残虐記(桐野夏生)

271 名前:「残虐記」1/3 投稿日:2007/08/06(月) 00:19:32
失踪した小説家Aの夫から、彼女の担当編集者に宛てて送られてきた手紙。
中身は、Aがプリントアウトして残した手記とも小説ともつかない原稿だった。
実は彼女は10才くらいの時に男に誘拐され、一年くらい犯人の部屋に監禁されていたという過去があった。
高校ぐらいの時に彼女はその体験をもとにした小説を書き、
被害者本人と世間に気づかれないまま小説家としてデビューしたのだ。

原稿の書き出しは、犯人からの手紙が彼女に送られてきたこと、
その手紙に「せんせいはうそを書いている」「ぼくもせんせいをゆるさない」などと書かれていたこと、
犯人がまもなく出所することを知ったことから始まっていた。
少女だったころのAはまわりの子供達から浮いていて、どちらかというといじめられていた。
習いたくもないバレエを見栄っ張りな母親に習わされ、その帰りにさらわれた。
犯人の男Bは気に入らない振る舞いをすると彼女を酷く殴ったので、抵抗できなくなった。


272 名前:「残虐記」2/3 投稿日:2007/08/06(月) 00:20:10
Bは昼間は住んでいる部屋の階下にある工場で働き、
昼休みに帰ってきてAを裸にしてその前で自慰をした。
夜は自分も小学生になりきってAと話をした。
Aは隣に住んでいる男Cのことを聞き出し、
彼が気づいて助けてくれないかと思ったが、いっこうに救いの手はこなかった。
BはAのことを「みっちゃん」と呼んでいた。
Aは押入からランドセルやその他を発見し、
みっちゃんは自分の前に誘拐されて殺された子のことなのではないかと思った。
一年後にAはBの雇い主の奥さんに発見され、解放された。
その時にAはCの部屋(引っ越したかなんかで不在になっていた)に入って押入に覗き穴があるのを見つけ、
Cは自分を助けるどころか知っていてのぞき見していたBの共犯者だったのだと知る。

Aは周囲の好奇の目や同情に辟易していたが、Bが実はフィリッピーナの娼婦を殺していたこと、
Aの両親が離婚し、引っ越し、その後父親が再婚したことなどから、
彼女本人からは世間の目はそれていった。
Bは幼い頃Cに拾われ性的虐待を受けていたが、いつもCに気に入られたいと思っていた。
Cは性行為をのぞき見することが好きだったので、
Bはフィリッピーナを誘い込み監禁したが出ていこうとしたときに殺してしまったのだ。
「みっちゃん」というのは小学校に2年までしか行けなかった自分がその続きを演じるための
B自身の名前であり、押入のランドセルなども自分のためのものだった。


273 名前:「残虐記」3/3 投稿日:2007/08/06(月) 00:20:48
…というようなことがAの原稿につづられ、
自分のことが本当に分かるのはBなのだというようなほのめかしがある。
ちなみにAの夫は事件で知り合った検事だったかで、どこか変わった態度の被害者少女のことをおもしろがっていた。
Aはどこにいったかわからないし、自分を監禁した犯人になんだか共感しているところがもやもやする。
実際にあった少女監禁事件からヒントを得ているらしいが、だとしたらよけいに後味悪い。

274 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/08/06(月) 00:37:53
桐野夏生って後味悪いっていうか
主人公が狂ってる作品が多いよな

 

残虐記 (新潮文庫)
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