生きている脳(筒井康隆)

148 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/06/28(木) 20:18:02
筒井康隆「生きている脳」

重病で余命いくばくも無い男。
自分の財産や会社が親族や重役たちに食いつぶされるのを心配して延命を医者に相談すると、
治療は不可能だが冷凍睡眠か脳だけを保存するかなら可能だと言う。
冷凍睡眠の人体実験は既に成功してるので、功名心に駆られた医者は前例の無い脳保存を勧める。
男は脳だけで生きのびたって見たり話したり出来ないんじゃ意味が無いと訴えるが、
それはいずれ技術が発達すればなんとかなると医者。駄目押しに
「理論的には何百年も生きられるんですよ」
その一言で男も手術を決意。

体から脳が切り離される。
脳神経は後々センサーやマジックハンドを接続するために残された。
脳を培養液に浸すと活発な脳波が観測され、手術は見事成功。
培養層の中で、脳は安楽そうにたゆたっている。

男は全身の神経を切られた凄まじい痛みに苛まれていた。
のた打ち回ろうにも、のた打つ体は無い。
叫びたくても、叫ぶ口も無い。
耐え切れず死にたくなっても、自殺の手段も一切ない。
思考の中で何度も医者の言葉が繰り返される。
「理論的には何百年も」 「理論的には何百年も」

 

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