ホーム » 小説 » 小説/か行 » 頚を切られた雌鳥(オラシオ・キローガ)

367 名前:首のない鶏 1/2 :2009/11/23(月) 01:22:46
ウルグアイの作家、キローガの短編集「愛と狂気と死の物語」の一話。

愛し合って結ばれた夫婦が男児を授かった。
天使のように愛らしい赤ん坊で、両親の愛情を一身に受けていたが、
一歳半になる頃に突然高熱を発し、一夜明けるとすっかり白痴状態になってしまっていた。
両親は落胆したが、まだ若いこともあり、すぐに次の男の子が生まれた。
しかしこの子も、一歳を過ぎると高熱を出して痙攣を起こし、長男と同様に痴呆になった。
なんとか健康な子を、と切望する両親の三度目の挑戦で双子の男児が生まれたが、
この子らも次々と兄たちと同じ運命をたどり、両親は四人の白痴を抱えて絶望した。

母親は息子たちの面倒を見ようとはせず、見かねた父親が指摘すると
「あなたの息子たちなんだから、あなたが面倒を見れば?」と言う。
父親の親戚に精神病を患った者がおり、その血筋でこんなことになったと言うのだ。
父親の方は、母親に肺病の気があるために息子たちが脳症にかかったと考えており、
夫婦は互いに責任をなすり付け合って言い争った。
争いながらも、二人は不運な結婚生活を相哀れみ、愛し合うのだった。
こうして、最後に娘が生まれた。

両親の危惧をよそに、娘は健康にすくすくと育ち、両親の愛情は娘一人に注がれた。
白痴の息子たちは顧みられることもなく、日がな一日ポカンと口を開けてよだれを垂らし、
庭のベンチに肩を寄せ合いながら座って過ごしていた。
ただ、夕日が沈む頃、夕焼けで空が真っ赤に染まるとやたらと興奮して騒ぎ立てるのだった。


368 名前:首のない鶏 2/2 :2009/11/23(月) 01:24:59
娘はようやく五歳になろうとしていた。医者は五歳を過ぎれば脳症の心配はないと言っていたが、
その誕生日の前日、娘が高熱を発する。両親はまたもお互いを責めて言い争った。
しかし、一夜明けると熱はすっかり引いており、快活で可愛らしい娘のままだった。
両親は大喜びで、盛大に誕生日を祝うことにする。
母親は女中に、鶏を一羽つぶしてご馳走を用意するように言いつけた。
女中が台所で首を切った鶏を逆さに吊るして血抜きをしていると、
背後では白痴の息子たちがその様子を異常な熱心さで眺めていた。赤い、赤い…

回復した娘と両親は誕生日を祝いに教会へ出かけた。
その帰り道、両親は知人と出会って道ばたで立ち話を始め、早く家で遊びたい娘が一人で先に帰った。
家のレンガ塀に上がって平均台よろしく遊んでいた娘が、足首を掴まれるのを感じて見下ろすと、
鈍い光を放つ兄たちの四対の眼がじっと自分に注がれていた。
恐怖を感じた娘は両親を呼んだが、すぐに引きずりおろされ、髪の毛を掴まれて台所に連れ込まれた。

立ち話をしていた父親は、娘の呼ぶ声を聞いたような気がして胸騒ぎを感じ、急いで家に帰った。
家の中は静かだった。娘を探しまわる父親は、台所の扉の下から血が流れ出しているのに気づき、
台所に入って、その場の光景に叫び声を上げ立ちすくむ。
その叫びを聞いて駆けつけた母親は、「入るな」と制されるも中の惨状を目にしてしまい、
深いため息とともに呆然とくずおれるのだった。


369 名前:本当にあった怖い名無し :2009/11/23(月) 02:59:17
なにをしでかすかわからない、この世に実在する悪魔は早めに処置しなきゃだめって教訓か

 

野性の蜜: キローガ短編集成
野性の蜜: キローガ短編集成


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