷担していた?

なるほど!
それは全く考えられませんでした。
わざわざ再婚していたことを記述する理由も納得できます。

狂ったふりが
「何故か」伝染してしまった、
というのがポイントですね。

 

あたしのこと憶えてる? (中公文庫)
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