ホーム » スレ別 » 後味の悪い話 その117 » 縞模様のパジャマの少年

556 名前:映画 縞模様のパジャマの少年 :2010/10/30(土) 23:10:55
1944年、8歳の快活な少年・ブルーノは大都会・ベルリンから遠く離れた山間の村に越した。
ブルーノはナチス将校である立派な父と、優しい母、美しく明るい12歳の姉と4人暮らしであった。
父は人柄能力申し分のない人物(役者はハリポタのリューピン先生)であり、
今度の引っ越しはナチスでも上級職に抜擢された栄転であった。
引っ越し先は寂しい村で、近所に同年代の子供はおらず遊興施設は愚か学校すらなかった。
家を訪れる者と言えば父が目をかけている部下が数人と縞模様のシャツを着た小間使いの老人だけだった。
家に来る部下の中でもコトラー中尉は特に父に信頼を寄せられており、家族同然の付き合いをしていた。
ハンサムで優しいコトラーに姉はあこがれているようだった。
しかしコトラーは例の縞模様のシャツを着た小間使いだけには無下に当たっていた。
ある日怪我をしたブルーノは老人に手当してもらう。意外にもてきぱきと手当する老人。
お医者さんみたいだとブルーノは褒めると老人は「私は昔医者だった」と話した。
ブルーノはそれなのに今は小間使いをしているなんて藪医者だったんだとからかった。
老人は泪ぐんでしまう。

558 名前:映画 縞模様のパジャマの少年 :2010/10/30(土) 23:17:12
家に帰ってきた家族にその話をすると、
父親は「あいつは嘘つきのユダヤ人だ。軽々しく手当なんかさせるな」とブルーノを叱った。
母親は父親を非難の目で見る。混乱したブルーノは自室に逃げ込んだ。

ある日、普段は施錠されている中庭のドアが開いていた。
暇を持て余していたブルーノはドアを開けて山道を散策する。
森を越え、小川を渡ると巨大なフェンスに囲われた大きな農場を見つけた。
フェンスに沿って歩いている同い年程の少年を見つけたブルーノは声をかける。
「ボク、ブルーノって言うんだ。君はこの農場の子?」
少年は頭を丸刈りにし、縞模様のパジャマを着ていた。胸には番号を刺繍したワッペンをつけている。
「ボクはシュムール。遊んでるんじゃないんだ。でもやることがないから話し相手は出来るよ」
こうしてシュムールとブルーノは柵越しに喋るようになった。


559 名前:映画 縞模様のパジャマの少年 :2010/10/30(土) 23:24:02
父が手配した家庭教師は熱心な愛国主義者で授業のテキストに「わが闘争」を使っていた。
コトラーに影響された姉はヒトラーの啓蒙本を貪り読み、将来はナチスに入りたいと言い出す。
しかしブルーノにはヒトラーの本は余りに難しく興味を持てなかった。
姉は反ユダヤ主義になり父とユダヤ人の追放について熱心に語り合うようになる。
母はそれを内心嫌がっていた。
ある日ブルーノはシュムールに聞いた。
「君はパパを誇りに思ってる?君のパパは何してる人?」
「ボクのパパは時計職人だったよ。今は大工をしてるけど」
「大人になったのに好きなことが出来ないの?僕のパパは軍人さんだよ」
「ボク軍人嫌いだ。僕たちの洋服をとっちゃったんだ」
「ボクのパパはそんな事しないよ。ねえ、農場から出ておいでよ。ここじゃつまんない」
「出れないんだ。鉄条網があるから」
「家畜が逃げない為でしょ?入口からおいでよ」
「人間を逃さない為だよ。僕はユダヤ人なんだ」
ショックを受けるブルーノ。
しかしながらブルーノとシュムールの交流は続いた。

560 名前:映画 縞模様のパジャマの少年 :2010/10/30(土) 23:30:57
農場の煙突から流れる煙を見てコトラーは母親に嘯いた。
「奴等は焼かれても臭いですね」
母親は衝撃を受けた。
母親が何もしらなかったことに狼狽するコトラー。

その日の夜、母親は夫を責めた。
「あなた、こんな酷いことをしていたの?よく強制収容所の目と鼻の先に子供たちを連れてきたわね?
 最低よ!あなた軍人じゃないただの人殺しよ!」
妻に事実を隠していた父親は驚いた。
「誰から聞いた?」
「コトラー中尉よ。あのヒトラーシンパがぺらぺらしゃべったわ!」

