ホーム » スレ別 » 後味の悪い話 その110 » 幻影の街(西岸良平)

419 名前:1/2 :2009/11/25(水) 17:16:24
かなりうろ覚えだが西岸良平「幻影の街」

まだ学生運動が盛んだった頃。
主人公は友人が運動に熱心なのに背を向け、所属する映画同好会のメンバー達や
恋人のユキと映画談義をする日々を送っていた。
そんなある日、突然同好会のキャプテン・戸川がSFハプニング映画を撮りたいと言い出した。
様々な人が集まる場所に宇宙人の姿で現れ、戦い合う様子を驚く一般人達も含めて撮影しようというのだ。
脚本はあるもののどこか意味不明で反発も出たが、なんだかんだで戸川の意見通りに決行されることが決まった。
撮影を担当するのも、優秀なカメラマンである彼だ。

東京はもちろん、京都のお寺や江ノ島海岸など全国各地でロケを行う一行。
時には移動中に武器を運んでる過激派に間違えられたりもしたが、無事撮影は終了。
しかし東京へ戻ってから五日後、戸川がビルの屋上から転落死する。警察は彼の死を自殺と断定した。
それから間もなく、撮影したフィルムが現像が終わり戻ってきた。
早速上映するが、そこに映っていたのはなんとロケを見て驚いている一般人の映像のみ。
皆の演技は一コマも撮られていなかった。
その後何度もフィルムを見返したが、戸川が何を意図していたのかまったくわからなかった。

しかし、ユキがもしかしたら戸川は映画など撮る気などなかったのではないかと推測する。
脚本も彼にしては珍しく支離滅裂だったし、何より理屈で考えるタイプの彼から
ハプニング映画を撮ろうという発想が出てきたことが不思議だった、と。
それは主人公も最初に話を聞いたときに感じたことだった。

ユキは改めてフィルムを調べてみることにし、映写機を借り、フィルムを自宅に持ち帰った。
その三日後、主人公の元に「フィルムの秘密がわかった。すぐに会って話がしたい」と
不安そうに彼女から電話がかかってくる。
大学の近くにある喫茶店で待ち合わせをするが、約束の時間を過ぎても彼女が現れない。
その時、通行人が「今、表で女子大生がトラックにひかれた」と駆け込んできた。
はたして事故にあったのはユキで、即死だった。
さらに彼女が住んでいたアパートもほぼ同じ時刻に火事になり、アパートは全焼。
フィルムも消失してしまった。


420 名前:2/2 :2009/11/25(水) 17:18:50
それから10年後。
普通にサラリーマンになった主人公は、運動家だった友人と偶然、再会。
そして意外な話を聞かされる。
あの待ち合わせをした日、デモに参加していた友人はユキに偶然会い
「あとで○○(主人公の名前)に渡してほしい」と小さな箱を預かったのだ。
その時彼女は妙におびえていたという。
その後警察に捕まったせいでうやむやになってしまったが、
ちゃんと釈放されたときに箱は返してもらった、と。

主人公は早速その箱を送ってもらう。中に入っていたのは一本のフィルムで、
例の戸川が撮影したフィルムから重要な部分をつなぎ合わせたものだった。
上映してみてすぐ、秘密はわかった。
大騒ぎしている一般人の中に、素知らぬ顔をしたスーツ姿の男性が映っていたのだ。
しかも一カ所ではなく日本全国、ほとんどの場所で。
さらにあるシーンでは同じ男性が何人も映っていた。
ふと主人公は、以前ロケで旅館に泊まった際に戸川が言っていた言葉を思い出す。
「もし本当に宇宙人がいるなら、この映画のようにわかりやすい形では登場しない。
 それこそ目だたない姿になって日常の中に紛れているだろう。しかし、その日常が破られたとき彼等は…」

主人公は推測する。
もしかしたら、戸川がハプニング映画を撮りたいと言ったのは、この宇宙人の存在を立証するためだったのでは?
そして、戸川もユキも、それをかぎつけた宇宙人によって存在を隠すために殺されたのではないか、と。
しかし、当事者である戸川も死に、フィルムも失われた今、もう真実を確かめる術はない。
全てはあの混沌とした時代が見せた、幻影だったのではないだろうか…。

そう思いながら街を歩いていて主人公は気づいた。
目の前の通りを、先程のフィルムに映っていた男が歩いている。しかも何人も。
驚く主人公の前で、その姿が増えていき……

…と、これで何のフォローもなくおしまい。
主人公は宇宙人に殺されたんだろうな……と連想させられて後味悪かった。


424 名前:本当にあった怖い名無し :2009/11/25(水) 19:28:44
>>419-720
乙!
後味悪いというより怖かった、ラストがホラーすぎるw

 

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