ホーム » 小説 » 小説/あ行 » アイスマン(朱川湊人)

51 名前:1 :2010/10/12(火) 12:51:32
『昨日公園』の作者の他の話って出てたっけ。

『アイスマン』
主人公は、受験ノイローゼに罹って田舎で療養中の男子高校生。
ある夏祭りの夜、境内で出会った前歯の欠けた幼女に誘われ、見世物小屋を見物に行く。
小屋といっても実体は廃バスを利用した粗末なもの。
入り口には、肉が積み重なったかのように異常に肥満した大男が座っている。
おそるおそる中に入ってみると、見世物は一つだけだった。氷漬けされた河童の死体だ。
だが主人公は、その手に水かきが無いこと等から、これは人の子供の死体では、と疑いを抱く。
しかし大男の異様な風体に怖気づいていた彼は、何も言わずにその場を立ち去った。

翌日も祭りだった。することもない主人公はなんとはなしに足を向け、再び幼女と出会う。
林檎飴を並んで食べたりするうちに仲良くなった二人は、再びバスへと向かう。
主人公も、あれが本当に人の子供の死体だったか改めて確かめたかったのだ。
だが現地へたどり着くと、大男が地元民らしき二人の男に怒鳴りつけられていた。
どうやら大男は、祭りの運営者の許可を得ずに小屋を開いていたようだった。
幼女はそれに、稼ぎの何割かを持っていかれるからそうしているの、と補足する。
だからバスで移動しながら隠れるように店開きをし、毎日場所も変えている、とも。
大男は男達の声を無視するように、無言で椅子に座っていた。
しかしその様子に激昂した男達が彼を突き飛ばそうとすると、とうとう立ち上がる。
そしてあろうことか、その巨大な体躯を用いて男達を撲殺してしまう。
「人間どもめ。全く鬱陶しい奴らだ」
唖然とする主人公だが、大男のその呟きに彼が人外のものであることを何となく悟る。
平然と殺人を犯した大男は、「面倒だがこの地を去る」と宣言した。
そしておもむろにバスから氷漬けの死体を運び出してから、幼女にその始末を命じる。
山奥に向かって運び、その間に溶けるだろうから、死体を焼いてしまえというのだ。
そして主人公に金を握らせ、その作業を手伝うよう指示した。
大男に逆らえない様子の幼女を慮り、主人公は仕方なしにそれに同意する。
「お前は変わっているな。きっとまた会うことになるだろう」大男は不気味に笑った。


52 名前:2 :2010/10/12(火) 12:52:57
二人は山小屋からリヤカーを盗み出し、氷漬けの死体を乗せた。
運んでいる間は、一切の会話がなかった。だが、死体を焼く段になり幼女が不意に泣き出す。
「私には弟がいたの」そう言って死体に縋り付く幼女の腕には、たくさんの噛み跡があった。
ここまでの道すがら、そうやって自分の泣き声を抑えていたのだと主人公は気付く。
幼女は声を上げて泣きながら、弟の死体に火をつけた。

そんな出来事があってから数年後。
主人公は表面上は精神的な安定を取り戻し、やがて社会へと巣立つ。平凡なサラリーマンだ。
だが、その出張先で再びあの見世物小屋と出くわしてしまう。看板は以前同様に「河童の死体」。
「やはりまた会ったな」笑う大男の脇を抜け、嫌な予感を覚えつつバスの中へ。
息を止めて奥を覗き込むと、あの時と同じ、氷漬けの死体が置かれていた。
ただし、前歯が欠けている。
主人公は呆然と振り向いた。大男と目が合う。
衝動的に言った。この死体を買い取りたいと。
大男はどこまでも不気味に笑って、頷いた。

主人公はその後、とある倉庫会社へ転職した。
主な仕事は巨大な冷蔵倉庫の内部管理。厳しい肉体労働だが苦ではなかった。
なぜならその倉庫の奥には「彼女」がいるから。
そして主人公は思う。
学校にも行けず友達もいなかったであろう彼女のために、「仲間」を増やしてあげようか、と。

以上。最後の主人公のモノローグが安っぽいホラーちっくだから、
かえって後味は薄れている気はするけれど。でもやっぱり女の子が悲しすぎた。

 

都市伝説セピア (文春文庫)
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