それ以降父と母は喧嘩が絶えなくなった。
父は国の為だと言い、母はどんな理由があっても人殺しは許されないと叫ぶ。
姉は人類の敵であるユダヤ人を駆除するのはドイツの益にかなうことだと父を庇った。
ブルーノにはどちらが正しいかわからなかった。


561 名前:映画 縞模様のパジャマの少年 :2010/10/30(土) 23:41:23
ベルリンから父の両親が遊びに来ることになった。
優しい祖父母に逢えると喜ぶブルーノと姉。
しかしヒトラー嫌いの祖母はナチスの息子には会えないと断ってきた。
家族の落胆の中、祖父だけが遊びにきた。
父は祖父と一家を交えての晩さん会にコトラーを出席させた。コトラーと食事が出来ると姉は喜ぶ。
食事会は途中まで和やかだった。
いきなり、父が口火を切るまでは。
「コトラー、君の父上は今何をしているのかな?」
「私の父ですか?今スイスにいます」
「スイス?この戦局の真っただ中にか?君の父上は大学で文学を教えていたね?
 何で教鞭を放り出してスイスになんか行ったのかね?」
祖父もこのお国の大事に中立国に逃げ出すなんて卑怯者だと責め出す。
おろおろする母と姉。真っ赤になって黙り込むコトラー。
雰囲気が最悪になった時元医師の小間使いが給仕にやって来た。
不穏な空気を察し、ビクビクしながら給仕していた小間使いは誤って中尉のワインをこぼしてしまう。
「このユダヤ野郎め!」
廊下に連れ出し老人を滅茶苦茶に殴り始めるコトラー。
姉は泣きだし、母は父にコトラーを止めにいくよう頼むが父は平然と言い放った。
「ユダヤ人なんぞの為に私に部下に頭を下げろと言うのか」
余りの展開に唖然とした祖父とブルーノは動くことが出来なかった。
その日を境に元医師は姿を見せなくなる。

562 名前:映画 縞模様のパジャマの少年 :2010/10/30(土) 23:51:27
数か月後、少年の家で誕生日が開かれ、
料理の手伝いに例の農場から何人もの縞模様のパジャマを着た労働者が集められた。
その中にはシュムールもいた。
グラスを磨いているシュムールに少年はお菓子をあげる。
「嬉しいよ、シュムール。君遊びに来たの?」
「違うよ。手伝いに来たんだ」
「そうなんだ。メイドのジェシカ(少年の家で働いているユダヤ人のメイド。父からは嫌われていたが母の厚意で雇われていた)も
 僕くらいの年齢で子守してたって言ってたよ。羨ましいな。自分でお小遣いが稼げて」
「そうでもないよ。でも君の家綺麗だね。一回君の家に行きたかったから嬉しいな。」
そこへコトラーが現れた。
「ユダヤの豚の癖にこの家のおぼっちゃまと口を利くな!この菓子はどうした。盗んだのか?」
「盗んだんじゃありません。ブルーノがくれたんです。友達なんです」
コトラーはブルーノのクビをつかんだ。
「そうなのか!このユダヤ人と友達なのか?」
そうだと答えようとしたがコトラーのあまりの権幕に舌が上手く回らない。
半泣きになったブルーノは「違うよ。こんな子知らない。お菓子は勝手に食べてたんだ」と答えてしまう。

563 名前:映画 縞模様のパジャマの少年 :2010/10/31(日) 00:00:21
激怒したコトラーはシュムールを連れ去る。
ブルーノは部屋に閉じこもり自己嫌悪から号泣する。
翌日から毎日ブルーノはお菓子や玩具を持って農場のフェンスまで行きシュムールを待った。
しかし何日たってもシュムールはいなかった。
2週間たった頃ようやくシュムールが柵の前にいた。シュムールの顔にはひどく殴られた後があった。
ブルーノは泣きながらシュムールに許しを乞うた。
シュムールはブルーノを許した。
二人はブルーノが家から持ってきたシュークリームとエクレアを分け合って食べた。
何故かコトラーは家にめっきり来なくなった。あれだけコトラーに夢中になっていた姉は
あの一件以来、コトラーに対する思いはなくなったらしく平然としていた。

