妊娠カレンダー(小川洋子)
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367 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/05/21(日) 02:57:37
- 『博士の愛した数式』の作者、小川洋子の小説はどれも少し不気味。
ヒューマンドラマっぽい『博士の愛した数式』の作風を期待して
他の著作を読んだら後味が悪くなると思う。彼女の芥川賞受賞作である「妊娠カレンダー」のあらすじ。
ある少女の日記形式で話はすすむ。
少女の姉は妊娠している。もとから神経質で繊細な姉は
つわりのために一層ヒステリックになっていく。
そんな妻に、献身的というより、むしろ奴隷のように尽くす義兄。
少女は若い姉夫婦のようすを静かに観察しながら、グレープフルーツのジャムを煮る。
金色でつややかにひかり、舌の焼けるようにあまいグレープフルーツジャム。
偏食のひどい姉は、それを毎日病的なほど山のように食べる。
農薬のたっぷり染みこんだ輸入果物が
胎児の染色体を破壊するようすを想像しながら
少女は淡々と、アメリカ産グレープフルーツのジャムを姉に食べさせつづける。
やがて姉に陣痛が起こる。少女は、姉が運ばれた古くてほこりっぽい病院の廊下で
耳がせつなくなるような産声をきく。
破壊された姉の赤ん坊を見るため、少女は新生児室に向かって歩き出す。これでおしまい。妹は、姉や義兄のことを特に憎んでいるわけでも
赤ん坊を憎んでいるわけでもない。
ただただ、意図的に輸入グレープフルーツを選んで煮込み
破壊される胎児の様子を想像し続けるという話。