七瀬三部作(筒井康隆)

735 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/12/28(木) 12:05:08
トラウマスレで話題になってた、筒井康隆の七瀬三部作。
トラウマとはちょっと違うので、こっちのスレで。

1作目「家族八景」
 主人公のテレパス・火田七瀬が、色々な家庭に入ってそこの家族の心を読み、
 人間の汚い面をいっぱい見る。
 で、自分の能力を明かすことができずに悶々。

2作目「七瀬ふたたび」
 自分の持つ能力ゆえに孤独だった七瀬が超能力者の仲間を得る。
 が、反超能力者組織に追われ、仲間もひとりふたりと殺されて行き、
 七瀬自身も最後に殺される。

3作目「エディプスの恋人」
 七瀬は普通に生活していて恋人ができる。
 その恋人の母親が、この世を統べる唯一神みたいな存在になっていることがわかる。
 自分がその相手を好きになったのも、その母親の力で無理矢理だったんじゃないか…とも思うが、
 それでも好きなのでしょうがない。
 その母親の好意で、前作で殺された超能力者の仲間たちが復活する。
 が、彼らは既に死んでいること(ついでに自分も殺されたこと)を思い出し、
 死んだ筈の仲間に会うのが怖くなって(それまでテレパシーで接触があっただけで
 直接は会ってない)「彼らは既に死んでいるから復活させんでいい」みたいなことを言う。
 復活した仲間は元通り消えてしまう。
おわり


738 名前:1/2 投稿日:2006/12/28(木) 14:06:30
>>735
その1作目、「家族八景」より、「水蜜桃」という物語を。

七瀬が今回やってきたお宅は、典型的二世帯住宅。
退職した老夫婦とその息子夫婦がいて、老夫婦の方の夫(以下A)は、若い息子夫婦にお荷物だと思われている。
Aも同居しながらそれを薄々感じ取っており、さらには忍び寄る老いを認めたくない逃避として、
若者全般にうっすらとした恨みを抱いている。
そこに現れた美しく若い家事手伝い・七瀬。
Aの「まだ老いたくない、俺だって男なんだ」という意識は彼女の存在により研ぎ澄まされ、
ついには彼女をレイプすることで、俺は若さを取り戻せるんだ…という妄想に向かう。
七瀬はテレパスなのでそれを感じ取り、おびえる日々。
しかし息子夫婦に、「あなたのお父さんが私を犯そうと妄想しています」と
言えるはずもなく、ある日息子夫婦が旅行に出かけた夜、Aはレイプを決行することを決断してしまう。


739 名前:2/2 投稿日:2006/12/28(木) 14:07:02
ガクブル震えながら布団につく七瀬の部屋に、Aが夜這いをかけてくる。
もちろん七瀬は抵抗するが、男の力にかなうわけもない。
そこで七瀬は禁じ手とも言える手を使い、Aの妄想を自分から言い当ててしまった。
愕然とするA。「お前はさとるの化け物なのか?」と言う。
Aは幼児の頃、祖母から何でも他人の思考を言い当ててしまう「さとるの化け物」の話を聞き、
それがトラウマとなっていたのだ。
「そうよ、私はさとるの化け物よ。あなたの薄汚い妄想も全部知っていたのよ」
逆転を確信し、言いつのる七瀬。Aはさらにショックを受ける。
男らしい父として、威厳ある夫として、退職した元重役として、
家族の前で積み重ねていた仮面がすべてこの小娘に剥ぎ取られたと知り、
幼少期からのトラウマが解放されたのも同時に、Aは発狂する。
うへうへうはははと笑いながら七瀬の部屋から出て行くA。
騒ぎを聞きつけ、ようやく起き出してきたAの妻が、
「あなた、どうしたの」「なに笑ってるの」と暗い廊下でたずねるシーンでEND。

Aの妻だけは最後までいいひとっぽいポジだっただけに、
夫の発狂の姿を見てどう思うんだろう…という後味の悪さが抜けなかったよ。
タイトルの水蜜桃は、イギリスの詩人が「老人の孤独」を謳った詩にある文章から。
Aはその桃を、七瀬のぷるぷるの肢体に見立ててハァハァしていたわけだが。 


742 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/12/28(木) 19:00:06
さっさと逃げればいいのに。
せめてその夜だけでも。
馬鹿かそいつは。

747 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/12/29(金) 00:48:55
>>742
せっかく心が読める能力があるのに何の活用もしてないよね。
死んで正解だと思た。

757 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/12/29(金) 17:01:15
>>742>>747
家事手伝いって、つまり住み込みの下女っしょ。
若い家族がでかけたときこそ、年寄りの世話やらで留守番を強制されるもんだと思うがw
まあ、主人公もただ「読める」だけのでくのぼうテレパスで、相手をどうこうする能力はないし、
全身全霊でその能力を隠すことを信条にしてるのは明記されてるけどね。
そのために、棺おけの中で生き返った人を見殺しにして、火葬させちゃったりとか。

758 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/12/29(金) 17:18:47
そもそも八景の七瀬は二十歳になるかならないかくらいの子供なんだよな

763 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/12/29(金) 18:30:57
まあ、設定に突っ込み始めたらそもそも、
「テレパスだから、下女くらいしか向いてない」って思い込んでる七瀬がry
読んでてこの設定が一番違和感持った罠。

772 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/12/29(金) 22:56:21
>>735
3作目の状況のどうにもならなさ加減が最高だった。

その母親は夫(才能の無い芸術家)と息子(溺愛している)の3人家族だった
普通の人が、前任者から後任に選ばれ、力を全部渡されて神になったという人。
万能で絶対の力があり、宇宙の全てのことを知覚できて何でも出来る。
夫と息子は母親が神になったことは知らない。

母親はまず、夫の作品を見ると激しく感動するように人々の感情を操作して、
夫が芸術家として世間に評価されるようにした。(作品そのものは凡作のまま。)
息子には恋人として相応しい相手を探し、前作で死んだ七瀬を見初めて生き返らせる。
社会的な立場や息子との出会いといった都合のいいシチュエーションも
息子のことを愛するという七瀬の感情も全て母親の操作によるもの。息子の感情も同様に操作。

息子と七瀬の関係がいい感じになったところで、母親は七瀬に自分の力のことと、
息子の理想の恋人とするべく生き返らせたことを打ち明ける。
その際、七瀬の為にと前作で皆殺しにされた超能力者仲間達を生き返らせて見せるが、
七瀬が拒絶したので元通り死んだことに戻す。
(お互いにテレパスなので、生き返ったのも死んだ(消えた)のも本物の仲間だと分る)

母親が打ち明けてきたのは、息子(童貞)と七瀬(処女)の
初めてのセックスを七瀬と意識だけ入れ替わって自分が体験したい為。
七瀬は嫌がるが母親の力は絶対で不可能は無いので、息子と七瀬(中身母親)で初体験。
その間、入れ替わった七瀬は一時的に宇宙の全てのことを知覚できる状態になったので、
母親の感じていることを同時に認識。

ラストは、自分の感情も含めて何もかも母親に操られるままで逆らうことも不可能なことに
絶望した七瀬の「神様、どうか早く死なせて下さい」という言葉で終るが、多分それも無理。

 

家族八景 (新潮文庫)
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七瀬ふたたび (新潮文庫)
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エディプスの恋人 (新潮文庫)
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