suicaide note(きづきあきら)
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781 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/09/07(金) 17:22:28
- 伝染コンプレックスという短編集より
自殺の方法を模索する二卵性双生児の姉妹がいた。
失敗率が高いのも痛いのもいや、家で死んで義父に死体の始末をさせるのもいやだった。
姉妹の実父は幼少期に亡くなった。それから母は義父を連れてきたが、やがて失踪した。
母の蒸発を悲しむどころか義父は喜び、双子といえどタイプの違う二人をローテーションで弄んだ。とりあえずその日は自殺を諦め、電車に乗って帰った。
妹は最近やたらと眠たがり、電車内でも姉にもたれて眠った。
姉はどちらかというと不眠症だった。眠る妹を呑気に思う。
家に帰ってからも、死ぬ時はお気に入りの服を着ようなどと話し合った。
最期に食べたいものはあるかと姉が聞くと
「もうずっとそんなものない お姉ちゃんもそうでしょう」と妹は言った。
姉はそうではなかった。自殺するという実感がなく、
むしろ死ぬのをどこかで嫌がっていた事に気づいた。二人はまるで大人になるのを拒むかのように、初潮がくるのがとても遅かった。
姉は初潮を迎えた時、こんな日々の中でも普通の子のように生きているのだと実感できて嬉しかった。
妹は号泣した。子供まで産まされるかもしれないと。
姉は「逃げよう 説明すれば助けてくれる人もいるはず」と言った。
今までずっとオモチャにされ続けていた事など話せるはずがない、「死んだ方がマシ」と妹は言い放った。
姉は、妹を置いて1人で逃げる事はできず、共に死ぬ道を選んだ。
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782 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/09/07(金) 17:23:48
- 「なんで死ぬのがあたしたちなの あんな奴殺しちゃえばいい
でもあんたがいやだっていうから死にたいっていうから」
妹を支えにし、妹と共に励ましあっていたからこそ姉は正気でいられた。
だが妹は同時に、足枷ともなっていた。
妹は言う。今の状況は辛くてたまらないが、逃げ出しても
もっと酷くなるだけかもしれないという恐怖心があったと。
「いつか死ぬ」という事を希望にして、姉と不幸さを二分にして
生きていった方がいいのではと、心のどこかで思っていたと。
妹はまた急激な睡魔に襲われて眠りについた。
この子の体にはもう生きる力がないのだと姉は危機感を感じた。姉は部屋を出る。部屋の向こうからは争うような激しい音がする。それでも妹は目覚めない。
戻ってきた姉は泣きながら、眠り続ける妹を背負い、引きずるようにして外へ出た。
天国にいるかもしれない実父を思う。あなたのせいでこうなったと少し恨む。
だが、自分よりも大切だと思える存在を産まれながらに与えられた事を感謝した。
妹を支えではなく、重荷と感じる事がまたあるかもしれない。
でも、まだなにもはじまってはいない人生をこのまま終わらせてしまうよりはいいと思えた。
たとえ。また違う男に弄ばれる事になっても。引きずられながらも目覚めない妹を背に、姉は空を見上げる。
だって死んでいたらこんなにきれいな月を見る事もなかったのだから、と。
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784 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/09/07(金) 17:27:58
- 妹、どんだけ寝るんだ!
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789 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/09/07(金) 20:27:02
- >>781-782
姉妹の境遇には胸が重くなるばかりだが
決着もつけて自分らで生きる道を歩み出した感じで
あんまり後味悪くないのは俺だけか