必死剣鳥刺し(藤沢周平)

115 名前:1/2 投稿日:2005/06/04(土) 07:24:26
短編の「必死剣鳥刺し」という話

北国の某藩では、藩主お気に入りの側室があれやこれや口出しするため、政治は混迷を極めていた。
藩主の口を通じて執政会議に持ち出されるその案の数々がいかに無茶苦茶に思えても、
誰も表立って批判することができない。

藩の中でもそれなりの地位にあった主人公は一人の女のために藩政がかき乱されていく
そんな状況を見かねてとうとう、その側室を城内で殺害するという思いきった行動に出る。
切腹を申し付けられることも覚悟していたが
意外にも藩の将来のことを考えた忠義ある行動ということでおとがめはなかった。
しかし、それから藩主はじめ上層部が主人公に冷たく当たるようになる。
針のむしろのような勤めの日々が続き、主人公は家老に不満を訴えるが取り合ってもらえない。
家老が当てにならないならということで藩主に直談判するが、
やはり納得のいく答えをもらうことはできず、逆に謹慎を命じられてしまう。

主人公が自宅で謹慎している間、彼の姪が身の回りの世話をしていた。
彼女は一度は嫁にいったものの結局は離縁されて出戻ってきた身の上であった。
主人公は、自分のことが落ち着いたら彼女をしかるべき家に嫁がせてやり直させようと考えていたが、
実際には姪の気持ちは叔父である主人公に向いていた。
姪の口から婚家での不しあわせな日々の話、
また自分を慕っていることを聞かされた主人公は、ついに彼女と一線を越えてしまう。


116 名前:2/2 投稿日:2005/06/04(土) 07:28:06
それから、主人公は城に呼び出され、秘密裏の命令を受ける。
それは藩主家と対立している有力者を殺害することで、
主人公の剣の腕と、彼が独自に編み出した技「鳥刺し」を見込んでのものであった。
主人公は、城内の一室に呼び出されていたその有力者と対峙し、死闘の末彼を斬り倒した。

その時、家老が一団の藩士を引き連れて現れ、一斉に主人公に斬りかかってきた。
主人公は事ここに至り、藩主は側室を殺された恨みを忘れてはおらず、
いずれ始末するつもりで対立者を倒すための駒として自分を利用し、
また家老もそれに一役買っていたことを悟るのだが、すでに手遅れだった。
主人公は力の限り戦ったがついに力尽きてしまう。
刀を杖のようにしてうずくまり動かなくなった主人公に家老が近づいてきた時、
死んだと思われた主人公の体が躍り、その刀が家老の胸を貫いた。
家老を道連れにしたこの一撃こそが、必死の剣「鳥刺し」の正体であった。

それから場面はとある農村に移る。村のはずれに一人の女が立っている。
それは主人公の姪で、腕の中に主人公にそっくりな赤子を抱いている。
主人公は城内での斬り合に臨む前に、彼女を城下の農村に預け、
すべてが終わったら一緒に暮らそうと約束していた。
姪はその約束を信じて、幸せな生活が訪れるのを夢見て待ち続ける・・・というところで完。

これ書いてて思ったんだが、藤沢小説はたとえハッピーエンドでも何か後味悪い要素が含まれるのが多い稀ガス

 

隠し剣孤影抄 (文春文庫)
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