怪奇猫娘(水木しげる)
- 
505 名前:1/3 :2009/01/25(日) 22:57:18
- 水木しげるの「怪奇猫娘」
 鬼太郎に出てくる猫娘の原点になったキャラが主人公の話。猫を捕っては三味線の皮として売り飛ばす「猫捕り」を生業としている男がいた。 
 が、ここのところ猫が捕れず、妻が妊娠してる上病気だというのにほとんどお金がない状態。
 ふと、墓守の老婆の家に大猫がいることを思い出した男は、墓守の家に行く。
 幸い老婆は留守だったが、現れた大猫は本当に巨大で、まるで豹のよう。
 それでも格闘の末、男は猫を殺し持ち帰った。
 しかし家に帰ると、妻は死んでいた。ふと気がつくと猫の姿も消えている。
 足跡を見つけ、たどると、墓守の家に続いていた。
 墓守の老婆はあれは百二十年生きてきた烏猫で、
 お前にたたりがあるぞと言うが、男は笑い飛ばし、翌日妻を埋葬した。
 すると墓の中から赤ん坊の泣き声が。土をどけ、出てきたのは女の赤ん坊だった。
 それを見て老婆は再び、たたりが来たからその子を捨てろと警告するが、
 男は妻が墓の中で産んだのだから自分の子だ、お前にとやかく言われる筋合いはない、と突っぱねる。赤子はみどりと名づけられ、大切に育てられるが、一歳になった頃、妙な癖があることに気づく。 
 魚やねずみを目にすると目が釣りあがり、牙をむき出しにしたまるで猫のような形相になり、
 それを食べ終わるまで元の顔に戻らないのだ。
 偉い医者にも見せたが原因はわからず、治すことも出来ない。
 老婆はその子は今殺しておいたほうが幸せだと言うが、男は無視した。そして十年後。男は三味線の製造でお金持ちになり、みどりも普通に小学校に通っていた。 
 が、ある日隣の子の弁当の魚のにおいに反応して、猫になってしまう。
 噂は広まり、みどりは「猫娘」と呼ばれいじめられるようになった。
- 
506 名前:2/3 :2009/01/25(日) 22:57:58
- そして噂を聞きつけたサーカスからスカウトがくるが、みどりは見世物になるのは嫌だから、と断る。
 しかし彼等が仕掛けた罠にかかり、みどりは動物として檻に入れられ、サーカス団に連れて行かれてしまった。興行先でなお、見世物になるのを嫌がるみどりを、親方は無理やり刃物を突きつけ、鞭で打って舞台に上がらせる。 
 みどりの顔に近づけられるねずみ。必死で我慢するが……とうとう観客の前で猫面になってしまった。
 客は喝采を浴びせるが、みどりは泣いた。そうして一ヶ月が過ぎ、みどりの父親は仕事も家もすべて手放し、 
 行方不明になった我が子を探してあちこちを旅していた。
 そしてついにある町で「猫娘」とのぼりの出ているサーカスのテントを発見。
 もしやと思い裏から覗こうとするが、親方に殴られ叩き出されてしまった。仕方なく父は警察に連絡する。
 たまたまみどりが一人でいるところに警察からサーカスに電話がかかってきた。
 みどりは「急いできてください」と言うが、親方に見つかりひどい折檻を受ける。
 と、次の瞬間、魚もねずみもないのにみどりが猫に変わった。
 驚く間もなく親方は、みどりに喉を食い破られ死んだ。
 警察が来た時にはみどりはおらず、親方の死体だけが残されており、みどりは殺人犯として手配される。一人夜の街を歩くみどり。自分が勝手に猫になり、 
 人を殺した記憶は全くなかったが、手配されたことは知っていた。
 お父さんに一目会いたいと歩き続けるうち、警官に見つかりデパートの屋上に追い詰められる。
 やむなくみどりは窓伝いに下へ降りて逃げようとするが、中で働く事務員に見つかってしまった。
 相手は魔物だ、とモップで彼女を無理やり落とそうとする事務員達。
 「どうしてあなたがたは私を………くるしめるのですか おねがいです たすけてください」
 そう訴えるみどりに、容赦なくインク瓶が投げつけられる。
 ついに我慢できなくなった男性事務員が強引にみどりを落とすが、彼もまたバランスを崩して下に落ちてしまった。
 警官が駆けつけると、そこには男性事務員の死体があるだけ。
 そのせいで彼もみどりが殺したと勘違いされ、よりいっそう追及は厳しくなった。
- 
507 名前:3/3 :2009/01/25(日) 22:58:46
- 母の墓の前に着き、私もお母さんのところへ行きたい、と泣くみどり。
 墓守の老婆が猫いらずを勧めるが、みどりは気味悪がって逃げだした。
 自宅に帰り着くと、すでに売り払われ人手に渡っている。
 みどりは担任の先生を頼ろうとするが、彼もみどりが世間で恐れられている猫娘だと知ると、彼女を恐れ震える。
 泣く泣くみどりは先生の家を後にした。その影は猫の姿になっていた。ついに警察に見つかり、みどりは追い詰められしかたなく煙突の上へ登る。 
 しかし下からも警官がやってきて、上からもヘリが迫ってくる。
 「こんなことならいっそ死んでしまおう」
 そう言って泣くみどりにようやく追いついた父親が「みどり 死んじゃだめだ みどり!」と呼びかける。その時、遠くの空から烏の大群が現れた。烏はあっという間にみどりを囲むと、彼女を連れて飛び立った。 
 父親は必死で後を追いかけたが、あっという間に烏は見えなくなってしまった。
 泣く父の前に老婆が現れ、告げる。
 「あの子はとうとう幸せになれたよ……… いまごろはあの烏山で骨になっているだろうよ…」
 老婆はさらに続けた。
 「けっきょくお前のくるしみはお前の殺した烏猫のくるしみと同じなのだ
 猫娘に何も悪いことをしなかったと同じように お前の殺した烏猫も何も悪いことをしなかった
 たたり……とは命を軽々しく生活の手段にしようとしたお前の只一つの返事だったのだ……
 よう考えるがええ」