それから数日たったある日、家に帰るとコトラーがいた。
ブルーノはコトラーから逃げようとしたがコトラーは黙ってブルーノの頭を撫で、「元気でな」と去った。
父にコトラーはどうなったのかと聞くとあいつは最前線に行かせたと返された。
コトラーの父親は反ナチの運動をしており、ドイツを追われスイスに亡命していたのだった。
コトラーへの憧れはなくなったとはいえ姉はショックを受け、母は父を責めた。
「そんな理由でよくもコトラーを殺せるわね!あなたの母親だってヒトラーを嫌っているじゃない!」
そこに電話のベルが鳴った。祖母が空襲で焼け死んだという知らせだった。


565 名前:映画 縞模様のパジャマの少年 :2010/10/31(日) 00:13:36
祖母の葬儀に出席する為、一家は久々にベルリンに戻った。
ナチス嫌いの祖母の御棺に父はヒトラーからの贈り物である百合の花束をいれた。
母は夫の心無い行動にむせび泣いた。
村に戻るとブルーノはシュムールにチェスを教えた。
「君のおじいちゃんとおばあちゃん、まだ生きてる」
「もう死んじゃったよ。ここに来る途中で病気になって
 すぐに病院に運んだんだけどそのまま・・・あ、ホーンを右に動かして」
「そうなんだ。お葬式どうだった?」
「出せなかったよ」

数日後父は自分の上司を家に招待し、試写室で何かの映像を見せていた。
面白い映画でも見ているのかとブルーノは覗き込んだ。
ユダヤ人収容所は清潔で娯楽がたくさんあり、カフェや映画館もプールもあるという内容だった。
ユダヤ人収容所?シュムールもユダヤ人だった。ということはあの農場はユダヤ人収容所だったのか。
でもあんなに楽しい場所なら何故シュムールは柵の前にいつもいるのだろうか?
他に同年代の友達がいないからだろうか?カフェや映画館に行くにはシュムールがまだ小さいからだろうか?
釈然としない思いが胸に残るブルーノだった。


566 名前:映画 縞模様のパジャマの少年 :2010/10/31(日) 00:22:10
翌日ブルーノはシュムールに聞いた。
「君たちが住んでいる場所は良いところなんだろ?」
「良いところなのかな・・・わからないよ。でもお爺ちゃんとお婆ちゃんは死んじゃったし
 ママはいないしパパはここに来てから喧嘩ばかりするようになっちゃった。寂しいよ。
 僕には友達は君しかいないんだ。僕から離れないでね。ブルーノ」
「僕も君しか友達がいないよ。離れないよ。シュムール」
シュムールとブルーノは鉄条網越しに握手した。

翌日、姉とブルーノは父親に呼ばれた。
「お母さんがもうこの家で暮らせないというんだ。私はナチスで重要な使命があるからここに残る。
 お前たちもお母さんと一緒にお爺ちゃんの家へいきなさい」
姉は喜んだ。既に姉はナチスを信奉してはいなかった。
しかしブルーノは困った。このままではシュムールを裏切ることになってしまう。
「ボクここに残るよ。ジェシカもいるからママがいなくても平気だもん。勉強もここでする」
「ダメだ。お爺ちゃんの家に行きなさい」
幼いブルーノに選択の余地はなかった。
ブルーノはありったけのお菓子を持って想い足取りでシュムールの元に向かう。


569 名前:映画 縞模様のパジャマの少年 :2010/10/31(日) 00:31:05
「ねえシュムール。ごめん。ぼくんち引っ越すんだ。もう君に逢えない」
「そんな・・・いつ戻ってくるの?」
「わからない。もう戻ってこない。でもパパはここにいるから年に何回かなら会えると思う」
「そうなんだ・・・。僕のパパいなくなっちゃんだ」
「えっ?」
「今朝違う仕事に行ったっきり帰ってこなくなったんだ。
 どこかで倒れて誰にも気づいてもらえないのかも知れない」
「大変だ!警官にしらせなきゃ」
「ここには警官なんていないよ」
うつむいたブルーノはふっと足元の土が柔らかいことに気付く。
ブルーノは棒でその土を掘った。土はとても軽くブルーノ力で簡単に掘り進められた。
「シュムール、見て。ここの土柔らかいよ」
「本当だ。ここからなら出られるね」
「シュムール、農場から出て遊ぼうよ。小川に行って魚釣りしよう」
「僕一人じゃ出られないよ。パパも一緒じゃないと」
「う~んと、じゃ僕がこの穴に入るよ。一緒に君のパパ探そう」
「そんな悪いよ・・・」
「良いよ友達じゃない」
「ありがとブルーノ。じゃあ僕君がこの中に入っても怪しまれないように君の分のパジャマと帽子用意しとくよ」
「そんなのあるの?」
「うんたくさん余ってるんだ。子供用のもあるよ」
「じゃあ僕明日サンドイッチ持っていくよ」
ブルーノは意気揚々と家に帰った。

