ホーム » 小説 » 小説/か行 » 幻色江戸ごよみ/第二話「紅の玉」(宮部みゆき)

211 名前:紅の玉  1/2 :2010/07/01(木) 23:45:52
宮部みゆきの短編集「幻色江戸ごよみ」に収録されている一編

主人公の佐吉は様々な飾り細工を作る職人。
身体を壊して床に臥している妻お美代の治療費を稼ぐ為に懸命に働くが、
折悪しくその当時は老中が定めた「奢侈取締り」の法によって贅沢品が禁じられており、
豪華な簪や櫛、煙管や煙草入れに至るまで製造及び販売が許されない状況にあった。
そんなある日、佐吉の下に人品卑しからぬ老人が訪れ「銀細工のかんざしを作ってくれ」と依頼する。
見事な紅珊瑚の玉まで持参しての頼みだったが、それは当然贅沢品を禁じる法に抵触する。
犯罪の片棒は担げない、と一度は断ろうとする佐吉だったが老人の真摯な態度と
悪法への非難がましい口ぶり、そして何よりも妻の治療に充分な高額の報酬に
心を動かされてかんざし細工にとりかかることになる。
「身内に嫁入り道具としてこっそり持たせるだけのものだから人目につくことは無い」
という老人の言葉も背を押した。

やがて見事な紅の玉をあしらった銀かんざしが完成し、
その素晴らしい出来栄えに職人としての矜持が満たされた佐吉は、さながら刀工が銘を刻むように
かんざしの見えにくい部分に小さく己の名を刻んでしまう。
いつかはこんな悪法が無くなるようにとの祈りも込めて。

後日、老人に完成品を引き渡す際にその事実を告げて許しを乞う佐吉に対して老人は
「見上げた心がけだ。名を残すのに武家も町人も関係ない」と鷹揚に許したばかりか、
当初の約束より五両も上乗せした報酬を払ってその場を去った。
喜ぶ佐吉とお美代。


212 名前:紅の玉  2/2 :2010/07/01(木) 23:46:59
しかしその二日後、事件が起きた。

ある侍が仇討ちにあって殺された。下手人は若い娘と隠居の老人。
卑劣な手段で親を陥れられたその娘は復讐に燃えて小太刀の腕を磨き、
祖父と共にその仇敵を討ち果たしたのだという。白装束に身を固めたその娘は、
それはそれは見事な「紅の玉が付いた銀のかんざし」を挿していた……。
話好きな隣家のおかみさんにその事件の顛末を聞いた佐吉は愕然とする。
そんな細工がそういくつもあるはずが無い。そのかんざしは確かに自分が作ったものだ。
仇討ちの許しも申請せずに仇討ちを行った娘と老人は間違いなく死罪になる。
あの老人とその孫娘には命と引き換えても成すべきことがあったのだろう。
佐吉がかんざしに「名を残す」心がけをあの老人は称え、許してくれた。
だがそんなものは矜持に命を賭けられる身分と覚悟がある人間に許された「贅沢」だ。
もしあのかんざしが誰かが大事にしまっておく嫁入り道具ではなく、白日の下に晒される
「罪人の持ち物」になるのだと知っていたら、決してあんな愚かな真似はしなかった。
何故それを教えてくれなかった。たった一言「銘を刻むのはやめておけ」と言ってくれれば―

悄然として立ち尽くす佐吉の目に、厳しい顔をした差配と役人が近づいてくるのが見えた。
佐吉はぼんやりと考える。自分が捕まった後は、一人では到底生きていけない
お美代は一体どうなるのだろう、と。

この短編集は半分以上の話が後味悪いので、結構お薦めだ。


213 名前:本当にあった怖い名無し :2010/07/01(木) 23:58:17
主人公は一点の責められる所も無い
って訳でもない所が後味わるー

214 名前:本当にあった怖い名無し :2010/07/02(金) 00:35:15
その贅沢禁止令が出る前に作ったものだって言えばいーんじゃね?

215 名前:本当にあった怖い名無し :2010/07/02(金) 00:45:53
どう考えても通用しないだろ…

216 名前:本当にあった怖い名無し :2010/07/02(金) 00:56:31
ちょっと怒られるぐらいで済みますように

 

幻色江戸ごよみ (新潮文庫)
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