571 名前:映画 縞模様のパジャマの少年 :2010/10/31(日) 00:40:58
翌日ブルーノはパンに野菜とハムジャムを挟んだお手製サンドイッチを作り家を出た。
姉と母、ジェシカは引っ越しに荷造りに忙しくブルーノに気が付かない。
ブルーノは鼻歌を歌いながら農園に着いた。
夜中のうちにシュムールが穴を大きくしてくれた御蔭でブルーノは簡単に柵の内側に入れた。
洋服を穴の前で脱ぎ捨て、シュムールが用意した帽子とパジャマに着替える。
二人は農場の奥に進んだ。
中は汚い掘立小屋がいくつも並んでいて監視の犬が吠え立てていた。
小屋の前のベンツに座っている人たちは皆不潔で暗い顔をしている。
父が見せていた映像とはずいぶん違っていた。
ブルーノはシュムールに提案した・
「カフェに行かない?ココアでも飲んで作戦立てようよ」
「カフェ?そんなのないよ。あ、パパが寝泊まりしてる小屋だ。あそこにもう戻ってるかも知れない」
その小屋は恐ろしく天井の高い不潔な小屋で
ずらりと並ぶ三段ベッドの上に老人と病人ばかりが押し込められていた。
ブルーノとシュムールが小屋に入った途端、父と同じ軍服を着た数人の男たちがやって来て
小屋にいる人間全員外に出て行進しろと言い出した。
ブルーノとシュムールはこの小屋に住んでいないし行進する気はなかったが
小屋の中にいた数百人がいっせいに出口に向かったので巻き込まれてしまった。

575 名前:映画 縞模様のパジャマの少年 :2010/10/31(日) 01:00:37
数百人の集団はブルーノとシュムールを巻き込んだままずんずん行進を進めた。
列から出ようにも人でもみくちゃな上に列の前後を軍服姿の男たちと犬が固めておりとても出れそうにない。
二人はただ身を寄せ合って歩くしかなかった。
集団は農場の奥にある鉄づくりの建物に入れられた。
同じ縞模様の服を着た若く健康そうな男たちが猫撫で声で
「ただのシャワー室だ、心配いらないよ俺たちが先に浴びたからね、温かくて最高だったよ」と笑いかけてきた。
同じユダヤ人の言葉に安心するシュムール。ブルーノもすっかり警戒心をとき喜んで建物に入った。
周囲の病人や老人も彼らの言葉をすっかり信用して中にぞろぞろと入った。
しかし全員が入るとシャワー室だと言っていたユダヤ人たちは建物から出ていく。そのことに気付いた者は誰もいなかった。
予告もなしに照明が消え、建物は暗闇に包まれる。
シュムールとブルーノは手をつないだ。
「停電かな?」「そうだよ。早くシャワー浴びたいな」
その瞬間、ノズルから毒ガスが散布された。

その頃ブルーノの家は大騒ぎになっていた。
メイドのジェシカが開けっ放しになっている裏口を発見し裏口から山道を走る母と姉。
ジェシカの報告で、息子が行方不明になったことを知った父は部下と犬を引き連れて捜索に向かう。
息子の匂いを辿った警察犬は何故か家の方角ではなく自分が所長を務める収容所の中を走っていく。
「何故だ?まさかここにいるのか!」

母と姉は必死でブルーノの名を呼びながら山道を歩く。
「まさか川に・・・いえ、野犬に・・・」
最悪の想像に頭を占領される母はふと目をあげて呆然とする。
ユダヤ人収容所の柵の前の息子の洋服が脱ぎ捨てられていたのだ。
「あなた!ブルーノが・・・」
母と姉は収容所の正門に駈け出した。

その頃父は部下たちの怒号と悲鳴、犬の吠え声の中に立ち尽くしていた。
ついさっきユダヤ人の殺処分を終えたガス室の前で息子の痕跡が途絶えていたのだ・・・。

 

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